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一体なぜと考え、嫌な想像が頭に浮かんできた。
「もしかして私の家族が来ているのですか? それでなかったら、元婚約者のルドヴィク様が……?」
私はおそるおそる尋ねた。家族やルドヴィク様が連絡もなくラウロ様のお屋敷まで押しかけてきたのならとても申し訳ない。
しかし、ドナートさんは首を横に振る。
「いいえ、ジュスティーナ様のご家族でも元婚約者様でもございません。もっと厄介な方でして」
きっぱりと否定されたので、少しほっとする。しかし、もっと厄介な方とは誰なのか。
ラウロ様も同じことを疑問に思ったようで、難しい顔でドナートさんを見ている。
「ドナート、一体誰が来てるんだ?」
「それはお二人を連れてくるまで言わないようにと……。申し訳ございません」
ドナートさんは苦々しい顔をする。
不思議に思いながらも、私はラウロ様とドナートさんについて部屋を出ようとする。
しかし、私たちが部屋を出る前に、大きな音を立てて扉が開いた。
「まさか本当にこの屋敷にジュスティーナ・ローレ嬢がいるとはな」
扉の前に立っていたのは、なんとコルラード殿下だった。
大勢の兵士を引き連れた殿下は、腕組みをして品定めするようにこちらを見ている。
コルラード殿下の後ろからは、息を切らしてエルダさんが追って来ていた。
「コルラード殿下……?」
「コルラード様、なぜこちらに」
ラウロ様も私に劣らず困惑しているようだった。普段からよく家に来る間柄というわけではないのだろう。
すると殿下の後ろにいたエルダさんが、眉を吊り上げて言った。
「ラウロ様! ジュスティーナ様! この方、急にやって来てジュスティーナ様を出せなんて言うんですよ! その上、止めているのにずかずかお屋敷の中まで入って来て! 無理にでもお帰りいただいていいでしょうか? 全く昔から本当に無礼な方ですわ!」
「ちょ、ちょっと待ってくれエルダさん。相手は第二王子だぞ」
ラウロ様は、眉間に皺を寄せてコルラード殿下を睨んでいるエルダさんを、慌てた様子で呼び寄せる。それから後ろに控えているように命じた。
エルダさんは不服そうな顔をしながらも、言われた通り後ろに下がる。
コルラード殿下はラウロ様たちのそんなやり取りを見て鼻で笑った。
「随分と冷たいお出迎えだな。せっかくこの私がこんな寂れた屋敷まで来てやったのだから、もっと歓迎してくれてもいいものを。ラウロ、お前ももっと嬉しそうな顔をしたらどうだ?」
コルラード殿下の態度は随分と横柄だった。
遠目から見る殿下はいつも王子らしく振る舞っていたように思うので、少なからず驚いてしまう。
ダンスパーティーの日だって多少違和感を持つ部分はあったものの、表面上は紳士的な態度に見えたのに。
コルラード殿下の言葉にラウロ様は苦りきった顔をしている。そんなラウロ様の顔を満足げに見ると、コルラード殿下は私に視線を移してにっこり笑った。




