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<完結>ダンジョンコンサルタント~魔王学院ダンジョン経営学部のエリートが劣等生女子とともにポンコツダンジョンを立て直します  作者: 楊楊
第三章 対決!!勇者パーティー

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陰の交渉人

勇者達が去ってしばらくして、ノーザニア王国の代表団がやって来た。こちらの交渉担当はゴブタンさん、相手は総務大臣のアンヌ・ロータスという女性が責任者だった。今回も通信の魔道具でヘンリーさんがゴブタンさんに指示を出すことになっている。交渉は9階層のゴブリンの集落で行うことになった。

アンヌ大臣には護衛が付いており、その護衛は例の特殊部隊だった。特殊部隊の隊長がアンヌ大臣に耳打ちをしている。フワフワ鳥のフワッチと感覚共有して聞き耳を立てていた。はっきりとは聞こえなかったが、ニュアンス的に「かなりの軍事力がある」みたいなことを言っていた。

大臣が来る前にわざわざ城壁にバリスタや投石器を取り付けた甲斐があった。これもヘンリーさんの作戦だ。軍略の専門家になればなるほど、この砦の厄介さがわかるという。


そして、いよいよ交渉が始まる。

最初に口を開いたのはゴブタンさんだった。


「今回は勇者を派遣してくれて感謝している。我らもミスリルリザードには困り果てていたからな。我らの要求は勇者を通じて伝わっていると思うが、このままダンジョンの6階層から10階層に居住させてもらいたい」


これにアンヌ大臣が応じる。


「クラシア王女からは、伺っております。我が国も要望は、以前のとおり1~5階層での鉱石の採取活動を継続的に行うことです。6階層より先には立ち入る必要はありませんので、利害が対立することはなさそうです」


ここまでは上手くいっている。


「ところで、6階層より先では貴重な鉱石が取れるそうですね。できれば、我が国と交易をしませんか?」


アンヌ大臣が交易の交渉をしてきた。これも想定内だ。ヘンリーさんの策で、勇者に貴重な鉱石のアダマンタイトを持ち帰らせていた。


「そうだな。我らだけでは使いきれないので、適正な価格であれば譲ってもいい。ただあの鉱石類は我らがいなければ採取できないからな」


これは嘘だ。ミスリルリザードを購入した数少ない利点の一つに貴重な鉱石が採取できるようになり、討伐後も採取できている。ただ、鉱石を採取するのに特別な技術は必要なく、10階層に行けば、その辺に転がっているので、簡単に採取できる。

無理やり、ゴブリンを排除しようとしたら、鉱石も採取できなくなるという交渉材料だ。


「そうですね。公正な取引をしましょう。何でしたら、そちらから使節団を我が王都に派遣してもらっても構いませんよ。我が国は魔族を不当に扱ったりしません。我が国の王妃殿下は、公にはしてませんが魔族ですから」


「今後の交易についての具体的な話は一端置いておいて、6階層を境に不可侵の協定を結んでもいいかな?」


「もちろんです。今回の私達の目的それがメインでしたから。交易はおまけみたいなものです」


交渉は上手くいったようだ。この後、歓迎の宴が始まる。私はというと料理の指導と使節団に怪しい動きがないかフワッチや一角兎ホーンラビットを使ってチェックする。

見たところ怪しい動きはなかった。ただ、アンヌ大臣は酒癖が悪そうだった。部下に窘められていたが、浴びるように飲んでいた。


「ここはお酒も料理も美味しいわ。引退したらここで暮らしてもいいかも?」


とか言っていた。悪い人ではなさそうだった。


交渉がまとまり、ノーザニア王国の使節団も帰還する。ヘンリーさんが言う。


「このダンジョンを発展させるには居住者を増やすしかありません。いずれはゴブリンだけでなく幅広く居住者を集めて行く予定です。ダンジョンの中に国のようなものがあり、発展していくなんて、まさに課題の一つである「誰も見たことのない凄いダンジョンを作ること」に合致します」


言われてみればそうだ。ネロスさんもこれに頷く。


「何から何までありがとうございます。私も管理者として、ゴブリン達をサポートしていきます。あなた方のおかげで、管理者としての自覚が芽生えました」


これには父親のマルクスさんがツッコミを入れる。


「お前はダンジョンマスターだろ!!管理者とかいう神様気取りはどうかと思うぞ。それに今回の件はちゃんと反省してだな・・・・」


説教が続く。頃合いを見て、ヘンリーさんが声を掛ける。


「それでは、最後の仕上げです。ダンジョン協会をギャフンと言わせましょう」






数日後、ダンジョン協会の担当者がやって来た。ネロスさんにミスリルリザードを売りつけた同級生は案の上、行方不明になっていた。今回は私達も同席する。キョウカ様も同席してギャフンと言わせると言っていたが、お引き取り願った。大変なことになるかもしれないからだ。ヘンリーさんとミランダ社長が説得し、なんとか帰ってもらった。

帰り際に「この程度の相手なら私が出るまでもありませんわね」と言っていたのが印象的だった。


そんなこんなで交渉がスタートした。やっぱりヘンリーさんの顔は険しい。

ダンジョン協会の担当者が尋ねてくる。


「失礼ですが、そちらの方達は?」


「申し遅れましたコンサルティング会社「ダンコル」の代表をしております。ミランダ・マースです。弊社にご依頼があり、様々なサポートをしております」


「そうですか。ミランダ様の著書は何冊か拝見させていただいております。私は・・・・」


担当者との挨拶が終ったところで、ヘンリーさんが切り出す。


「この契約書や説明文に書かれていることと、実際にミスリルリザードは大違いでした。そのため、「光の洞窟」は大きな損害を被りました。ダンジョン協会としてどのような対応をされるつもりでしょうか?」


「その・・・それがですね。ネロス様にミスリルリザードを売った本人は、行方が分からないんですよ。こちらの見解としては、行方不明の担当者の単独犯として見ています。お金に困っていたようですし・・・」


「しかし、明らかに個人で扱えるような魔物ではないと思いますが?」


「いえ・・私に言われましても・・・」


結局、今回やって来た担当者は、のらりくらり躱し、ネロスさんの同級生の単独犯ということで、押し通した。これにはさすがのヘンリーさんでもこれ以上は追及できなかった。


「分かりました。ただし、こちらが受けた損害はすべてDPで補填していただきます。それと今回の件で状況が分かる詳細な報告書の提出を求めます」


DPの額を見て、担当者は目を見開いて驚いていたが、ヘンリーさんが作った完璧な資料だったので、渋々支払うことを認めたのだった。


これで、「光の洞窟」での依頼は完了となった。

入社して、私はもう3件もダンジョンを救っている。敏腕コンサルタントと呼ばれる日も近いかもしれない。

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