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「私たちはいいのですわ! だってルドヴィク様は不当に婚約破棄された被害者で、私はそれをお慰めしているだけですもの!」
「君たちがそんな態度だからジュスティーナ嬢も婚約破棄せざるを得なかったんじゃないのか? 契約石を壊して婚約破棄するなんてよっぽどのことだぞ。ジュスティーナ嬢のように冷静な女性が何も理由なくそんなことをすると思うのか」
「それはお姉様がまともなふりをしているだけで、とんでもなく自分勝手な女だったというだけですわ! 私は妹だから知っています! ずっと姉のわがままの後始末をさせられてきたんです!!」
「君のその態度を見ていると、とてもそういう関係性には見えないが……」
「何ですって!? なんて失礼な奴ですの!」
フェリーチェは顔を真っ赤にして、淡々と言葉を返すラウロ様に食ってかかっている。
私は止めようにも止められず、ただおろおろすることしか出来なかった。すると、フェリーチェが興奮した様子でルドヴィク様のほうを振り返る。
「ルドヴィク様! さっきからどうして黙っているんですか! この二人に何とか言ってやってください!」
「えっ? あ、ああ……」
さっきからなぜかずっとぼんやりこちらを見ているだけだったルドヴィク様は、フェリーチェの声で我に返ったようだ。
彼はどうしてだかラウロ様ではなく私の方を見つめてきた。
「……ジュスティーナ。お前、いつも陰気な恰好ばかりしているくせに今日はやけに着飾ってるじゃないか。そんなドレスお前には似合わないからやめておけよ」
いきなりそんなことを言われて、ぽかんとしてしまった。今はドレスの話をするタイミングだっただろうか。
フェリーチェも同じことを思ったようで、納得のいかなそうにルドヴィク様を睨む。
「ルドヴィク様! もっとこの二人の失礼な態度と軽率な振る舞いについて怒ってくださいまし! 確かにお姉様にはもっと色褪せたドレスのほうが似合うと思いますけれど!」
「い、いや、だって……」
「おい、ちょっと待て! 君たちの目は節穴なのか!? ライトグリーンのドレスを着たジュスティーナ嬢は妖精のように愛らしいだろう! もっとよく見ろ!!」
言い争いを始めるフェリーチェとルドヴィク様に、ラウロ様がなぜか先ほどまでよりムキになって割って入っていく。
パーティー会場で大声を出すものだから、会場にいるほとんどの生徒の視線がこちらに集まっていた。
すると突然、静かな、けれど重みのある声が会場に響く。
「……君たち。ここは喧嘩をする場所ではないよ。騒ぐなら外に行ってもらえるかな」
「何よ、うるさ……」
眉を吊り上げて声のした方を見たフェリーチェの顔が、途端に青ざめる。私もそちらに顔を向けると、そこには黒髪に青い目の、驚くほど整った顔をした男性が立っていた。




