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01.大きな小石に気をつけろ


小さくてキラキラ。

甘いお菓子に可愛い洋服

それからお化粧。

ふわふわのクマのぬいぐるみ

リボンやフリルも

たくさん種類がある


全部全部、女のコのための

"可愛い"でこの世界はあふれてる。



ほんの少しの魔法で

可愛いを作れる無敵の存在


それが女のコ。




まぁもちろん

人それぞれだし

例外もあったりするけど

それでもやっぱり

女のコはすごいんだ。



俺は野宮守(のみや まもる)

一人暮らしをしながら

都内の高校に通う高校2年生。

両親とは理由(ワケ)あって別居中


卒業後は、まだ未定……。


そんな俺の毎日はとても退屈で仕方がない


朝起きたら学校に行って

学校が終わればバイトもしてないから家に帰るだけ

ご飯を作って、食べて風呂入って

ゲームして寝る。

それの繰り返し


たまにイレギュラーで

テストとかあるけど

基本的に1度聞いたら覚える方だから

勉強も好まず。



今日もそうだった


授業が終わり

生徒たちは帰りの支度を済ませ

帰宅するもの、友達と喋って時間を潰すもの

各々が自由に過ごしている中

1人考え事をしながら

窓の方に目を向ける。


意識を少し遠くへやると

チャイムが鳴っているのが聞こえた。




俺は、女の子に生まれたかった

いや、今でも女の子になりたいとすら思っている。

もちろん、産んでくれたこと自体には

感謝してるし、今日まで生きてるのも

両親のおかげだし

男だから嫌だとかそんなことは無い。


でも、可愛いものが好き

それだけなんだ


恋愛対象だって男じゃないし

今後も付き合いたいとも思わない

初恋だってちゃんと女のコだし

今まで付き合ってきた人も女のコだ。


誰かに執着するのは苦手で

どの子とも長続きはしなかった


もちろん誰も俺の

趣味に興味もなければ

分かってくれようとさえしなかった


結局はステータスでしかなかったのだと

今はもう割り切っている。



「ねぇ、この前のゆうくんのインストグラム見た?」


「見た見た!ガチやばい!流行りに乗りすぎー!とか思ったけど韓国系カフェやばい!ゆめかわすぎるし、軽率にスクショかました〜!」

「マ!?……じゃあさ!今日とかさっそく行っちゃわない??」

「んぁ〜!さすがすぎ!行こ行こ!でも空いてるかな?」

「並べばいつかは入れるっしょ」

「極論すぎん?」

「それはそう!笑」


俺の前の席の女のコと、多分隣(?)のクラスの子が

楽しそうに話している。


いいなぁ


「……。」


窓の外に落ちていく木の葉を

ぼんやりと眺めている……フリを

しながら会話を聞いてはため息を漏らす



カフェか……気になるな

あとでヌーヌル先生に調べてもらおう


こうして可愛い情報収集をする毎日



一通り聞けて満足したので

そろそろ帰るかと席を立つ。

……が思いの外、力が入ってしまったのか

机に置いたカバンが

ドンッと大きな音を立てた


教室に残っている数人の生徒が

一斉にこちらを見て

すぐに視線を逸らした。


「あ……」


やってしまった


「っ……!」


無言でカバンをつかみ

教室を後にする。


「ウチらうるさかったんかな?」

「だねー」

「でもさ、野宮っていつも黙ってるし窓の方ばっか見てるしでよくわかんないよね」

「それなー。正直何考えてんのか分からん」


「「でも、イケメンだよね〜!」」



教室を出るともう外は

ほの暗くなり始めて夕日がまぶしく

廊下にいる生徒や窓ガラスを照らしていた。


下校しながら

友達とふざけ合ってる生徒を横目に

足早に歩みを進める。

廊下を通り過ぎれば

そこからは早かった。

校門をくぐってから

一息つく。


……やっちゃった

もう少し落ち着かなきゃ

ちゃんとしなきゃ

"変に思われる"


1度意識してしまうと

良くない考えばかりが浮かんで

呼吸も早く、冷や汗が止まらなくなる。


(だめだ、考えるな忘れろ。)


大丈夫、今の俺は上手くやれてる

誰にもバレてない

これからもちゃんと隠してみせる。


あの時からそう決めてるんだから。


でもやっぱり


「理解されないのってキツ……。」


そう言いながらしゃがんだら

夕日に照らされた小石が何故か

すごく大きく見えた気がした。



このままこんな毎日を送っていくことに

ほんの少しの絶望すら感じる。


生まれ変われるなら

女のコになりたい

好きな服を着て

好きな話をして

誰の目も気にせずに

お洒落してお出かけして

休日はお菓子作りとかもしたい

温かい紅茶とそれから……


目を閉じてその光景を想像してみる。


そうだな

小鳥の親子に子猫

かわいい動物に囲まれるのも悪くない

クマのぬいぐるみは絶対必要だな

リボンもちゃんとその子にあうものを

選んでつけてあげるんだ


それとクリームたっぷりのケーキ。

さくらんぼを沢山使ったケーキとか

王道だけど苺のショートケーキや

チョコレートケーキも外せないな


(あー、口の中がチョコレートの気分に……)


ピギュイィィィ!


その時ふいに

鳥の鳴き声が遠くで聞こえた


想像してる小鳥よりは随分と

野太い感じだけど


「ん……鳥……?」


今は夕方だし

この辺は公園はあっても

山なんかは無い。

それが鳥の鳴き声???


不思議に思って目を開けると

一気に現実に戻された。


「はにゃ?」


そこに広がる景色は

いつも歩いていた学校の帰り道ではなく

どこを見ても緑で埋め尽くされた

森の中だったのだ!


ちょっと目を閉じて考え事をしていただけなのに

森の中にいるだなんて

どう考えてもおかしい!



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