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「ジュスティーナ嬢はパーティーに参加したことを悔やんでいるのか?」
「え、ええ……」
だってラウロ様にご迷惑をかけてしまいましたもの。心の中でそう呟いたところで、ラウロ様の少し寂しげな声が降ってくる。
「それは残念だ。俺は俺の選んだドレスを着たジュスティーナ嬢と一緒にいられて、とても嬉しかったんだがな」
「え……?」
「ジュスティーナ嬢も楽しいと思ってくれたら、もっと嬉しいんだが」
ラウロ様はそう言って、少し照れたように笑う。
「本当ですか? 私、ご迷惑ではありませんでしたか?」
「ああ。妹さんのことで君が申し訳なく思う必要はないし、俺としては少々の問題が起きたところで、君と一緒にいられる価値のほうがずっと大きいので何も気にすることはない」
ラウロ様の迷いのない声。思ってもみなかった言葉をもらって、心の中がじんわりと温かくなる。
「あの……私もラウロ様と一緒にパーティーに来られて嬉しいです」
呟くようにそう言ったら、ラウロ様は目を見開いた。それから嬉しそうに笑ってくれた。
***
会場に戻ると、みんな先ほどの騒ぎなどなかったかのように楽しそうに談笑していた。
私たちが中に入ると多少はちらちら見られたものの、特に何か言われることもなく、そのまま元の会話に戻っていく。
「よかったですわ。みんなそれほど気にしていないみたいで……」
ほっと息を吐きながら言うと、ラウロ様は神妙な顔でうなずいた。
「本当だな。君の妹さんと元婚約者ももうそこで楽しそうにしている」
見ると、フェリーチェとルドヴィク様は、先ほどまでの恐縮しきった顔が嘘のように、明るい顔をして二人で顔を見合わせていた。
せめて今日だけでもこれ以上あの二人に近づきたくないな、なんて考えていると、緩やかな音楽が流れ始める。
もうすぐダンスの始まる時間だ。
「ジュスティーナ嬢」
隣から少し固いラウロ様の声がする。
「なんでしょう?」
「その、俺は学園のダンスパーティーにもそのほかの舞踏会にもほとんど参加したことがないから……うまくやれなかったらすまない」
ラウロ様は少しぎくしゃくした様子でそう言った。いつも淡々としている印象のラウロ様が珍しく緊張している風なので、私はなんだかおかしくなってしまう。
「そんなこと全く構いませんわ! 一緒に踊ってくださるだけで十分です。というか私も毎回参加しているのに大して上手に踊れませんし」
「そうか……? せっかく君が誘ってくれたのだから、少しでもいい相手役になりたいのだが……」
ラウロ様は眉間に皺を寄せ、真剣な口調で言う。
そんな彼の様子を見て、自然と口元が緩んでしまった。突然一緒にダンスパーティーに参加して欲しいと頼んだ私のために、ここまで真剣に考えてくれるなんて。
誰かが自分のためを思ってくれるというのは、なんて幸せなことなのだろう。




