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<完結>ダンジョンコンサルタント~魔王学院ダンジョン経営学部のエリートが劣等生女子とともにポンコツダンジョンを立て直します  作者: 楊楊
第二章 新人コンサルタント

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防衛戦1

「よしよし、いい子だからこっちに来て!!」


「キュー、キュ?」(何かな?)

「キュッ、キュッ」(悪い人間ではないみたいだけど、頭悪そうだな)


「クーン」(でもいい匂いがするな)

「クーン」(グレートボアの肉っぽいけど・・・)


今私が話しているのは、一角兎ホーンラビットの一家とフワフワオオカミの若夫婦だ。

私はこれでも魔王学院のテイマー養成学部をそこそこ優秀な成績で卒業しているのだ。モフモフした魔獣限定で意思疎通が取れる。

ここで一角兎ホーンラビットには木の実のクッキーをフワフワオオカミにはグレートボアの燻製肉を差し出す。無心に頬張っている。


「キュッキュキュウー」(旨すぎる~)


「クーン」(旨い!!)

「クーン、クーン」(旨いけど、食い物にはつられないぞ!!話ぐらいは聞いてやるけど)


私は魔獣たちに事情を説明する。

フワフワオオカミの夫婦は文句を付けてくる。


「クーン!!クーン!!」(そんな危険なことに肉1個って!!)

「クーン!!」(人でなし!!)


「肉はもっとあげるし、それにマッサージもしてあげるからね。お願い!!危なくなったらすぐに逃げてもいいから・・・」


それから3時間、魔獣たちにマッサージをし続けている。フワフワオオカミだけでなく、一角兎ホーンラビットも興味があったみたいで、マッサージをねだってきた。私はモフモフマッサージの達人でもあるのだ。


「もしよければ、この首輪をつけてくれたら嬉しいな・・・・。私とお揃いだし・・・」


ミルカ様から渡された魔道具の首輪と同じ原理で、かなり遠く離れても念話で会話できるし、場所も正確に分かるのだ。


「キュー!!」(いいよ)


「クーン!!」(分かったよ)



なぜこのようなことをしているかというと、情報収集のためだ。何せ私は魔獣を使った偵察隊長なのだ。隊員は一角兎ホーンラビットの一家4匹とフワフワオオカミの若夫婦2匹だけだが・・・・。


「ということで、私を呼ぶときは隊長ね!!」


「キュ!!」(隊長!!)

「クーン!!」(隊長!!)


いい子達だ。


町では、戦闘態勢が取られている。

まずは兵士の確保だ。実際カーン男爵領には20名しか正規の領兵はいない。臨時や引退した領兵をかき集めても、35名にしかならなかった。後は冒険者に頼むのだが・・・。


領主様は、ほとんどの冒険者はいなくなってしまうだろうと予想していた。カーン男爵から給料をもらっているわけでもないし、ダンジョンの恩恵を受け、それなりに優遇はされているかもしれないが、自分の命を賭けてまで戦ってくれるとは、思っていない。

しかし、予想は大きく裏切られた。カーン男爵の人柄もあるが、骸骨騎士様ロンメルさんの演説も大きかったと思う。冒険者ギルドの支所に赴き、こんなことを言ったのだ。


「諸君らは自由な冒険者だ。誰に強制されることもない、戦ってもいいし、好きに逃げてもいい。ただ、これだけは覚えておいて欲しい。もし「恵みのダンジョン」がグリード子爵の手に落ちたのならば、今までのようにはいかない」


グリード子爵は冒険者を軽視している。法外なダンジョン入場料を取られることは目に見えている。


「騎士は主君や国民の為に命を賭ける。冒険者は何に命を賭けるのだ?金か?それだけではない!!それは己のプライド、守るべき者、自分が信じた思いに命を賭けるのではないのか?」


ここで、領主様からヘンリーさんに渡された金貨の入った袋(巡り巡って骸骨騎士様ロンメルさんが今、手にしている)を冒険者の前に置いた。


「もしもカーン男爵領が諸君らが命を賭けるに値すると思うのなら、頼む!!一緒に戦ってくれ。報酬は弾もう!!」


これには冒険者から大歓声が上がる。予想を超える20名の冒険者がともに戦うことを決意してくれた。


今のところ戦力は、領兵35名、冒険者20名、それに領民から志願兵を募って何とか100名までは確保できそうだ。

しかし、商人さんや私の偵察部隊員の報告から相手方は約500人の規模らしい。ざっと5倍の差がある。かなり不安だ。


「大丈夫ですよねロンメル師匠!!」


骸骨騎士様ロンメルさんはヘンリーさんの剣の師匠ということなので、その設定で話している。


「無論だ。久しぶりの大規模戦闘だ。武者震いがする。まずは戦力の把握と訓練だな」


カーン男爵も大規模な軍を指揮した経験はなく、骸骨騎士様ロンメルさんが作戦や訓練を取り仕切ることになっていた。元はオルマン帝国の大将軍なので・・・・。


戦力を分析したところ、弓兵として活動できそうなのは40名だ。これは大きな戦力だ。土地柄、魔獣を狩る狩人が多いことがその要因だろう。魔法を使える者も10名はいる。弓兵と魔法兵の指導はハイエルフのミルカ様が行うことになった。ミルカ様はキョウカ様と違って、弓と魔法のスペシャリストだ。



ヘンリーさんはというとネリス商会の商人達と交渉していた。


「つまり、この書状を帝都に持っていけと?それも宰相と軍務大臣に?」


「お願いします。ネリス商会の信用があれば可能でしょう」


「見返りは?うちらは商人だ。慈善事業でやってるわけじゃないんでね」


「ネリス商会以外の商会は逃げ出してしまった。もしカーン男爵が勝てば・・・説明する必要がありますか?」


「食えない兄ちゃんだな!!さては猫を被ってやがったな。つまり、ここで領主に恩を売っておけということだろ?分かったよ、乗ってやるよ」


よく分からないが、いい話になっているようだった。


(よし、私も!!)



本当に後悔している。首輪なんてさせなければよかった。


(お腹すいたよ!!クッキー持ってきて!!)


(疲れた!!マッサージしにすぐ来い!!遅れたら言うこと聞かないぞ!!)


ひっきりなしに念話が届く。もう嫌だ。我儘すぎる。堪りかねた私は、燻製肉工房のおばちゃん達に事情を話して、面倒を見てもらうことにした。隊員の魔獣たちもおばちゃん達には一目置いているようで、私に対する無茶な要求も少なくなった。


私にしては頑張っていると思うが、ただ、本当にコンサルタントの仕事か?とは思う。毎日魔獣に餌をやり、マッサージをしてご機嫌を取る。

たまに偵察に出して、帰ってきたらご褒美の餌とマッサージをする。何か違う感じがするのは私だけだろうか?



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