決戦!!勇者パーティー
テトラシティに勇者が到着した。町の様子をリサーチするとお祭りモードのようだった。前回の勇者パーティーは攻略を失敗したので、今回はどうなるかで、賭けも始まっているようだ。
前回の勇者パーティーはいきなりメインダンジョンに挑み失敗したので、今回の勇者パーティーは慎重にサブダンジョンを一つずつ攻略していった。ニールさんが必死に分析している。
「このパーティーは予想通りバランスがいい。それにかなり慎重なようだし、地元のダンジョンガイドを帯同させていることを考えるとかなり厳しい戦いになりますね」
そして、いよいよメインダンジョンに勇者パーティーが挑むことになった。私とミランダ社長もアーティストのみんなと一緒にマスタールームで見守る。
勇者パーティーは戦闘員の5人とサポーターの少年、それに地元のギルドに所属しているダンジョンガイドの獣人の少女の構成だった。以前に「光の洞窟」で見たときよりも連携が強化されていた。かなり強力なパーティーだ。
工夫を凝らしたダンジョンだが、どんどんと攻略されている。
オーエンさんが言う。
「俺だけで、ダンジョンを作っていたら、あっという間に攻略されていただろう。今回は協力して良かったと思うぜ」
攻略はされていたが、アーティストの皆さんは手ごたえを感じている。
「カララとキララと一緒に作った罠が結構な効果がありましたね」
「そうね。良かったわね」
「絵画が罠だなんて、普通は思わないわよね」
エリアごとにそれぞれが作る方式を採用していたが、何階層かは合作のエリアを作っていたのだ。勇者パーティーが罠解除に手間取る場面も見られた。ミランダ社長も褒める。
「バランスの取れたいいダンジョンね。Aランクパーティーでも物理攻撃特化型のパーティーや魔法メインのパーティーのように戦力が偏ったパーティーは苦労するわね。さすが私の弟子ね」
ミランダ社長の中では、既にニールさんは弟子扱いのようだ。
そして、勇者達は苦労しながらも16階層までやって来た。16階層はセフティースポットであるとともに珍しいキノコが多く取れるキノコハウスだった。それにダンジョン入口に帰還できる転移スポットも設置してある。
「ダンジョンボスは強めに設定しているので、普通のパーティーでは攻略できないでしょう。例えダンジョンボスを倒せなくてもここまで来るだけでも、来てよかったと思えるようにキノコハウスを設置しました。それにここで諦めて帰還できるようにもしています」
ニールさんは冒険者のこともよく考えている。
勇者パーティーはというと嬉しそうにキノコを採取していた。私は使役しているフワフワ鳥のフワッチをこっそりと16階層に潜ませて勇者の動向を監視することにした。会話を盗み聞く。
「キノコだ。全部食べられるみたいだぞ!!」
「今日はキノコパーティーだ!!」
エルフの拳闘士とドワーフの女戦士が興奮して話していた。サポーターの少年と勇者はこれからのことを話しあっていて、どうやら、安全策を取って、一端帰還するみたいだ。神官騎士と女魔法使いは周囲の様子を警戒しながらも、キノコを嬉しそうに採取していた。
「ロイ、料理期待してるわ」
「任せてください」
勇者パーティーは機嫌が良さそうだったが、ダンジョンガイドの獣人の少女はかなり、落ち込んだ様子だった。何かぶつぶつ言っている。
「おかしい・・・何これ・・・。読めない・・・どうしよう」
不思議に思い、ミランダ社長に聞いてみた。
「多分、初めてのパターンのダンジョンで戸惑っているんだと思うわ。若いけど責任感が強いからなおさらね。ここまではダンジョンガイドとして何一つ仕事ができてないからね・・・・若いし将来があるから、頑張って欲しいけど・・・・」
ニールさんが応じる。
「まあ、今までとは全くコンセプトが違うダンジョンですからね。最初から読み切られたらこっちの立場がありませんからね。ここだけの話ですが、ダンジョンガイドとの読み合い合戦もアーティストの醍醐味の一つですよ」
ニールさんは心から勝負を楽しんでいるようだった。
そして3日後、再び勇者パーティーがやって来た。ダンジョンガイドの獣人の少女は前回とは違い、自信に溢れていた。勇者パーティーに臆することなく、アドバイスをしている。
ニールさんは言う。
「もしかしたらこのダンジョンのコンセプトに気付いたのかもしれませんね。こっちもちょっと本気を出しましょうか?みなさん、ボスモンスターはマニュアル操作に切り替えて戦いましょう」
そして勇者達は、20階層のボスエリアまでやって来た。17階層からは、かなりダンジョンのレベルを上げているが、勇者達は攻略してきたのだった。
20階層に到着したと同時に勇者達はすでに戦闘態勢を取っていた。ここにダンジョンボスがいるとを読んでいたのだろう。
「やはり読まれてましたか。予定した奇襲は中止して、しっかりと連携して戦いましょう」
「了解!!」
「分かりましたわ」
「いいよ」
「やろう」
ニールさんの指示に4人のアーティストが答える。短期間で連携が取れるようになったものだと感心した。ボス部屋で待ち構えるのは、
サイコロプス2体(オーエンさん担当)
ゴールデンリビングアーマー(コーデリアさん担当)
コウモリ魔人(妖精姉妹担当)
大型グリーンスライム(ニールさん担当)
だった。作戦としてはゴールデンリビングアーマーが物理攻撃を中心に受け止め、サイクロプス2体は魔法耐性がマックスなので、魔法攻撃を受け止める。かなり強力な前衛だ。それに遠距離から変則的な魔法攻撃を繰り出すコウモリ魔人と状態異常攻撃や毒攻撃を主体に攻撃する大型グリーンスライムが援護する。
勇者パーティーはかなり強力だが、かなり苦戦しているようだった。勇者にも焦りの表情が見られる。
クリスさんは言う。
「DPを収支関係なく使えば、もっと強力な魔物を出せるんだが、それは私のポリシーに反するからね。与えらたDPの中で試行錯誤してダンジョンを構築することが新たな芸術を生むと思うんだよ」
これにミランダ社長も答える。
「ダンジョン性の不一致ね。あの頃はクリスの考えは理解できなかったけど、今なら支持はできないけど、何となく理解はしてるのよ・・・」
クリスさんとミランダ社長も雪解けムードだった。
それはさておき、戦いに話を戻す。一進一退の戦いを繰り広げていた。双方とも決め手に欠く展開だ。
「このまま持久戦に持ち込みましょう。相手の体力切れを狙います。そうすれば相手も撤退すると思います。特に前衛の二人には負担が掛かると思いますが・・・・」
「心配するな!!」
「余裕ですわ!!」
妖精姉妹も答える。
「前衛が押されないようにもう少し前に出ましょう」
「そうね。もっと魔法の火力を上げるわ」
あんなにいがみ合っていたのに、今は本当にチームとして機能している。このまま、勝ち切ってほしい。
そう心から願っていた。
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