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<完結>ダンジョンコンサルタント~魔王学院ダンジョン経営学部のエリートが劣等生女子とともにポンコツダンジョンを立て直します  作者: 楊楊
第四章 オリジナルダンジョン

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幕間 悲しき女スパイ 1

ピアース王子のパーティーがダンジョンを攻略してから、半年、勇者が依頼した招待パーティー以外でダンジョン攻略を達成したのは一組のみであった。女性の虎獣人の斥候スカウトを中心としたAランクパーティーだった。実力的には「ベッツ・スパクラブ」と同程度の実力だと思われたが、ダンジョン攻略記念の宴会で勇者に粗相を働いたみたいで、リバイネ様の救出作戦には組み込まないことになっていた。


なので、全体的にダンジョン攻略は不調と言っていい。

ダンジョンの運営も新人スタッフの3名がかなり優秀なので、実質私はほとんどすることがない。私はというと情報収集という名のレストラン巡りをしている。ニューポートの町自体も発展し、ギルドに併設されている「新風亭」以外にも多くの飲食店がオープンしている。もちろん一番のお気に入りは「新風亭」だけど。


今日はミーナを誘って、食べ歩きをしている。


「ミーナ、実はスパイというのは派手さがないのよ。地道に町の人の話に耳を傾けたり、相場をチェックしたりするのがメインの仕事なのよ」


私はヘンリーさんの受け売りで、ちょっと上から目線でミーナに語った。


「そうなのね。だったら、ナタリーが普段やっていることを私にも体験させてよ」


そう言われても困ってしまう。だって、大半が「新風亭」でダラダラ過ごすだけなのだから・・・・。


そして、「新風亭」で食事を取りながらミーナと雑談をする。ミーナは、料理には満足していたが、私の活動には不満らしい。


「ちょっとナタリー。ここで周囲の話に耳を傾けるだけなんて、どうかと思うわ。私に考えがあるの」


そういうとミーナは席を立ち、隣の席の冒険者パーティーの話掛けた。


「すいません。私は出版社の方から来た者ですが、少しお話をよろしいでしょうか?」


出版社の取材を装って、話を聞く作戦のようだ。

ミーナが話しかけた冒険者パーティーは「ミックスナッツ」という駆け出しのDランクパーティーだった。魔国デリライトとノーザニア王国との国境の町、クロスポートの出身で、獣人の男性戦士カシュー、魔族の女魔法使いクルミ、人間の女性剣士ピーナ、ハーフエルフの男性回復術士ヘーゼルの4人構成のパーティーだった。


「色々な種族が入り混じったパーティーは珍しいんじゃないんですか?」


「そうなんですか?。でもクロスポートでは普通ですよ」


魔族の女魔法使いクルミが答える。彼女が言うにはクロスポートは、魔国デリライトとノーザニア王国がともに領有権を主張している自治都市で、勇者パーティーと魔族チームの決戦が行われている場所でもある。そこには、人族も魔族も多く住んでいて、共存出来ているそうだ。


「このメンバーとは、幼馴染ですから特に違和感もありませんよ」


「そうなんですね。ところでどうしてニューポートで活動を始めたのですか?」


「それは、私達のメンバー構成に大きな理由が・・・・」


クルミさんの話だと、人族領では過激派の影響で、亜人や特に魔族が迫害を受けることがあり、魔族領にも反人族派閥と言うのが存在して人族を迫害する者も多くいるそうだ。

獣人の男性戦士カシューは言う。


「俺もそうだけど特にクルミは魔族だから、人族領での活動は危険が伴うんだ。逆に魔族領だと人間のピーナが狙われるし・・・・。俺達にもっと実力があれば・・・」


「冒険者になったからには色々なところを旅して、ダンジョンにだってどんどん潜りたい。今の私達の実力だと地元のクロスポート周辺に活動は限定されるわ。だから、新天地を求め、魔族と人族の共存を謳っているニューポートにやって来たのよ」


カシューに続いて、人間の女性剣士ピーナが話してくれた。

話が途切れたところで、再びミーナが質問する。


「ニューポートに来てみて、実際どうですか?不満や困ったことなどはありませんか?」


「ここは本当にいいところです。ギルドの教育システムや領主様の統治方法は素晴らしいと思います。ニューポートに着いて早々、全滅しかけましたけど・・・・」


そう言ったのは、ハーフエルフの男性回復術士ヘーゼルだった。ミックスナッツは、ワイバーン襲撃事件の際に「燃える泥」の採取作業員の護衛任務をしていたパーティーだった。因みに血塗れでギルドに駆け込んできたのが、このヘーゼルさんだ。


「あのときは、シクスさんや領主様率いる勇者パーティー、それに魔国デリライトの魔道弓兵隊に助けてもらいました。この事件を教訓にギルドもより安全面に力を入れてくれているんですよ」


ヘーゼルさんの話によるとシクスさんというのは、勇者パーティーと共にワイバーンの群れを殲滅していった阿修羅族の男性で、ニューポートで文官をする傍ら、冒険者としても活動しているようだ。それと安全面での強化だが、訓練所を増設したり、ベテラン冒険者が指導する制度も確立されているそうだ。更に地元の冒険者だけでなく、ダンジョン攻略に来た有力パーティーが新人たちを指導するのも慣例になりつつあるみたいだ。

ピーナさんが言う。


「私は「マリオネットソード」の剣士ティアナさんが目標ね。同じ人族で、しかも女性。スピードと華麗なテクニックは凄いのよ」


骸骨騎士様ロンメルさんも弟子が褒められてうれしいだろう)


「私はルナリア様が師匠ですね。勇者パーティーの魔法使いだけあって実力もあり、知識も豊富ですから」


クルミさんも続ける。


「私は勇者様の統治方法やギルマスの運営が素晴らしいと思いますよ。冒険者の実力の向上はもちろんですが、金銭面での援助もしてくれますし」


ヘーゼルさんの話では、ミックスナッツのような実力がまだまだの新人パーティーに優先的に護衛任務などの比較的危険の少ない仕事を斡旋してくれているようだ。それに冒険者割引制度もあって、格安の宿泊所を紹介してもらえたり、「新風亭」も割引料金で食べられるそうだ。


「えっ!!それは知らなかったわ。私も冒険者登録してるから今度はそれで食事をしようかしら」


「でも日替わり定食だけですよ。新作メニューは割引が効きませんからね」


「そうなんですね。それは悩むところではありますね」


そんな発言をした私にミーナが冷たい目で見ている。「お前の仕事はそれじゃないだろう?」と言われているような気がする。


「このような制度は勇者様の方針で、治安の維持が目的だそうですよ。犯罪者になるのは食い詰めた冒険者が多いので、その対策です。町だけでなく、ダンジョン内に不審なパーティーがいないかチェックするだけの依頼もありますからね」


ニューポートは発展途上だが、統治システムやギルドの制度は革新的なものが多く、急激に発展した理由も分かった。

その後、ミックスナッツにお礼を言って、彼らとは別れた。お礼に食事代を払ってあげたら非常に喜んでくれて、今後の協力も約束してくれた。


私が得るよりも多くの情報をたった1日で入手したミーナは、本当にスパイに向いているのかもしれない。


「ナタリー、次は教会を調べるわよ。あそこが怪しいわ」


ミーナが言う。

どうやら、彼女のスパイスイッチが入ってしまったようだ。


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