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ラウロ様の痣が消えたことを広間にいるエルダさんたちに報告しに行くと、想像以上の大騒ぎになった。
「ラ、ラウロ様、痣が……! 一体何が起こったんですか!?」
「どんな魔術師を呼んでも全く消えなかったのに……!」
広間にはすぐさまお屋敷中の使用人たちが集まってきて、みんな交互にラウロ様の顔を覗き込んだ。使用人たちは一様に感動した顔をして、中には涙を流している人までいる。
なかでもエルダさんは一際感動した様子で、痣のなくなったラウロ様の顔を眺めていた。
「ジュスティーナ様……! よくぞラウロ様の呪いを解いてくださいました……!」
ラウロ様の顔をまじまじ見つめていたエルダさんは、振り返ってこちらを見ると、涙を流しながらお礼を言う。
私は恐縮しながら言葉を返した。
「いえ、私はただ短剣に光魔法をかけただけでして」
私は呪いが解けたときの状況を説明した。
エルダさんも、ほかの使用人さんたちも、真剣に話を聞いていた。話し終わると、エルダさんは呆然とした様子で言う。
「短剣……! それは盲点でしたわ……! いえ、もちろん呪いをかけられた品なので、ラウロ様も私共も調べはしたのですよ。けれど、短剣の呪いが解けたら一緒にラウロ様の呪いが解けるなんて思いもしませんでしたわ。痣自体ではなく、短剣の方もよく調べるべきだったのですね……」
エルダさんの声には、後悔が滲んでいた。ラウロ様を大切に育ててきたであろう彼女には、もっと早く呪いを解いてあげたかったという思いがあるのかもしれない。
「いや、仮にもっと短剣の調査に時間をかけていたとしても、ジュスティーナ嬢がいなければ呪いは解けなかったのではないかと思う。何人もの魔術師にあの短剣を見せたが、大きな反応を示す者はいなかった。ジュスティーナ嬢だけが、あの短剣に巻き付いた蔦が助けを求めていると感じ取れたようなんだ」
ラウロ様は真面目な顔でそう説明する。エルダさんをはじめ、使用人たちが一斉に感心した顔でこちらを見るので、なんだか恥ずかしくなってしまった。
私は何となく感じたままに魔法をかけただけなのに。
その後、ラウロ様や使用人方としばらく話し、どうやらあの短剣に巻き付いていた蔦自体に呪いがかけられていたのではないかという仮説を立てた。
ラウロ様に呪いをかけた亡きロジータ妃は、植物を介した闇魔法が得意だったそうだから。
王子の象徴ともいえるあの短剣を媒介にして、まるで人形を依り代に使った黒魔術のように、ラウロ様に呪いをかけたのではないかと。
植物を介した闇魔法だというのなら、私の植物にしか効かない光魔法が効いたのも納得がいく。




