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「けれど、これでやっと理解できてすっきりしましたわ」
「なにがだ?」
「いえ、ほぼ初対面の私をお屋敷に呼んでくださったこともそうですけれど、ラウロ様はいつもすごく親切にしてくださったじゃないですか。その上、こんな平凡な私を愛らしいとか妖精みたいだなんて褒めてくれて。私が呪いを解く研究に役立つかもしれないから、サービスしてくれてたんですね」
これでようやく納得出来た。
ラウロ様が親切だったのも、私にはふさわしくないような褒め言葉をたくさんかけてくれたのも、呪いを解くのに協力してもらうための対価のようなものだったのだろう。
寂しい気持ちがないわけではないけれど、やっぱりという気持ちの方が大きかった。何の理由もない親切よりも、そちらの方がずっと納得がいく。
顔を上げてラウロ様を見ると、なぜか彼は顔を強張らせていた。
さらに、後ろのエルダさんまでどうしてだか青ざめた顔をしている。
「違う! ジュスティーナ嬢、俺は協力させるためにお世辞を言っていたわけではないからな!!」
ラウロ様は私の肩を両手で掴むと、珍しく慌てた顔で言う。
「いいのですよ、ラウロ様。私には過ぎた言葉をたくさんくださるなと思っておりましたの。そんな風に気を遣っていただかなくても、全力で協力するつもりですから」
「いや、本当に違うんだ! 俺は思ったことを言っていただけで……!」
「ラウロ様ったら。私、自分が美しくもなければおもしろくもない平凡な女だということくらい、ちゃんとわかっていますわ」
私は愛らしい妹のフェリーチェとは違うのだ。手放しで賞賛されるはずがない。私はつまらない女だと、ルドヴィク様にも何度も言われてきた。
私をしばらくじっと見つめた後、ふいに目を逸らしてラウロ様は言った。
「……君を初めて見たとき、こんなに美しい少女がいたのかと驚いたんだ」
「え?」
「君が俺の痣を気にしないで接してくれたことも、一緒にパーティーに出たいと言ってくれたことも、俺のために怒ってくれたことも、全部とても嬉しかった。家の問題が解決するまでの間うちにいてくれればいいと思っていたのに、気が付いたら離れていって欲しくないと思うようになっていた」
ラウロ様は真剣な声でそう言うと、顔を上げて私の目を見つめる。
「……これが俺の本音なんだが、信じてもらえるだろうか」
「は……はい……」
私はどうにか返事をする。心臓の音が早くなって、顔が熱かった。
ラウロ様はほっとしたように息を吐く。ラウロ様の頬も、若干赤くなっているような気がした。
何を言ったらいいのかわからなくて視線を彷徨わせると、壁際でぽかんとするドナートさんの横で、エルダさんが笑みを抑えきれないといった表情で私たちを見ていた。




