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妹ばかり見ている婚約者はもういりません  作者: 水谷繭
6.ダンスパーティ

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30/108

6-1

 あっという間に時間は過ぎて、ダンスパーティーの日がやって来た。


 パーティーは夜、学園のホールで行われる。私はどきどきしながら準備をした。



「ジュスティーナ様、とっても似合っていますわ!」


 着替えとヘアセットを手伝ってくれていたエルダさんが、手を合わせて明るい声で言った。私はなんだか落ち着かなくて、そわそわとスカートを握る。


 ラウロ様が選んでくれたライトグリーンのドレスはとても可愛らしい。だけどやっぱり実際に着てみると気後れしてしまう。


 今までこういう少女らしい華やかなドレスを着るのはフェリーチェの特権だと思っていたから、どうしても私が着てもいいのだろうかという思いが消えない。


 まだ中等部の頃、珍しく明るいレモン色のドレスを着てルドヴィク様の家を訪れたら、「君には似合わないな」と素っ気ない声で言われたことを思い出す。


 もともと自分に可愛らしいドレスが似合うなんて全く思っていなかったけれど、その一言は私にもう絶対に華やかなドレスを選ぶのはやめようと決意させるのに十分だった。



「ジュスティーナ嬢、準備は終わったか? 入ってもいいだろうか」


「あ、はい! どうぞお入りください」


 扉の外からラウロ様の声が聞こえ、私は慌てて返事をする。


 そうだ、今日はせっかくラウロ様が一緒に出てくれるパーティーなのだ。ルドヴィク様のことなんて思い出して暗くなっている場合ではない。


 ガチャリと音がして扉が開く。


 扉の向こうから顔を出したラウロ様は、ダークグレーのタキシードを着ていた。ネクタイやハンカチなど、小物のところどころにグリーンが使われている。私のドレスに合わせてくれたのだろう。


 正装をしたその姿に思わず見惚れてしまった。なんだかまるで、王子様みたい。


 すると、じっと真面目な顔でこちらを見ていたラウロ様の顔がふっと緩んだ。


「思った通り、とてもよく似合っているよ。妖精のようで愛らしいな」


「よ、妖精……!?」


 ぼぅっと見惚れていたところで突然そんなことを言われ、顔がぶわりと熱くなった。この人はどうして美しいだとか妖精だとか、照れもせずに真面目な顔で言えるのだろう。


 褒められ慣れていない私は何と返したらいいのかわからなくなる。

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