救出作戦 2
私はドライスタ様御一家とスタッフに勇者達との戦略会議で決まった事項を報告する。
まず作戦としては、ニューポートの東の海で入江となっている場所に要塞を建設する。そこにリバイネ様の魔力を吸い取る魔法陣を設置する。
作戦の肝となるのは、如何にして要塞にリバイネ様を引き込むか、そして、魔法陣の中で約1時間、留め置けるかだ。
ミランダ社長が質問する。
「どうやって、リバイネ様をその要塞まで引き込むの?」
「それは力技なのですが・・・・」
阿修羅&ゴブリンズがミスリルゴーレムに使用したワイヤー弾を撃ち込み、阿修羅隊とゴブリン隊で引っ張る。リバイア様の話では、力は娘のドミティア様と同じくらいになるとのことだったので、ワイヤー弾が着弾すれば可能とのことだった。
「なので、龍を引っ張る訓練をドミティア様にお願いしたいのですが・・・・」
「私は大丈夫よ」
ドミティア様の了承は得られた。
それから、要塞の建設とリバイネ様の引っ張る計画について、詳細をヘンリーさんが話す。
「要塞の建設には海路が確保できれば大きな利益が上げられる商業都市ダッカのネリス商会が出資しと作業員を派遣してくれるので問題ありません。それと、建設中はドライスタ様かリバイア様が作業員の護衛をしてもらいたいのです。リバイネ様はドライスタ様かリバイネ様が近くにいると姿を現さないのを逆手に取った作戦です。もしそのときにリバイネ様が現れた場合はドライスタ様とリバイア様が捕獲してもらっても構いませんよ」
「多分、私達がいるとリバイネは現れないでしょう」
リバイア様が言う。
「とりあえず、今はそんなところです。訓練と要塞建設の進捗状況で作戦の決行日を決定します」
そして、訓練と要塞の建設が始まった。
ドミティア様は訓練が楽しいようだった。阿修羅隊と綱引きのようなことをしている。最初は力負けしていた阿修羅隊も連携が取れ、コツが分かってきたようで、ドミティア様を引っ張れるようになっていた。ドミティア様はこれも楽しんでいる。
「わあ!!速い!!もっと速く引っ張って」
それと訓練と護衛のため、ドライスタ様御一家は毎日、ロイさんの料理を食べている。まるで餌付けされているようだ。このことは言わないでおこう。
2ケ月後、要塞が完成した。
私は勇者達との戦略会議に参加している。当日作戦行動に参加する応援部隊が揃ったからだ。勇者は、今回の作戦に当たって、魔国デリライトとノーザニア王国に応援要請を出していたようで、魔国デリライトからはスペシャルブラックスという特殊部隊が派遣され、ノーザニア王国からはベッツ・スパクラブとマティアスというゴーレム使いが派遣されていた。
スペシャルブラックスの魔法剣士と赤毛の女剣士、インプ族のゴーレム使いの少年は、マティアスというゴーレム使いと同じ、ダンジョン攻略パーティーのマリオネットソードのメンバーだ。しかし、赤毛の女剣士とインプ族のゴーレム使いの少年は覆面をしていて、正体を隠しているようだった。
しかし、残念なことにここにいるメンバー全員がこの二人の正体を知っている。
私がキョトンとしていると勇者が耳打ちしてきた。
「バレていない設定で、話を進めてください」
何か特別な事情があるらしい。
この会議では具体的な方法の詰めが行われた。まずはリバイネ様の住処とされている東の海にある離れ小島付近に簡易の桟橋を架けるという。桟橋が建設できれば、一端ドライスタ様達の護衛は止めて、その桟橋が壊されるかどうかを確認するというものだ。そして、桟橋が壊されたのを確認できたら勇者自ら、領主として警告する。
その警告に従わなければ、実力行使に出るということだった。
これには、リザ―ドマンをはじめ、様々な種族が古龍信仰をしていることに配意してだ。いきなり武力行使に出るのは、政治的に拙いらしい。
最後に勇者が言った。
「現在、リザードマンの部下が根気よく説得を続けています。できればその説得に応じてくれればいいのですが・・・・なので、ギリギリまで交渉を続けさせてください」
これには出席者全員が同意した。ダンカン将軍が言う。
「我が指揮する阿修羅隊とゴブリン隊が要塞までクラーケンを引っ張るのだが、我らの防護をしてもらうベッツ・スパクラブとの連携も取りたいので、猶予期間は長いほうがいい。まあ、その分の戦費は増えるでしょうが・・・」
ダンジョンに帰還して関係者に報告する。
ダークリザードのタリーザが言う。
「勇者の気持ちもよく分かります。部下のリザードマンにしてみれば、いくらリバイネ様を救出するためとはいえ、武力行使に出るのは躊躇われますから・・・・」
私もそう思う。できれば、上手く説得に応じてくれればいいのだが・・・・・。
しかし、その期待も虚しく、武力行使に出ることになった。
離れ小島に架けていた橋が壊され続けた。そして、決行日の朝、部隊を待機させた状態で、桟橋を壊しているリバイネ様を確認した。リバイネ様は、巨大なタコともイカともつかないような醜い魔物だった。美しいウォータードラゴンのリバイネ様とは似ても似つかない。クラーケンと言われ、恐れられているのも頷ける。
勇者が、拡声の魔道具で警告する。
「なぜこのようなことをするのですか?人のものを勝手に壊してはいけません!!」
リバイネ様は会話はできるようで、勇者に答える。
「ここは妾の海じゃ!!勝手にこんなものを作って偉そうに!!」
「ここは元々はドライスタ様の領地です。ドライスタ様にもリバイア様にも開発の許可はもらっています。もし領有を主張されるなら、話し合いの場を設けます」
「妾を追い出す気か?」
「何もここから出て行けと言っているわけではありません。私達は漁ができて海路が確保できればかまいませんので・・・」
「ごちゃごちゃうるさい!!人間も嫌い!!お姉様も嫌い!!お前らも妾を笑いものにしようとしてるんだろうが!!」
「分かりました。それでは橋を損壊した容疑であなたを拘束します。ルナ、今よ!!」
話にならなかった。
もう実力行使にでるしかない。
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