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<完結>ダンジョンコンサルタント~魔王学院ダンジョン経営学部のエリートが劣等生女子とともにポンコツダンジョンを立て直します  作者: 楊楊
第二章 新人コンサルタント

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恵みのダンジョン

ということで、私はカーン男爵領の領都に来ている。メンバーは私とヘンリーさん、それにミルカ様と骸骨騎士様ロンメルさんだ。なぜ、ミルカ様と骸骨騎士様ロンメルさんが一緒にいるかというと、骸骨騎士様ロンメルさんが今回の件に激怒して、どうしても参加すると言って聞かなかったからだ。もちろん人間の姿での参加だ。オルマン帝国の創成期の大将軍としては、国民に範を示す貴族がグリード子爵のようなことをするのは許せないそうだ。

因みにキョウカ様はお留守番だ。どうしても外せないパーティーがあるからだそうだ。そのパーティーにはミランダ社長も出席するみたいだ。


研修から約半年が経ったが、領都は凄く発展していた。特にダンジョンの入口周辺は大盛況だった。懐かしくなって、私達が経営していた燻製肉工房に立ち寄った。みんな元気だろうか?


「はい、いらっしゃい・・・!!女将さん?それにヘンリーさんも!!奥様!!!ナタリーちゃんが・・・」


店から出て来たおばちゃんに見付かった。すぐに工房内で作業していたおばちゃん達もわらわらと出てくる。その中に領主の奥様もいた。


「どうしたのナタリーちゃん?それにヘンリーさんまで。それにお連れの方もいらっしゃるようだけど・・」



私達は事情を説明する。もちろん設定上のだ。


まず、私とヘンリーさんは結婚が認められて、ヘンリーさんの実家に帰ることができた。そこで、ヘンリーさんの両親から「お世話になったカーン男爵領の方にお礼をしてきなさい。ただし、家名は名乗らないように」と指示されたので、お忍びでお礼に来たと説明した。


「こちらのミルカ師匠とロンメル師匠は私の魔法と剣の師匠です。護衛で付いてきてもらいました」


「そうなのね!!よかったわ。うちの人にも知らせるからしばらく待ってってよね」


領主の奥様は、領主館に使いを走らせた。私達はというとお土産にもってきたハーブティーと木の実のクッキーをおばちゃんや領主の奥様と食べている。


「エルフのお嬢さんと武人さんは新婚なんだって?」

「その年で新婚って、訳ありかい?」

「いくつになっても新婚てのはいいものだろうね」


ミルカ様は顔を真っ赤にしている。いくら1000年以上生きているハイエルフと言っても、このおばちゃん達には、かなわないみたいだ。

そんな、話をしていたところ、使いの者がやって来た。

私達は領主の奥様とともに領主館に向かうことになった。


領主館に着くと領主様と息子さん達が総出で出迎えてくれた。それにイサク司祭もいる。


「ヘンリー殿!!息災そうで何よりだ。事情は聞いたぞ良かったな」


「ありがとうございます。かなり発展しておりますね。ひとえにカーン男爵の手腕ですね」


「そんなことはないぞ。ダンジョンができたという幸運もあったが、息子達や領民が頑張ってくれたおかげだ。そして何よりもヘンリー殿が尽力してくれたことが一番大きい」


「微力ながら領地の発展に貢献できましたこと、大変光栄に思います」


「よし、堅い話はまた明日にしよう。とりあえず今日は宴だ!!」


そういうと燻製肉工房のおばちゃん達を呼んで宴を開くことになった。

私は、魚の干物と塩漬けを領主様に献上した。


「これはナタリー殿が?これは酒が進んで仕方ないな!!ナタリー殿も、もう一杯どうだ?」


「父上なりません!!」

「あなた!!駄目だったら!!」


長男のオゴディさんと奥様が止めに入る。あのときと同じで懐かしい。

イサク司祭も上機嫌で話しかけてくる。


「そうだ!!ダンジョンの名前が決まったんだ。その名も「恵みのダンジョン」だよ。いい名前だろう?名付け親は奥様さ」


「恵みのダンジョン」か・・・、いい名前だ。本当に「誰からも愛される地域密着ダンジョン」だ。



宴は楽しかった。みんないい笑顔をしている。しかし、この笑顔が曇ることになると思うと憂鬱だ。


そして次の日、領主様達と話し合いが始まった。ヘンリーさんがどうしても話したいことがると領主様に持ちかけたからだ。


「話し合いの前にヘンリー殿に燻製肉工房の売上金の3割を渡そう」


かなりの量の金貨を頂いた。これで3割というのなら、本当に儲かっているんだろう。


「ありがとうございます。実は領主様にお伝えしなければならないことがあるのです・・・・」


そういうとヘンリーさんは説明を始める。

岩塩の独占販売でやりたい放題だったグリード子爵は、カーン男爵領のダンジョンを何とか手中にしようと画策している。やり方は汚く、領兵を盗賊に偽装させて他の領の領都を襲わせる。そこに本当の領兵を登場させて、討伐する。自作自演だ。

そして、そのまま領兵が居座り続ける。このやり方で、グリード子爵の派閥から抜けて、カーン男爵と良好な関係を築いていた騎士爵家と男爵家の領都を抑えてしまったようだ。


騎士爵と男爵家が抑えられれば、東と南と西の三方を敵に囲まれることになり、カーン男爵領はかなり厳しい戦いをしなければならないことになる。


「と、まあ最初は新婚旅行気分でこの地を訪れたのですが、事情を知ってしまった以上はお世話になった皆様のために微力ながら助太刀しようと、私の魔法の師匠と剣の師匠を連れて来たのです。なので、家名を名乗らないのはそう言った事情なのです。他国の貴族が他国の内乱に加わることはできませんからね」


「なんとそれは本当か?よし、戦の準備だ。領兵を招集せよ。それと冒険者ギルドに掛け合ってこい!!」


「領主様。受け取った売上金はとりあえずお返しします。こんな事態ですので、いくらあっても足りませんからね」


「いや!!それはできん。緊急事態だからといって、一度払ったものを・・・・」


有難い申し出だが、貴族としてそれはできないのだろう。これはヘンリーさんも予想していたことで、次の手を打つ。


「それでは、イサク先輩。このお金は全額、教会に寄付しますよ。受け取ってください」


これには一同驚いた。


「ヘンリー殿!!これは一体・・・・」


「私のお金ですので私がどう使おうと勝手ですよね」


領主様を無視して、ヘンリーさんはイサク司祭に目配せをする。イサク司祭も何か気付いたようだった。


「ありがとうヘンリー君。有効に使わせてもらうよ。領主様!!一大事ですので、無担保無利子でお貸ししますよ」


一同あっけに取られている。


「有難い・・・。有効に使わせていただく」



これから私達は、カーン男爵領で歴史に残る防衛線を戦うことになる。

果たしてこれがコンサルタントの仕事なのだろうか?

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