幕間 交流会
私は今「試練の塔」に来ている。3日前から泊まり込みだ。転移スポットでつながっているので、泊まり込む意味をあまりないのだが、キョウカ様のたっての希望だったので仕方がない。なぜこんなことになったかというと1週間前に遡る。
その日キョウカ様は「ダンコル」に出勤していた。
「光の洞窟」での業務の後、特に大きな仕事はない。私は事務処理、ミランダ社長は執筆活動、ヘンリーさんはミスタリアグループの資料を精査していた。当然、仕事がないキョウカ様は暇だ。そして、無駄に絡んでくる。最近は話半分で聞いている。
「ナタリーちょっと!!聞いてますの?もっと私に相応しい、高貴でゴージャスな仕事はないのですか?無能なりにちょっとは考えなさい」
(ああ、面倒くさい。とりあえず適当に返事しとこう)
「だったらお茶会とか開けばいいんじゃないですか?」
「目的は?それに誰とですの?」
(適当に言っただけなのに・・・そんなこと言われても・・・)
「交流とか、親睦を深めるとか・・・相手はですね・・・」
そんなとき、意外な人物が食い付いた。ヘンリーさんだ。
「いいですね、是非やりましょう。我々が契約しているダンジョンも増えてきました。クライアント同士で、交流して意見交換とかすれば、お互い有意義なお茶会になるのではないかと思います。会場はどうしましょうか?」
「それなら、うちでおやりなさい。最高のもてなしをしてあげますわ」
そして、すぐにキョウカ様は「試練の塔」に帰っていった。そして3日前に参加者の都合がついたので、私は準備の為に「試練の塔」に向かったのだ。そして、帰宅することも許されず、今に至っている。
ミルカ様は言う。
「凄く楽しみにしているから、そのつもりでお願いします」
そして、いよいよ交流会が始まる。
参加者は、「ダンコル」からは、私とヘンリーさんとミランダ社長、「光の洞窟」からはネロスさん、「ミスタリア」からは、ラッセルさんとマーナさんとミーナが参加した。もちろんミルカ様と骸骨騎士様も参加している。
キョウカ様のツンデレな挨拶の後、会はスタートした。
私はマーナさんとミーナとともに女子会のような感じで、楽しかった。これが仕事だなんて今日はついている。まあ、準備は大変だったが・・・。
それでもキョウカ様と一生懸命に作ったハーブティーやクッキー、サンドイッチなどをみんな美味しいと言ってくれていたので、報われた気がする。
キョウカ様はというと、ラッセルさんやネロスさんといい感じで話していた。ミーナとマーナさんもキョウカ様とお話がしたいと言ったので、キョウカ様に取次ぎ、代わりに私はラッセルさんに話しかけた。
「キョウカ様とよく会話が続きますね」
「ああそのことか・・・。私も年頃の娘が二人いるからね。なんか、反抗期のマーナを思い出して、懐かしい感じがしてね。マーナは酷かったから・・・。あっ、でもこれは内緒だよ。また怒り出すから・・・」
年齢は大分キョウカ様が上だが、ラッセルさんは娘を見るように接していたんだ。納得がいった。次にネロスさんにも話を聞いてみた。
「キョウカ様は人の上に立つ者の理想像ですね。私もゴブリン達の管理者としてキョウカ様から学ばなければと思いました。なので、定期的にキョウカ会に参加させてもらうことになったのです。それにロンメルさんにも稽古を付けてもらうことも考えてます。管理者としてゴブリン達を守らないと・・・」
ここにもキョウカ様、骸骨騎士様の信者がいた。それにあなたはダンジョンマスターですからね。マルクスさんにも注意されましたよね。まあ、ダンジョンのことを考えて頑張っていることに違いはないので、よしとしておこう。
そんな感じで、交流会は和やかに進行した。そんなとき、ラッセルさんが口を開く。
「ヘンリー君、そろそろ本題に入ったらどうかね」
「そうですね。大分皆さん打ち解けてきたので、本題に入りましょうか?」
(本題って?)
キョウカ様も少しびっくりしているようだった。
「まだ想像の域を出ませんが、ダンジョン協会に不穏な動きがあります・・・・」
ヘンリーさんが説明する。
「試練の塔」から、長期的にかなりの額のDPを巻き上げていたこと、ミスタリア系列のダンジョンのDP横領事件、「光の洞窟」に危険なダンジョンボスを騙して売りつけたことを考えると偶然とは思えない。
それに直接の担当者は一様に行方不明になっている。
「三つの事件に共通することは担当者レベルでは絶対にできないようなことをしている点です。明らかに組織的な関与が疑われます。これを見てもらえれば分かります。先日の「光の洞窟」の関係の報告書がダンジョン協会から届きましたので確認してください」
報告書を確認する。本当に酷い。よくもこれで通用すると思っているなと逆に感心する。
内容はこうだ。
お金に困っていたネロスさんの同級生の職員は、たまたま廃棄予定のミスリルリザードを発見、契約書や説明書を偽造して売り付けた。
当然、ヘンリーさんが「廃棄予定のダンジョンボスなら厳重に管理していて、一職員が立ち入れるわけがない」と質問したが、廃棄倉庫の当時の担当者は臨時職員で、これもまた行方不明らしい。
「うちも同じようなものだ。『横領したDPの行方は分からない』というから、『どこで分からなくなったかを調べろ』と言ったんだ。そうしたら、別の人物に渡したことまでは分かったが、その人物も行方不明、おまけにそこで証拠資料は廃棄されたとのことだった。」
ラッセルさんが言う。更にミルカ様も「うちも同じようなものです」と答える。どうも陰謀めいた感じがする。それに普段冷静なヘンリーさんがダンジョン協会のことになると怒りを隠しきれないでいる。そのこととも関係があるのかもしれない。
そんなことを思っていると、背後から殺気を感じる。キョウカ様だ。多分、自分が知らないうちに話が進んでいるのが気にくわないみたいだ。というか、私も知らなかったんだから・・・・。
でもヘンリーさんは流石だった。キョウカ様に声を掛ける。
「多分、キョウカ様はすべてをお見通しだったと思います。その上で、交流会と言う名目で私達にヒントを出してくれていたんですね。キョウカ様の域までは達してはいないと思うのですが、それなりに努力はしました。いかがでしょうか?」
キョウカ様は、ドギマギしながら答える。
「そ、そそうですね。まあ、当たらずとも遠からずということかしら・・・一番大事なのは、ここにいる仲間との絆よ。さあ交流会はここからよ。夜の部も用意してるから!!」
キョウカ様はブレない。ミルカ様も骸骨騎士様も微笑ましく見ている。
そして夜の部も楽しかった。お酒が入り、みんなが楽しく飲んでいる。
ただ、ネロスさんがキョウカ様に「私も奴隷にしてほしい」と言っていたのはまた、別の話だ。
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