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「ありがとう、ルドヴィク様っ。私、レースがいっぱいのドレスが欲しいわ! お姉様にドレスを買ってくれるなら、私にも買ってくれるでしょう?」
「ははっ、いいよ。好きな物を選びなよ」
「本当? 嬉しいっ!」
フェリーチェはルドヴィク様の前で飛び跳ねている。その様子を見て父が真っ青になった。
「フェリーチェ! ルドヴィク君に向かってそんな図々しいことを頼むんじゃない! すまないね、ルドヴィク君。請求書はうちに回すよう頼んでくれればいいから」
「いいんですよ、子爵様。父がローレ家との親交を深めるためだと多めに予算を用意してくれましたから、一人分増えたところでどうってことありません」
ルドヴィク様は恐縮しきる父に、にこやかに言っている。私は驚いてしまって、その光景を呆然と見ていることしかできなかった。
これがあのいつも不愛想で不機嫌なルドヴィク様なのだろうか。
私といる時とはまるで別人だ。以前から私の両親の前では多少猫を被っていたけれど、それにしたって今日は愛想が良すぎる。
何より、彼のフェリーチェを見る目。そこには明らかに私を見つめる時とは違う好意が滲んでいた。
結局、その日は三人で仕立て屋まで行くことになった。馬車の中ではずっとルドヴィク様とフェリーチェが楽しそうに話していて、私の入る隙なんて全然なかった。
仕立て屋でも、彼はずっと生地を選ぶフェリーチェについていた。
私は一人で生地を選び、楽しそうにどんなドレスにするか話している二人を横目に、店員さんと二人でデザインの相談をした。
店員さんの気づかわしげな視線が痛かった。きっと傍から見たら妹の方がルドヴィク様の婚約者に見えただろう。
ドレスの注文が終わり、ルドヴィク様にお礼を言うと、彼は冷めた顔で「ああ」とだけ言って、すぐにフェリーチェの方に戻ってしまった。
フェリーチェがお礼を言ったときの彼は、私の時とは正反対に顔を綻ばせ、「きっと君に似合うよ。完成が楽しみだね」と笑っていた。
それからルドヴィク様は、今までと打って変わって頻繁にうちへ訪れるようになった。
一応は私が婚約者だということを覚えているのか、お屋敷に来ると私に顔を見せには来てくれる。しかし、ほんの数分で私の前から去り、後はずっとフェリーチェと話しているのだ。