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<完結>ダンジョンコンサルタント~魔王学院ダンジョン経営学部のエリートが劣等生女子とともにポンコツダンジョンを立て直します  作者: 楊楊
第二章 新人コンサルタント

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もう一つの依頼

「すごく美味しいわ!!ナタリーは才能があるよ」


そう言うのは私の親友のミーナだ。A-2ダンジョン(始まりの洞窟)のサブマスターだ。A-2ダンジョンマスターは、Aブロックのエリアマネージャーも兼務しているので、実質の責任者はミーナということになる。

そして、そのミーナが食べているのは私が丹精込めて作った魚の干物と塩漬けだ。

どうしてこうなったのか?それをこれから説明しよう。


私達とリザードマンの冒険者一行は、A-2ダンジョン(始まりの洞窟)の湖エリアに来ていた。ミーナと事前に協議した結果、湖に魚を多めに出現させることにした。魚は魔物ではなく、素材発生器で発生させる。

リザードマンは水中活動が得意で瞬く間に魚を捕獲していく。


「こんなに魚が獲れたのは初めてだ!!」


リザードマン達は大喜びしていた。しかし、町に戻ったところ現実を知ることになる。いくら魚を獲ったとしても販路がないのだ。バージニアから一番近い町でも馬車で3日の距離がある。売ろうにも魚が腐ってしまう。

冒険者ギルドの関係者は落胆していた。そんなとき、鉱山エリアでソルトゴーレムが出現するとの報告が届いた。ソルトスライムのゴーレムバージョンで、岩塩をドロップする魔物だ。これなら魚の塩漬けや干物を作ることができる。

しかし、ノウハウがない。家庭で食べるだけなら適当に作ればいいが、商品にするとなると専門家が必要になる。そんなとき、「ここに専門家がいます」とミランダ社長が言った。もちろん私のことだ。


私は以前、燻製肉工房を経営しており、その道の専門家であると紹介された。燻製肉工房では、燻製肉の他にも塩漬け肉や干し肉も作っていて、魚にも応用できそうだった。なので、私は地元の主婦や子供達に魚の干物や塩漬けの作り方を指導している。


「ウサギのお姉ちゃんはすごいね。見かけによらず、立派な職人さんだ!!」


そう言ってくれるのは、過激派のアジトで一緒だったリザードマンの少女だ。母親と一緒に私が指導をしている。ただ、訂正すると私は職人ではなく、ダンジョンコンサルタントなのだ。


結局バージニアには1ヶ月位滞在したと思う。途中、キョウカ様、ミルカ様、骸骨騎士様ロンメルさんはA-2ダンジョン(始まりの洞窟)に臨時で設置した転移スポットから「試練の塔」にちょくちょく帰っていたみたいだが、冒険者の活動が楽しくなったみたいで、魔物を狩ったり、頼まれてもいないのに過激派のアジトを壊滅させたりして、大活躍だったそうだ。

一緒に活動していたミランダ社長が言う。


「あの3人が揃えば過剰戦力にもほどがあるわ!!歴代の勇者パーティーが5組揃っても勝てないと思う」


ヘンリーさんはというと、A-2ダンジョン(始まりの洞窟)でミーナとともに素材や魔物の出現状況などの細かな調整を指導していた。これがダンジョンコンサルタントの本来の業務だと思う。結局、私がイメージするダンジョンコンサルタントの仕事をしたのはヘンリーさんだけだった。



そして今、A-2ダンジョン(始まりの洞窟)のマスタールームで、ミーナと視察に来ていたラッセルさんに業務報告を行っている。私が作った魚の干物と塩漬けを食べながら・・・。

ラッセルさんが口を開く。


「過激派か・・・厄介な奴らだな。それと入場者は大幅に増えたな。これも「ダンコル」の皆さんのおかげだ」


ラッセルさんも報告には満足しているようだった。

しかし、表情が曇っていく。


「実はDPダンジョンポイントの横流しは、Aブロックだけではなかったんだよ。だから、その対応で大忙しさ。それと、B-5ダンジョンでも、とうとう動き出した・・・」


B-5ダンジョンとは私とヘンリーさんが研修のときにお世話になったダンジョンで、ミーナの姉のマーナさんがダンジョンマスターを務めている。

一体何がどう動きだしたというのだろうか?


ラッセルさんの説明によれば、B-5ダンジョンはオルマン帝国の北東部、小国家群との国境付近のカーン男爵領にあるダンジョンだ。ダンジョンで岩塩と肉類が豊富に取れるので、燻製肉を一大産業にしてカーン男爵領は発展しつつあるそうだ。領都には商業ギルドと冒険者ギルドの支所ができているらしい。

私もカーン男爵領の発展に一役買っている身としては嬉しい限りだ。

とここまでは、何の問題もないのだが、動き出したのは隣領のグリード子爵らしい。B-5ダンジョンで岩塩が大量に入手できるようになったのだが、それまでは岩塩の鉱山を持つグリード子爵の一人勝ちの状態だった。

当然、グリード子爵は面白くない。岩塩と街道封鎖を武器にカーン男爵領だけでなく、周辺の小貴族達を従えてきたのにその求心力は地に落ちている。それはそうだろう。岩塩が独占状態のときに無茶な要望を周辺の領に行っていたのだから。


そして、グリード子爵が考え付いたのは、カーン男爵領からダンジョンを取り上げるといったものだった。話を聞くとかなり強引だ。


「そんなの無茶苦茶じゃないですか?」


「ナタリーちゃん落ち着いて!!オルマン帝国は国としては、北東部の開発に力を入れていないし、報告やなんかもグリード子爵に任せきっているみたいだし・・・」


「国も不干渉・・・。多少のことは揉み消せるということですか・・・」


領主の奥様、燻製肉工房のおばちゃん達、オゴディさんやイサク司祭、色々と楽しかった日々が昨日のことのように思い出される。何とかしたい。

気が付くと声を上げていた。


「どうしても助けたいです!!B-5ダンジョンを見捨てるなんて、コンサルタントのすることではありません」


「だからナタリーちゃん落ち着いて!!それをこれから話し合うんだから・・・」


少し早とちりしてしまった。

でも、カーン男爵領の人達を救えるのは嬉しい。

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