ダンジョン製作に向けて
龍神山から一端ダンコルの事務所に帰還した私達は、早速ダンジョン製作に向けた会議を始める。ダンジョン経営学部の実習ではダンジョンコアを使用したダンジョン作りを行ったが、オリジナルダンジョンは作ったことがない。一体どうやってつくるのだろうか?
「まずはオリジナルダンジョン用のダンジョンコアを入手するところからね。基本的なことは通常のダンジョンコアと変わらないけど、オリジナルが魔力を込めて作るところが一番の違いね。幸い「試練の塔」に大量のストックがあるからね」
そう言えば、キョウカ様は当初、大量にダンジョンを作ろうとしていて、そのときにオリジナル用のダンジョンコアを購入していたみたいだった。
「ダンジョンコアの問題は解決したとして、次に重要なのは?はい、ナタリーちゃん?」
急に話を振られた
「やっぱり、ダンジョンの規模やコンセプト、構造を決定することですか?」
「それも大事だけど、今、早急にしなければならないことは?」
答えに詰まってしまった。
「ちょっと意地悪だったわね。正解はスタッフの確保よ。もうそろそろダンジョン経営学部の学生が卒業してくるわよ」
ダンジョン経営学部は、普通の学部と違って1年に1回、学生が入学してくることはない。本当に不定期だ。10年間募集がなかったこともざらにある。魔族には長命種が多いことがその原因とも思われる。みんなのんびりしてるからね。
しかし、今回はダンジョン協会で多くの行方不明者が出たので、募集を早めたようだった。なので、後1ヶ月もしないうちに卒業生が出てくる。
「うちはダンジョン経営の会社じゃないからね。ドライスタ様のダンジョンに常駐してくれるスタッフを探さないとね」
「そうですね。最低3人は確保したいところですね。ダンジョンのオープンから立ち上げまでは手伝えますが、永遠に常駐することはできませんしね」
とりあえず、合同説明会で学生を確保する。それでも駄目なら「ミスタリア」と「クワトロメイズ」にお願いして、スタッフを借りることで方針が決定した。
合同説明会か・・・。あの日の惨劇は今でも昨日のことのように思い出される。
「それじゃあ、担当を決めるわ。ダンジョン構造やそれにかかるDPの計算、その他ダンジョン構築に関わることはヘンリー君にお願いするわ。ナタリーちゃんは、人材の確保ね。合同説明会で必ずスタッフをゲットしてね!!私は対外的なことで、色々あるから・・・」
ということで、ダンジョン製作に向けてプロジェクトが動き出した。みんなそれぞれ忙しそうで、相談はできないので、とりあえず、私の少ない伝手を使って外部の人に相談することにした。最初に相談したのはキョウカ様だ。これは、頼りにしているからとかではなく、相談しないと怒るからだ。
キョウカ様に相談するといつになく上機嫌だった。
「あなたにしては、私を頼るなんて・・・いいじゃない!!ビシビシ指導してあげるわ」
だが、キョウカ様の気合も虚しく、大したことは教えてもらえなかった。
「自分を高めなさい。そうすれば、勝手に優秀な人材が集まってくるから・・・私のように・・」
帰り際にミルカ様に言われた。
「姉が言ったことはほとんど間違っていると思いますが、それでもブランド力ということを考えれば、頷ける点もありますね」
そうか。ブランド力か・・・・。使えるなら利用しよう。
次に相談したのは親友のミーナだ。相談と言うか雑談の延長だったが、思いのほか協力してくれることになった。
「説明会の当日は私もミスタリアの関係で会場に行く予定だったんだ。だから、当日は手伝うよ。うちのグループは放っておいても勝手にくるからね」
羨ましい限りだ。そして、意外な人物が協力してくれることになった。
それはクワトロメイズのルキアさんだった。私の就職活動を妨害した張本人だが、そのことで罪滅ぼしがしたかったらしい。
色々と相談に乗ってくれたし、当日も就職ブースに来てくれるみたいだった。
そしていよいよ、就職説明会を明日に控えた本日、私とミーナ、ルキアさんは、私の部屋に泊まることになった。ルキアさんは最初に私に辛く当たっていた経緯を教えてくれた。
「学年2位のローレンスに唆されたのよ。ナタリーの就職活動を妨害するなら手伝うって言われて・・・私もそのときは焦っていたのもあってナタリーの就職活動を妨害をすることにしたけど。
後で調べてみたら、ローレンスはヘンリーさんに仕返しをするために画策したみたいなのよ。『就職が失敗したのはヘンリーのせいだ。ヘンリーと付き合うと碌なことにならない』と言いふらすためだけにね。
ナタリー。本当にごめんなさい」
ここでもダンジョン協会か・・・。ルキアさんの事情も分かったし・・・・。
「特に気にしてないし、それにそのおかげで、今は充実した毎日を送れているからね。それはそうとニールさんとはどうなの?まさか教えてくれないとかはないよね?」
(許すとは言ったものの、これぐらいの意地悪はいいだろう)
ミーナが食い付いてくる。
「誰?誰?ニールさんて?」
「それは・・・そのカッコよくて、センスが・・・」
そんな感じで夜も更けいった。ルキアさんとはもう友達と言っていいくらいだ。どうせなら、学生時代からこういう関係を築きたかったとは思う。
ただ、人生は長い。友情はこれからだ。
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