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妹ばかり見ている婚約者はもういりません  作者: 水谷繭
10.変化

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10-6

 もやもやした気分のまま教室に戻ると、友達のミリアムさんが興奮した様子で駆けてきた。


「ジュスティーナさん! ちょっといいですか!?」


 彼女は返事も聞かないまま私の腕を掴むと、人気のない廊下まで引っ張って行く。


 前にもこんなことがあったなと思いながら、大人しく腕を引かれるままついて行った。



「ジュスティーナさん! ラウロ・ヴァレーリの顔! びっくりしてしまいましたわ。ジュスティーナさんは何か知ってます?」


 ミリアムさんは足を止めると、丸い目をさらにまんまるくして尋ねてきた。


「ええと、幸運にも痣が治る方法が見つかったようで」


「まぁ! どんな治療法なんですの? 薬草とか?」


「……ごめんなさい、それは秘密です」


 私がそう言うと、ミリアムさんは気になって仕方ないという顔をする。けれど、呪いが解けた理由に王子に与えられる短剣が関わっている以上、詳しいことを教えることは出来なかった。


 ミリアムさんはしばらく粘って来たけれど、私に答える気がないのを悟ったのか、別のことを尋ねてきた。



「それにしてもジュスティーナさん、痣がなくなった理由を知っているということは、今もラウロ・ヴァレーリとの関わりが続いているということですわよね?」 


「ええ。今もラウロ様のお屋敷にお世話になっているので」


 私がそう答えると、ミリアムさんは難しい顔になる。


「私はジュスティーナさんがラウロ・ヴァレーリのそばにいること、反対なんですけどね……。あんな悪い噂ばかりの方、一刻も離れたほうがいいですわ」


「あれ。ミリアムさんは、ラウロ様の痣がなくなっても評価は変わらないのですか?」


 ミリアムさんの反応が意外で、思わず尋ねてしまった。


 今日学園に来てからすれ違った人たちは、みんなラウロ様の顔を見たとたん態度を変えたのに。



「だって私、最初から痣のことは気にしてませんもの。ただ、あの人の人格に問題があると聞いたからジュスティーナさんが心配だっただけです」


 ミリアムさんはきっぱりと言う。


 そういえば、以前ラウロ様のお屋敷にいることを心配されたとき、彼女は痣については何も言っていなかったことを思い出した。


 ミリアムさんは、ラウロ様が冷酷非情だとか、短気で横暴だとか、何がどうして流れたのかわからないそんな噂を元に私を心配していた。


 私はミリアムさんまでラウロ様を外見で判断していると思い込んでいたことを心の内で反省する。いや、間違った認識をしていることには変わりないのだけれど。



「……本当にラウロ様は優しい方なんですよ。いつも私を気遣ってくれるんです。私の言葉をちゃんと聞いてくれて、私の中途半端な魔法をすごいって褒めてくれて」


 ミリアムさんにどうにかわかってもらえないだろうかと思いながら口にする。


 ミリアムさんはラウロ様の悪い噂を信じきっているようだから、響かないかもしれない。けれど、どうしてもラウロ様がひどい人だなんて噂は訂正したかった。


 しかし、意外にもミリアムさんは否定することなく、真面目な顔で尋ねてきた。


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