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「あなたにそんなこと言われたくな……」
「それにお姉様! 乗り換えるにしてもこの方はやめた方がいいわよ! 悪い噂ばかり聞くじゃない。それに顔半分が痣で真っ黒になっている方なんて、隣に並ぶの恥ずかしいでしょう?」
「フェリーチェ!!」
フェリーチェがラウロ様を横目で見ながらそんなことを言い出すので、かっと頬が熱くなった。
渡り廊下で会ったときも同じようなことを言っていたけれど、まさか本人の前でそんな失礼なことを言うなんて。そこまで考えなしな子だとは思わなかった。
「何を言い出すの! ラウロ様に謝ってちょうだい!!」
「いいよ、ジュスティーナ嬢。そんなに怒らないでくれ」
私がフェリーチェの腕を掴みかけると、ラウロ様にそっと手を伸ばして遮られた。見上げるとラウロ様は小さく笑みを浮かべてこちらを見ている。
私が戸惑っていると、ラウロ様はフェリーチェに視線を向けた。
「妹さんの言う通りだ。俺もジュスティーナ嬢のような美しいご令嬢の隣にいるのが俺では申し訳ないと思っていた」
「まぁ、お姉様をそんな風に言ってくださるなんて珍しい方」
フェリーチェは目を見開いてそんなことを言う。あまりに失礼な態度に、見ている私のほうがいたたまれなくなる。
フェリーチェに嫌味を言われるのには慣れているけれど、私にだけでなくラウロ様にまで絡んでくることまで予想していなかった。
ラウロ様を巻き込んでしまった申し訳なさと恥ずかしさで消えてしまいたくなる。
パーティーになんて参加しないで、大人しくしていればよかったのかもしれない。
「やっぱり、お姉様のお相手だけあって不思議な感性をしてらっしゃるわぁ。元婚約者に遠慮もせずに二人でのこのこパーティーにやって来るなんて信じられない!」
口の止まらないフェリーチェは、頬に手をあててため息交じりに言う。
それを聞いたラウロ様は、心底不思議そうな顔で尋ねた。
「? それは君も同じだろう? 君だって婚約破棄されたばかりの姉の元婚約者と、揃ってパーティーに参加しているじゃないか」
ラウロ様の言葉に、フェリーチェの顔がさっと赤く染まる。
「何をおっしゃるの!! 私はお姉様に一方的に婚約破棄されたルドヴィク様がお気の毒だから、一緒にパーティーに参加しただけよ!」
「それにしてはやけに親密なように見えるがな」
ラウロ様は、ルドヴィク様の手に絡めたフェリーチェの手を眺めながら言う。フェリーチェはぱっと手を離した。




