記念パーティー 2
キョウカ様が連れて来た助っ人は「肌荒れが酷い欲求不満女」ことレッドローズ公爵婦人だった。オルマン帝国には四大公爵家というのがあり、貴族の最高位でもあって、名門中の名門らしい。カーン子爵の奥様はかなり恐縮している。
「レッドローズ公爵婦人・・・。その・・・わざわざこのようなところまで・・・」
「お気になさらなくていいわ。うちの息子が迷惑を掛けたからね・・・・。血は繋がってないけど」
なんとレッドローズ家はあのクズ勇者の実家だったみたいだ。目の前にいるのは第一婦人で、勇者の母親は第二婦人らしい。教育方法を間違えたと公爵婦人は言っていた。
「キョウカ様より話は聞いています。子爵家のご家族には私が直接指導をしましょう。貴族としての立ち振る舞いを指導します。そして使用人には、こちらのセバスが指導することになります」
セバスという男性はいかにも執事といった感じの初老の男性だった。帝国トップクラスの名門公爵家の執事なのだから、かなりの人物だと思われる。
「セバスと申します。カーン子爵のご子息にはお世話になりました。ご子息がいなければ早々に勇者パーティは崩壊していたと思います。まあ、結局はあんなことになりましたけど・・・」
「ありがとうございます。息子は今、また勇者パーティーとして活動してますよ。このような機会を与えてくれたことを感謝しております」
「そう言っていただけるとありがたい」
顔合わせは上手くいき、早速指導が始まった。私はというとなぜか料理人枠でお手伝いをすることになってしまった。これには理由がある。レッドローズ公爵婦人が言うにはパーティーの基本として、何を目的にするか、何を伝えたいか、が重要らしい。
「ただ開けばいいというものではありません。このパーティ―の目的をよく考え、何を伝えるのかを鮮明にすることが大事です。ただ、自慢したいとかではないですよね?その目的に合わせて、料理や進行を決めて行くのです。でも基本は変わりませんから、セバスには使用人たちの特訓を、すぐに開始しましょう」
レッドローズ公爵婦人のアドバイスを受けて、カーン子爵は会議を行い、方針を決めた。
「我としましては、領民とともに領地を発展させていきたい。そして、近隣の諸侯とも融和を保ち、更に交易も活発にしていきたいと思っております」
力強い言葉だった。レッドローズ公爵婦人も納得したようで、満足気だった。
「さすがはキョウカ様が見込んだだけはあります。それなら進行は任かせてください。後は料理ですね。私が帝都から一流の料理人を連れてきてもいいのですが、それは違うような気も・・・」
「無駄に高級な料理を出すのはどうかと思います。普段領民が口にしている物を出したい」
「分かりました。ただその料理を出すだけでは芸がないわね・・・・。そうだ!!」
ということで、料理についてはレッドローズ公爵婦人が用意した料理人と私と燻製肉工房のおばちゃん達が意見を出し合って作るということになった。今回、私が手土産に持ってきたキノコ類やゴブリン特製のドライフルーツも料理に取り入れることになった。
公爵婦人が連れて来た料理人は一流で、ただの田舎料理を宮廷料理にまで昇華させていた。私達が褒めると、
「これでも帝国で指折りの料理人だと自負しております。材料が良いので、ちょっと手を加えただけですけどね。それとカーン子爵の息子さんは料理人としても才能が有りましたよ。もし本人が希望するなら私が弟子にしますよ」
と言っていた。カーン子爵の息子さんは多才なんだと改めて思った。
そんな感じで、パーティーの準備は進み、いよいよ記念パーティーが始まった。来賓は周辺の領主に加えて、他国ではあるが小国家群の商業都市ベルンの冒険者ギルドのギルマス、商業ギルドのギルマスが招かれた。これもベルンとの関係が良好であると見せつけるためだという。
そして、いよいよ料理を運ぶ。立食形式のパーティーでそれぞれが談笑している。出席者は料理を美味しそうに食べていたが、一人の太った男が料理やパーティーに文句を付け始めた。グリード子爵の子飼いだったドネツク男爵のようだ。
「田舎臭い料理だな。帝都の洗練された料理を食べられると思ったのに、まあこんな田舎では無理だろう。それに来賓も・・」
まだ、キョウカ様やレッドローズ公爵婦人は登場していない。作戦としては、ドネツク男爵やその取り巻きが活動を開始してからギャフンと言わせるといったものだ。そのほうが今後の牽制にもなるし、敵も分かるという。ドネツク男爵を調査したところ、あまり評判の良くない辺境伯と付き合いがあり、裏にはその辺境伯がいると思われる。
このパーティーでカーン子爵の評判を落とし、領主達を辺境伯の派閥に入れようというのが狙いだろう。しかし、そうはさせない、満を持してキョウカ様とレッドローズ公爵婦人が登場する。
「皆さん!!ここで特別ゲストをご紹介します。まずはレッドローズ公爵婦人。そして「試練の塔」の終身名誉公爵のキョウカ様です」
いつにもまして着飾ったキョウカ様とレッドローズ公爵婦人が登場する。会場の出席者はあっけに取られていた。それはそうだ、こんな大物が登場するなんて誰も思っていし、キョウカ様は伝説級の人物らしい。
キョウカ様は言う。
「料理も地元を大事にしたもので、素朴ですが洗練された味ですね。帝都の一流レストランにも引けを取りませんね。領民を大事にするカーン子爵の愛情が溢れています。皆さんも見習って領地経営に励むように」
(カーン子爵を褒めているが、どこまでも上から目線だ)
これにはドネツク男爵も黙るしかなかった。工作は失敗のようだ。ヘンリーさんが言うには、裏で糸を引いている辺境伯にカーン子爵は只者ではないと思わせられれば、今回のパーティーは成功だという。
これで私達の仕事は終わりだが、今回の仕事もダンジョンコンサルタントの業務としては、かけはなれているような・・・・・・
気にするのはよそう。
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今回で第三章が終了となります。次回からはいよいよダンジョンづくりに挑戦しますのでご期待ください。




