採用?
私はタリーザ、ダクネス、エリーナの3人をミランダ社長に紹介する。
「あら?3人も来てくれたの?今後の話は食事でもしながらしましょう。ミーナさんもルキアさんも今日はお世話になったから一緒にどうかしら?」
ミランア社長の誘いにミーナもルキアさんも応じる。そして会場を離れ、社長の行きつけの個室があるレストランに案内された。料理とお酒が運ばれてくる。遅れてヘンリーさんも合流した。
皆がそろったところで、ミランダ社長が話を始める。
「みんなよく来てくれたわ。これから一緒に頑張りましょう!!」
(あれ?最終面接は?)
疑問に思ったのは私だけではなかった。エリーナが質問する。
「失礼ですが、最終面接があると伺っていたのですが?」
「そうね。そのつもりだったけど、あなた達の熱意を感じたので全員合格にするわ」
ダークリザードのタリーザさんは大喜びしていたが、後の二人は少し複雑な表情だった。タリーザは言う。
「そうですわね。龍神様御一家に対する熱意は誰にも負けませんわ!!」
(熱意が合否の基準なら、ある意味合格だろう)
するとダークドワーフのダクネスが質問した。
「あの・・・私は成績が最下位で、どこに行っても面接すらしてもらえなかったッスのに、本当にいいんスか?」
「それは心配しないで。あなたは資料を見る限りでは、ドワーフの血を引いているだけあって、ダンジョンの構造づくりが得意のようね。それに罠のほうもなかなかのものよね。私達が求めているのは専門スタッフなのよ。すべての項目を完璧にこなすなんてまず無理だからね」
「ありがとうッス。頑張るッス」
続けて、エリーナもミランダ社長に質問する。
「当然成績トップで、優秀な私を採用するのは当然でしょうけども、特に決め手になったものがあれば教えていただけますか?」
どことなく素直になれない性格は、「試練の塔」の誰かに少し似ている気がする。口ではそう言っているが、自分に自信がないのだろう。
ミランダ社長は答える。
「そうね。強いていえば頑張り屋のところかしら。成績を見る限り、総合成績はトップだけど、個別単位でトップを取っているのはほとんどないわね。でも苦手な科目も努力して平均以上に持っていっている。そういうところは、今後の仕事に生かせると思うのよね」
「そ、そうなんですね・・・・ありがとうございます」
エリーナは少し瞳を潤ませている。自分の努力が認められたことが嬉しかったみたいだ。
「それはそうと、料理もお酒もいっぱいあるからしっかり楽しみましょう」
1週間後、現在私は、「試練の塔」に来ていた。
3人のスタッフの採用が決まり、研修の様子を確認に来たからだ。というのも、今回の卒業生達は、研修もなく実習も少なめのカリキュラムだったらしい。これには行方不明となったダンジョン協会のスタッフの早期補充を目的に急遽募集されたことが理由かもしれない。普通ならこんな短期間で続けてダンジョン経営学部が学生を募集することなんてありえない。
ミランダ社長やヘンリーさんの意見としては、しっかりと研修させてあげたほうがいいとのことであった。ミスタリアやクワトロメイズでも新人の教育には時間を掛けているみたいだが、今回の卒業生は特に時間を掛けるそうだ。
そして今回の私の仕事は、新人研修の進捗状況をチェックするというものだった。ミルカ様に研修の進捗状況を尋ねる。
「まずはダークリザードのタリーザさんですが、本人の希望もあり、ダンジョンスタッフはもちろんですが、ドライスタ様御一家のお世話というか従者的なポジションも希望されていました。なので、従者として一通りのことができるように指導しております。本人はかなりやる気があるので、今後期待できると思っています」
タリーザの志望動機が、崇拝する古龍の元で勤務することだから、モチベーションが高いのだろう。
「続いてはダークドワーフのダクネスさんですが、ダンジョン工作や罠の作成が得意とのことだったので、7階層の特殊訓練施設の改装及び4階層の新エリアの構築を手伝ってくれました。本人も適性があったようで、こちらもかなり助かっています」
捕捉すると7階層は元々は砂漠エリアだったが、少人数の精鋭部隊の訓練の為に改装したのだが、急遽改装したので、統一感がなく、機能もイマイチだった。それをきちんとコーディネートしたのはダクネスの手腕らしい。4階層は森林エリアで、魔物も全く出ないのだが、家族連れや攻略の暇つぶしに大型迷路
を作ったらしい。これも好評だそうだ。
「最後にエリーナさんですが・・・見てもらえれば分かります」
ダークエルフと人間のハーフのエリーナさんはみすぼらしいメイド服を着させられ、キョウカ様に厳しく指導されていた。
「そこそこできるからって、少し調子に乗っていますわ!!もっと謙虚になりなさい」
「も、申し訳ありません」
大分素直になったと思う。まあ、キョウカ様より強烈なツンデレさんなんてそうはいない。
ミルカ様に聞くと一応研修は順調のようだった。
「ミランダさんは、3人の中で基本的な技能は一番高いので、技術指導はせず、精神面というか、性格面での指導を姉が重点的に行いました。研修が終わるころには素直で従順な娘になっていると思います」
とりあえず、いい方向に向かっていて、安堵した。キョウカ様を観察するとお仕置きモードに入っている。こうなると手がつけられない。気付かれないように立ち去ろうとしたが、甘かった。
「あらあら?挨拶もせずに立ち去ろうとする礼儀知らずは誰かしら?ちょっとお仕置きが必要ね」
捕まってしまった。そのままメイド服を着せられ、夜のキョウカ会のパーティーにも出席させられた。
当然、私がキョウカ会のパーティーに出席すれば盛り上がる。なぜなら私は「アバズレ・ウソツキ・クソビッチ」としてかなりの人気があるからだ。
「お久しぶりです、アバズレ様!!」
「アバズレ様に会えるなんて今日は運がいい」
口々に参加者から称賛される。しかし、こんな姿を後輩には見られたくなかった。でも、意外なことにエリーナさんは私を尊敬してくれた。
「凄いです、先輩。私もナタリー先輩のように頑張ります」
かなり複雑な心境だ・・・・
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