救出作戦 3
勇者の指示で、魔法使いルナリアとスペシャルブラックスの魔法使いが氷魔法で海水を凍らせ、リバイネ様の動きを止める。そこで勇者は予め用意した小舟に乗ってすぐに退避する。小舟はリザードマンの部隊が水中で泳いで操縦する。
それに合わせて、リバイネ様に大量の水中用ゴーレムでワイヤーを引っ掛けていく。多くのゴーレムが残骸になった。これを人でやれば、一体何人の死者が出たことだろうか?
ワイヤーが設置できたところで、阿修羅隊とゴブリン隊の出番だ。この部隊がリバイネ様をワイヤーを引っ張って、要塞まで連れて行くのだ。指揮官のダンカン将軍の檄が飛ぶ。
「阿修羅族もゴブリンも息を合わせて引くことだけを考えろ!!クラーケンの攻撃は仲間が必ず防いでくれる」
リバイネ様は、触手や水流ブレスで攻撃してきたが、ベッツ・スパクラブの魔法使いと回復術士が得意の結界魔法で、これを凌ぐ。途中、魔力切れで冷や冷やしたが、勇者パーティーのグリエラとガイエルが応援に駆けつけて、攻撃を凌ぎ切り、何とかリバイネ様を要塞まで引っ張り込めた。
作戦の第一段階は成功だ。
第二段階はこの要塞で約1時間、リバイネ様を留め置くことだ。要塞にはリバイネ様の魔力を吸い取る術式が施されている。古龍の魔力のみ吸い取る術式になっているので、同じ古龍のドライスタ様やリバイア様の手助けは得られない。
予想以上にリバイネ様は力が強く、魔力も多い。苦戦することは必死だ。
私達の取った作戦は、オルマン帝国顔負けの人海戦術だ。それもかなり豪華な。
まず勇者パーティーがリバイネ様と対峙する。勇者パーティーだけあって、予定よりも長い時間、戦闘が継続できた。
一端下がった勇者パーティーに続いて、ゴブリン隊と阿修羅隊の統率の取れた攻撃を開始する。しかし、すぐに5人のゴブリンが吹き飛んだ。こちらは思ったよりも短い時間しか戦闘ができなかった。
次は大量のゴーレムで戦いを仕掛ける。これに併せて弓兵隊が一斉射撃を行う。近接攻撃をしているのはゴーレムなので、誤射しても何の問題もない。
1時間が経過した。
ヘンリーさんが言う。
「魔力量が予想より多く、1時間では吸い取り切れませんでした。もうしばらく耐えてください」
しかし、こちらはかなり疲弊している。勇者パーティーでさえも、魔法使いのルナリアが魔力切れを起こし、サポーターのロイさんは火力不足から救護班に回っている。
勇者パーティーは二人が抜けた穴にスペシャルブラックスの赤毛の女剣士とダンカン将軍を急遽編成し、急造パーティーを編成して戦いに臨んでいる。
他の部隊も、あれだけ大量に用意していたゴーレムも残機が少なくなり、ゴブリン隊や阿修羅隊にあっては重傷者続出で、既に部隊は壊滅状態だった。
ヘンリーさんは言う。
「最悪の最悪は、ロンメル殿、キョウカ様、ミルカ様を君の判断で招集してほしい。これは使いたくないけど・・・。今回の機会を逃したら、リバイネ様の救助はもうできないからね」
キョウカ様達を呼べば確実にリバイネ様を留め置けるが、後々の説明が苦しくなる。場合によっては、ダンジョン規定の重大な違反とされて、営業停止にされる可能性もある。
何とか、この3人を投入しなくていいようにと祈りながら戦況を見守った。
何とか耐えきった。残りのゴーレムをすべて投入し、戦闘員は皆満身創痍だったが、何とか間に合った。
リバイネ様は光り輝き、醜いクラーケンの姿からドミティア様位の大きさの美しい青い鱗の龍となり、その場に倒れ込んだ。
(やった!!成功だ!!)
ヘンリーさんが確認し
「成功です。リバイネ様も無事です」
というと歓声が上がる。しばらくして、ドライスタ様と奥様のリバイア様がやってきた。
「みなさんありがとうございました。必ずお礼をします。それにリバイネはキチンと教育して皆様に謝罪させますから」
リバイア様がそう言うとリバイネ様を連れて飛び去った。
幸い死者もなく、重傷者も回復魔法で、すぐに回復できる者ばかりなので、勇者達はこれから宴を開くようだった。私とヘンリーさんも誘われたが、今後の対応があるので、泣く泣く辞退した。
ダンジョンに帰ると待機していたセントラルハイツ学園のエルフの教授陣がリバイネ様の診察をしていた。教授の一人が言う。
「成功です。後遺症もありません。ロンメル殿の治療で我々もノウハウを得ていたので、それが功を奏しました」
しばらくして、リバイネ様は意識を取り戻した。
「あれ?妾は一体・・・。ゴミのような人間どもめ!!根絶やしに・・・・」
そう言ったところで、龍の姿のままのリバイネ様にぶん殴られた。リバイネ様は再び意識を失うことになったのは言うまでもない。
「皆さん本当にありがとうございました。この馬鹿な妹は私が少し教育してから皆さんの前にお出ししますので、しばらく二人っきりにしてください」
そう言うとリバイア様はリバイネ様を咥えて飛び去った。
遠くからリバイネ様の泣き叫ぶ声がこだまする。
「痛いー!!妾を許してくだされ!!姉上!!」
「変な言葉遣いしてんじゃないわよ!!いつの時代の何の設定よ!!」
数時間後、リバイア様に連れられて姿を現したリバイネ様は、ドミティア様と同じくらいの10歳前後の美少女で、青い髪と青い瞳が特徴的だった。
「すいません。ごめんなさい・・・・」
素直に謝っていた。
次の日、勇者から要望があった。
リバイネ様が棲みついていた離れ小島にリバイネ様を祭る神殿を建設したいとのことだった。移住してきたリザードマン達のたっての要望だそうだ。
この報告を受けたリバイア様は言う。
「リバイネはまだ、人間達に祀ってもらうような資格はありません。ですが、これから、古龍としてのプライドを持って努力していくのなら、その有難い申し出を受けましょう。これから私達が厳しく指導していきますので覚悟しておきなさい」
そして、ミランダ社長も言う。
「それならいい方法がありますよ。ダンジョンを作るのです」
また、ややこしい話しになりそうだ。
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