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【書籍化】妹ばかり見ている婚約者はもういりません  作者: 水谷繭
15.慌ただしい日々

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15-3

「早く噂が消えるといいですわね。といっても、今はみんなラウロ様に近づきたがっていますから、すぐに誤解は解けると思いますわ!」


「……ああ。でも、ジュスティーナ嬢が俺を信じてくれるなら、別に誤解されたままでもいいかもしれない」


 ラウロ様は柔らかく笑ってそう言った。


 なんだか私だけでいいと言われたみたいで、くすぐったい気持ちになる。


 私はすっかり幸せな気持ちになりながら、ラウロ様と並んで王宮を後にした。



***



 そんな日々がしばらく続いた後、私は随分と久しぶりにローレの家に戻ることにした。


 長いこと逃げてきてしまったけれど、さすがにそろそろ一度帰らなければならないと、ようやく決心がついたのだ。


 ルドヴィク様と婚約破棄してしまってから、両親に会うのは初めてだ。


 一体何を言われるだろうかと不安になる。



「ジュスティーナ嬢、大丈夫か?」


 馬車の中で悶々としていると、ラウロ様に心配そうに尋ねられた。今日はローレの家まで、ラウロ様も一緒に来てくれることになっていた。


「だ、大丈夫ですわ……」


「本当か? 顔色が悪いぞ。気分が悪いなら別の日にしても」


「いいえ、きっと別の日でも同じですから……。今日行ってしまいます!」


 私が半分やけになって言うと、ラウロ様にはらはらした顔で見られてしまった。



 落ち着かない気持ちのまま馬車に揺られ、やがて王都の端にあるローレ家のタウンハウスに到着した。


 数週間ぶりに見るローレ家は、随分とよそよそしく感じる。


 久しぶりに会うローレ家の執事にお屋敷の中へ通してもらい、私は応接室に足を踏み入れた。



「おお、ジュスティーナ! よく帰った! 元気そうじゃないか!」


「ジュスティーナ! 久しぶりね! 急に帰らないなんて言うから心配したのよ?」


 部屋に入った先にいたのは、満面の笑みを浮かべた両親だった。


 予想外の光景に呆然としてしまう。



「お父様、お母様、ただいま帰りました……。勝手なことをして申し訳ありませんでした」


「気にするな。私たちもお前には随分と不自由な思いをさせてしまったからな」


「契約石を壊してしまったんですって? ルドヴィク君との婚約がそこまで嫌だったのね。気づいてあげられなくてごめんなさい」


 お父様とお母様は眉根を寄せ、しんみりした声で謝ってくる。


 これまでの人生で両親にそんなことを言われたことは一度もなかったので、驚きで言葉に詰まってしまった。




「それで、ジュスティーナ」


 お父様は急に真面目な顔になると、どこかそわそわしたように視線を彷徨わせながら、小声で耳打ちして来た。


「何でしょう?」


「そちらがラウロ王子殿下なのかね……? 通信機で話したときとは随分様子が違うが……」


 お父様に視線を向けられると、少し下がったところで私たちを見ていたラウロ様が、両親の前に歩み出て頭を下げた。



「はじめまして、ラウロ・ヴァレーリと申します。この度は、大切な娘さんをご両親の許可も取らずに連れ出してしまい申し訳ありませんでした」


「い、いいえ、ラウロ殿下! 滅相もございません! 頭をお上げください! こちらこそ、先日通信機で連絡をくださった際は王子殿下だと存じ上げず、大変失礼いたしました!」


 ラウロ様に頭を下げられたお父様は、顔を青ざめさせながらぺこぺこ頭を下げている。


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