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<完結>ダンジョンコンサルタント~魔王学院ダンジョン経営学部のエリートが劣等生女子とともにポンコツダンジョンを立て直します  作者: 楊楊
第三章 対決!!勇者パーティー

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研修

他のアーティストも研修は順調のようだ。


「見栄っ張り婦人」ことコーデリアさんはミルカ様が指導することになった。コーデリアさんは、憧れのキョウカ様の妹のミルカ様に対して、最初から尊敬の念を抱いていた。ミルカ様も素直なコーデリアさんに好感をもっていて、今のところ「見栄っ張り婦人」には見えない。最初から部屋のコーディネートなどの専門技術を教えていた。


「それではコーデリアさん。この部屋をここにある絵画、彫刻、花瓶などを使って、自分の思うようにコーディネートしてください」


「分かりました」


しばらくして、完成した部屋を見たミルカ様は顔をしかめた。


「駄目ですね。「あれもこれも見て欲しい」「私はすごいでしょ」という自己顕示欲の塊の部屋です。もっと自信を持って。シンプルでいいのですよ。さりげない美しさ、どことなく感じる気品、そういったものを意識してください」


「分かりました」


コーデリアさんは素直だった。何でもダークエルフにとってハイエルフは憧れの存在だそうだ。そんな人から直接指導してもらえるなんて感激でいっぱいだったらしい。


数日後、スタッフルームのコーディネートを任されたコーデリアさんはミルカ様に認められた。


「スタッフの方が心地よい空間を作り、その中にもさりげない美しさがある。合格です」


「あ、ありがとうございます・・・」


コーデリアさんは涙を浮かべていた。感動的な感じがするが、本当にこれは研修なのだろうかと思ってしまう。




一方「意地悪男爵」ことカララ、キララの妖精姉妹は、キョウカ様に厳しく指導されていた。


「何をやっているのあなた達は!!腐った羽をむしり取りますわよ!!」


かなりきつく叱られている。なんか昔の私を思い出す。


「なんでこんなことに・・・・」

「ちょっと悪戯してやりましょう」


しかし、ちょっとした悪戯は全く通じなかった。触るとビリビリする魔道具は取り上げられ、二人は鳥籠に入れられてしまった。


「さあ、どんなお仕置きをしてあげましょうかしら?」


「いやー!!」

「ごめんなさい!!」



しかし数日後、二人は素直になっていた。キョウカ様の愛の溢れる指導が効いたみたいだ。

ミルカ様が事情を教えてくれた。二人の妖精は、妖精の里では神童と呼ばれるくらい魔力を持った子供だったらしい。そのため、二人を叱ったりするものはおらず、調子に乗って悪戯を繰り返していたら、嫌われてしまい、里を出たそうだ。そこでクリスさんがスカウトしてアーティストになったらしい。アーティストとしても優秀であったのでますます増長したようだった。

仕事ができるけど指示を聞かない部下は、仕事ができない部下よりも扱いに困るとクリスさんは言っていた。


そして今回の研修で、自分達よりも遥かに魔力が上で、きちんと叱ってくれたキョウカ様に大分懐いたみたいだった。


「いたずらをするなとは言いません。しかし、ちょっとした悪戯でも相手が傷付くようなことはしてはなりません。相手に愛情を持って悪戯をしなさい」


キョウカ様の指導は続いていた。

私がキョウカ様を訪ねたとき、妖精姉妹がお茶を出してくれた。素直でいい子になったと思いお茶を飲んだら、激苦だった。


「ぐぎゃー!!」


思わず、叫び声を上げてしまった。悪戯好きは治っていないようだった。

しかし、お茶を飲むと疲れがスッと引いていた。


「やっぱりコイツは馬鹿だ」

「でも疲れが取れたでしょ。これでも感謝してるからね」


まあいきなりは無理だし、指導者自体がツンデレだし、これは成功と捉えていいだろう。




そして、私はミランダ社長とともに「ジメジメニート」ことニールさんを訪ねた。ドアをノックして出ていたニールさんはやっぱりボサボサの髪でヒゲは伸び放題だった。


「なんだ、ナタリーさんか。ところでそちらの女性は?」


「初めまして「ダンコル」の代表のミランダ・マースです」


「えっ、えっ・・・マジで?」


ニールさんは驚き、まるでアイドルを見るかのようにミランダ社長を見ている。


「それでは研修に行きましょう。着いてきてください」


「は、はい」


すぐに身だしなみを整えさせて、研修に連れ出すことに成功した。そして連れ出した先は「ミスタリア」A-2ダンジョンだった。A-2ダンジョンはミーナがサブマスターをしているのだが、現地には会長のラッセルさんが来ていた。


「君がニール君だね。噂は聞いているよ。私が力になれるかどうかは分からないが、まずはうちのダンジョンを見て欲しいんだ」


ラッセルさんはそう言うとA-2ダンジョンを案内し始めた。まず案内したのは、湖のエリアだ。ここでは豊富に魚が取れ、付近のバージニアでは魚の塩漬けや干物が特産品となっている。


「この湖エリアはテトラシティのダンジョンからヒントを得たんだ」


多分「お魚君」ことマモンさんのが作ったダンジョンだろう。


「ミスタリアでは、他にも肉が大量にドロップするダンジョンも作っているんだ。これもテトラシティのダンジョンを参考にしているんだよ」


多分「脳筋将軍」ことオーエンさんのダンジョンだろう。


「君達は気付いてないかもしれないが、テトラシティのダンジョンは業界でも注目されているんだよ。もちろん君のことについてもね。最近、君が新作を出さないから心配していたんだよ」


「そ、それは光栄です」


ラッセルさんの話では、テトラシティに本拠を置く、クワトロメイズのダンジョンは参考になることが多いとのことだった。すべて真似することはできないが、どこか取り入れるところがないか、新作のダンジョンができたらチェックするようにしているらしい。


「中でも君の作ったダンジョンは、私達ミスタリアの理念「誰からも愛される地域密着ダンジョン」に共通するところが多い。君のような才能を眠らせておくのは惜しいので、良ければうちに来ないか?」


(いきなり引き抜きですか?)


「そんな・・・クリスさんやお嬢様にも・・・・」


「まあ、焦ることはない。ここでしばらく研修してもらって決めてもらえばいいから」



それから数日、A-2ダンジョンで、ニールさんの研修は続いた。サブマスターのミーナは言う。


「本当に助かったわ。ずっといて欲しいくらいよ。それにイケメンだし」


身だしなみを整えたニールさんは、ヘンリーさんでほとではないが、かなり整った顔をしている。仕事もできてイケメンなので、ミーナも満足だろう。

研修の最後の日、ニールさんがラッセルさんに挨拶をしていた。やっぱり、もう少しクワトロメイズで頑張るということで、移籍の話は断っていた。


「そうか残念だ。将来ある君に一つだけ、アドバイスをしよう。私が一番最初のダンジョンを経営難で手放したことは話したと思うが、そのとき私も君と同じように「個性」「どこにもないダンジョン」「革新的」という言葉に踊らされていたと思う。でも、もう気付いたと思うが、そこに本質は無いんだ。それに君には特別な才能があると思う。それは他人の個性を生かす能力だ。多分そっちのほうがテトラシティでは役に立つんじゃないかな?」


「ありがとうございます。ラッセルさんにご指導いただいたことは一生忘れません。テトラシティに戻ったら一からやり直します」


どうやら、ニールさんは立ち直ったようだ。

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