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<完結>ダンジョンコンサルタント~魔王学院ダンジョン経営学部のエリートが劣等生女子とともにポンコツダンジョンを立て直します  作者: 楊楊
第四章 オリジナルダンジョン

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幕間 悲しき女スパイ 2

ミーナが教会を調査したいと言い出したので、私は一端ダンジョンに戻って、ヘンリーさんに報告するように提案した。ミーナが言う。


「そうね。一端情報をまとめたほうがいいかもしれないわね。危険が伴う任務になるかもしれないからね」


どこからそういう発想になるのかは不思議だ。ミーナが教会に目を付けた理由はミックスナッツから過激派の話が少し出たからだ。ミーナの想像ではニューポートの教会は過激派の総本山になっているかもしれない。


ヘンリーさんに報告するとヘンリーさんはミーナを褒めた。


「ミーナさんは凄いね。正式に調査依頼を出してもいいくらいだ」


それはやめてほしい。ますます私の仕事が無くなってしまう。


ヘンリーさんの許可を受けた私達は、次の日、地元の聖母教会を訪ねることになる。

一般的に過激派と呼ばれる集団は、正式には「アルボラ」という組織で、聖母教会の中で誕生した宗派、テティス派から派生したものと言われている。聖母教会自体が聖母ガイアを崇める宗教だが、テティス派は、なぜかその娘であるテティスを信仰している。どういった経緯でテティスを信仰するようになったかは不明で、派閥ができて100年も経過していないらしい。


「A-2ダンジョンも過激派のせいで苦労させられたからね。謎めいた悪の組織「アルボラ」の実態解明と壊滅は私の使命だと思うのよ」


(だから、あなたはサブマスターなんですけど・・・・。過激派に迷惑を掛けられたのは分かるけど)


「ところでミーナ、自分のダンジョンのほうは大丈夫なの?」


「今のところ、落ち着いてるから大丈夫よ。私が2~3日いなくても問題ないわ。それよりも過激派よ。今後、絶対に私達に厄介ごとを持ち込むわ。これはスパイとしての勘よ」


(だ・か・ら、あなたはA-2ダンジョンのサブマスターなのよ!!)


ミーナといい、「光の洞窟」のネロスさんといい、自分の役割が分かっていない人が多い。


私とミーナは聖母教会に向かうと、まず勇者パーティーの神官騎士レイモンドと魔法使いルナリアに挨拶をした。食事会などで度々顔を合わせているので、顔見知りだ。二人にミーナを紹介する。


「レイモンドさん、ルナリアさん、お久しぶりです。こちらが私の友人のミーナです。二人に頼みがあってきました。こちらのミーナに取材をさせてもらえませんか?」


ここでの設定は、ミーナは編集に携わっており、ニューポートの記事を書きたいので、協力をしてほしいということにした。もし彼らが怪しんで調べたとしても、ギルドや商店街で取材の真似事をしているので、それ以上怪しまれることがないだろうという理由からだ。

実際、ミーナはミスタリアグループの機関紙の原稿依頼が来ていて、ニューポートについての調査結果をまとめる予定だそうで、あながち嘘でもない。


いい作戦だと思うだろう?当然ミーナが考えた作戦だ。


「そういうことなら、ここの代表者のシスターフローレンスを紹介しましょう。今は少し別件で外出してますので、それまでは教会の案内をしますよ」


レイモンドの案内で、教会内を見て回ったり、活動状況を教えてもらったりした。私利私欲に走る教会も多い中、ここの教会は地域に根差した教会の本来あるべき姿と言っていいだろう。治療院では格安で治療を施しているし、ギルドと提携してギルドに治療師を常駐させている。

また、地域の子供達、ほとんどがゴブリンだが、学校のような活動もしている。今も魔法使いルナリア

が子供達に教鞭を取っている。


「ルナには感謝しています。教会の関係者でもないのに薄給で子供達に勉強を教えてくれてますし、駆け出しの冒険者に対しても、魔法教室を開いてくれているんですよ。ルナとは幼馴染みたいなもので、昔から知っているんですが、こんなにも優しい子だとは思いもよりませんでした」


(そうなったのは、レイモンドさん、あなたが原因ですよ。ルナリアさんが今もキラキラした目であなたを見てますよ)


しばらくルナリアさんの授業を見学していたら、子供達がレイモンドさんに近寄って来た。特に女子生徒が多い。レイモンドさんはかなりのイケメンだからね。


そうしたところ、シスターフローレンスが帰ってきたとのことだったので、レイモンドさんに紹介してもらった。シスターフローレンスは若い女性で真面目な感じがする。可愛らしい美少女だ。彼女の傍らには側近の女性が控えていた。

私とミーナが事情を話すと快く取材に応じてくれた。。


でも私は後悔することになる。彼女はかれこれ2時間程、話し続けた。


「・・・・という形で、聖母ガイア様が世界を想像されたのです。そして、その教えを忠実に受け継いでいるのが現聖女のカタリナ・クレメンス様です・・・」


悪い人ではない。

ただ、ちょっと残念な感じがする。ダンジョンを語るミランダ社長のように聖母様について語っている。みんなが聖母様に興味があると勘違いしているところは、同じタイプの人間の特徴だろうか?話が少し途切れたところで、ミーナが話題を変える。


「ニューポートのような多種族が共存する都市では、いわゆる過激派という集団の活動が活発になることが予想されます。シスターフローレンスはその点についてどのようなお考えをお持ちでしょうか?」


(ミーナ!!ナイス!!)


私達が聞きたかったことをやっと聞けた。


「教会でも過激派の活動は認めていませんし、すべての種族が平等であるというのが本来の教えです。

しかし、お恥ずかしい話ですが、教会内ではドロドロとした権力闘争が繰り広げられています。過激派の元となったテティス派はもちろんですが、その他にも自分達の都合がいいように教義を捻じ曲げる宗派もいるのです。現聖女のカタリナ様も苦労されています。

だからこそ、このニューポートでは聖母教会本来の正しい教えを広めていきたいと思っています。

あっ!!少し言ってはいけないようなことを言ってしまったので、この辺で止めておきます・・・」


話してみて分かったが、少し周りが見えないところはあるが、シスターフローレンスは悪い人間ではなさそうだ。このニューポートに赴任してきたのも、正しい教えを広めたいというのが理由で、その言葉に嘘は無さそうだった。


私とミーナはシスターフローレンスにお礼を言って教会を後にする。

レイモンドさんが途中まで送ってくれたのだが、ミーナがレイモンドさんに質問する。


「ところで、シスターフローレンスの側にいた女性はどういった方なのでしょう?」


それは私も気になった。多分擬態魔法でも掛けているのだろうが、多分魔族だ。


「サキュラさんですね。お兄様が聖女様の側近中の側近で、彼女も優秀な方ですよ。聖母教会でも秘術である「血のイニシエーション」が行える稀有な女性です」


(血のイニシエーション?怪しい響きだ)


ミーナも気になったみたいで、レイモンドさんに質問する。


「血のイニシエーションとは、血液を使った様々な技法のことですね。血を調べるだけで、病気や体調が分かったり、血を利用した薬剤やポーションなんかも作れるみたいです。特別な才能がないとできないので、残念ながら私もできないのです。勇者パーティーも定期的にやってもらっているので、よろしければ、一度お試しになってみればいいのでは?」


女スパイのミーナでなくても分かる。

血のイニシエーションなんて怪しすぎる。とりあえず、ヘンリーさんに報告しよう。

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