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<完結>ダンジョンコンサルタント~魔王学院ダンジョン経営学部のエリートが劣等生女子とともにポンコツダンジョンを立て直します  作者: 楊楊
第四章 オリジナルダンジョン

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プレオープンに向けて

南の草原に着くと勇者パーティーとワイバーンの群れが交戦中だった。何体かのワイバーンは倒されているが、ワイバーンの群れは危険を感じたのか、上空で旋回しているだけだった。勇者パーティーに弓使いや遠距離攻撃が得意なメンバーがいないので、にらみ合いが続いている状態だった。


「意外なことにこのパーティーにも弱点があったんですね」


ヘンリーさんが言う。勇者パーティーで遠距離攻撃ができるのは勇者と魔法使いの女だけだ。二人とも無尽蔵に特大魔法が撃てるわけではないので、こういった飛行系の魔物は弱点と言えばそう言える。サポーターの少年もスリングショットという飛び道具を持っているが、如何せん射程が短い。


草原に着いた私達は魔道弓兵隊の中隊長アルテミス王女の指揮に従うことになった。


「魔道弓兵はいつでも撃てるように魔力と弓の準備!!号令で一斉射撃する。冒険者諸君は後方で待機」


魔道弓兵が弓矢に魔力を込め始めた。

魔道弓兵の強みは射程距離と連射速度だ。魔法よりも弓を使うので魔力消費が抑えられ、連射も効く。ワイバーンなどの飛行系の魔物には相性がいい。

アルテミス王女は「部隊の準備が整った」との報告を受け、自身も弓矢を構え、ワイバーンに向けて弓矢を放った。


「我に続いて一斉射撃!!」


アルテミス王女の号令で部隊が一斉射撃する。上空で旋回していたワイバーンに次々と矢が刺さり、どんどんとワイバーンが落下していく。全くの不意打ちで、ワイバーンも対策が取れていないようだった。不意打ちとはいえ、かなりの威力だ。正直、本当に強力な部隊だと思った。特にアルテミス王女はその中でも群を抜いて実力者だと分かった。


「撃ち方止め!!クラシア王女!!詳しい説明は後です。落下したワイバーンの討伐を」


アルテミス王女は、勇者と知り合いらしく、勇者に指示を出していた。勇者パーティーはどんどんと落下したワイバーンにとどめを刺していく。流石は勇者パーティーだ。アッという間に殲滅していく。それと勇者の知り合いだろう屈強な腕が6本ある阿修羅族の男性もかなりの実力者だった。


「ちょこまかちょこまか逃げやがって!!借りは返してやる」


そう言って、素手でワイバーンを殴りつけて息の根を止めていく。よく分からないけど、勇者の周りには実力者が集まっているようだった。

しばらくして、落下したワイバーンは勇者パーティーに討伐され、残ったワイバーンも逃走していった。

私達冒険者グループは戦闘に参加することもなく、任務は終わってしまった。

するとギルマスはアルテミス王女と少し話した後、冒険者に向けて指示した。


「おい!!討伐されたワイバーンの解体と搬送の緊急依頼を出すよ。いつもの3割増しで買い取るから、早い者勝ちだよ」


冒険者は歓声を上げた。

もちろん私達も解体作業に加わる。勇者と魔道弓兵隊は先に町に引き上げて行った。私はもくもくと解体作業を行う。カーン子爵領の燻製肉工房では、ダンジョンのドロップ肉だけでなく、地元の魔獣の肉でも燻製肉を作っていたので、解体はそこそこできる。ワイバーンの解体は初めてだが、大きいいだけで、ほとんど同じ要領でできた。

作業を続けていると冒険者の数は半分以下になっていた。ベテランの冒険者が声を掛けてきた。


「お嬢ちゃん達は若いのに感心だな。近頃の若い者は、地道な解体作業なんてやりやがらねえ!!こういうことが冒険者として大事なんだけどな・・・」


「ありがとうございます。私はそこまで強くないので、こういったことも地道にやるようにしてるんですよ」


適当に話を合わしたら感心された。


「ますますいい娘だね。よかったらうちの息子の嫁に来ないか?」


(ほとんど冗談だろう)


ヘンリーさんはというと解体作業を続けながら、冒険者とも打ち解けていた。情報収集をしているようだった。

そんなとき、急に1匹のワイバーンが暴れ出した。ワイバーンは稀に死んだふりをして攻撃することがある。たぶんそれだ。ここには勇者パーティーもいないし、魔法弓兵隊ももういない。ヤバいと思ったが、なんとヘンリーさんが急接近して、ワイバーンの首を剣で切り落とした。いくらワイバーンが満身創痍で不意打ちだったとしてもこれは凄い。冒険者達も称賛する。


「地道な解体作業も文句言わずにやり、実力もある。将来は冒険者を背負って立つと存在になるだろうよ」


この件で更に冒険者と仲良くなり、情報もどんどんと収集することができた。





ワイバーン事件からしばらくして、とうとうダンジョン構造が完成した。

このダンジョンは少々特殊で、出現する魔物の種類で、植物系エリア、鉱山系エリア、飛行系エリアの3つのエリアに分かれている。それぞれのエリアにはボスがいて、討伐するとキーストーンという魔石がドロップする。そのキーストーンを3つ集めてダンジョン入口の特徴のある壁に埋め込めば、ダンジョンボスが出現する方式になっている。

ヘンリーさんがドライスタ様御一家に説明する。


「このダンジョンのコンセプトは、以前に説明させていただいた通り、採取型ダンジョンと攻略型ダンジョンの併用です。まず、エリアを3つ作ったのには理由があります」


ヘンリーさんによると豊富な人材を集めるためだという。

植物系エリアでは、火魔法が有効で毒耐性の能力が求められる。鉱山系エリアでは防御力が高いゴーレムなんかを配置しているので、ある程度接近戦ができなければ対応できない。飛行系エリアではやはり遠距離攻撃がメインになる。


「なので、完全攻略するにはバランスの取れたパーティーしか無理です。ただ、一つのエリアに絞ると特化型のパーティーであれば、どれか一つのエリアでは活躍できます」


いい案だと思う。

これなら採取メインのパーティーもホームタウンとして利用してくれるかもしれないし、強力な攻略メインのパーティーも多く訪れるだろう。

ここでドライスタ様が質問する。


「我としては、もっと強力な魔物を出して、力を見せつけたいのだがな?」


「今回はあくまでプレオープンですので・・・・。それにいきなり、そのような強力な魔物を出現させれば、ドライスタ様に恐れをなして、近寄らなくなりますよ。プレオープンのデータを基にして、本オープンのときには、もっと強力な魔物を出現させましょう」


「ワハハハ。それもそうだな」


ダンジョン構造については納得してもらえたようだった。


「後は、最初の集客ですね。式典を開こうと思ってますので、今回もよろしくお願いします」


「分かっておるぞ。我も練習しておくぞ」


なんとかなってよかった。

ところで式典を開くって?


「正確に言うと「開く」ではなく、「開かせる」だけどね」


意味深にヘンリーさんは言った。

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