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研修2 B-5ダンジョン

私とヘンリーさんはミスタリアグループ本社の転移スポットから転移して、オルマン帝国にあるB-5ダンジョンのマスタールームに到着した。

ミーナに良く似た美しい女性が出迎えてくれた。ダンジョンマスターのマーナさんだ。年齢的には人族でいう25歳位だろうか?魔族なので見た目と年齢が一致しないことが多々あるが・・・。


「ナタリーちゃん、お久しぶりね。そっちはヘンリー君ね。噂はかねがね聞いてるわ。私がダンジョンマスターのマーナよ」


「お久しぶりです。マーナさん」


「お初にお目にかかります。ヘンリー・グラシアスです。よろしくお願いします」


マーナさんとは友人のミーナを通じて何度か食事をしたことがある。ミーナと同じく、親しみやすい性格だ。そして、私達はマーナさんに案内をされて、ダンジョンの説明を受ける。


「早速だけど、ミスタリアグループのダンジョンのコンセプトは理解してるわよね?」


「えっと・・・「誰からも愛される地域密着ダンジョン」でしたか?」


「それは表向きね。実際は少し違うのよね。ヘンリーさんは分かっていると思うけど、一応説明しておくわ」


そう言って、マーナさんはミスタリアグループのコンセプトを説明し始めた。


「うちのグループのコンセプトはリスクを抑えに抑えて、確実な利益を上げるこことなの。グループで採用しているダンジョンのタイプは主に3つ。詳しい説明は省くけど私が担当するB-5ダンジョンは最も失敗が少ないタイプのダンジョンなのよ。だから、ダンジョンをオープンする場所さえ間違えなければ、まず失敗することはないわ。デメリットとしては、ダンジョンマスターの個性が出せないところかな?多分ヘンリー君には物足りないかもしれないけど・・・」


「そんなことはありません。本当に勉強になります」


マーナさんの説明が続く。


「だから、どこにダンジョンをオープンさせるかが最も大事なのよ。一般業務の合間にいい立地を探して、情報を集め、グループ内のプレゼンに勝ってやっとオープンできることになったのよ。これで私もダンジョンマスターとしてやっていけるわ・・・いくらいい仕事をしてもパパのコネだなんだの言われてさ・・・」


マーナさんは感極まって涙を浮かべながら話していた。明るそうに見えて、意外に苦労してるんだろうと思ってしまった。ただのお嬢様ではなかったみたいだ。


「ごめん、ごめん。話が逸れてしまったみたいね。話を元に戻すと、ダンジョンをオープンする場所はオルマン帝国のカーン男爵が治める領地で、山間の小さな村みたいな感じの場所なのよ・・・・」


マーナさんの説明によると、オープン場所を選定する条件は3つ。


1そこそこの田舎、ダンジョンができれば感謝される土地柄

2近くに競合するダンジョンがないこと

3領主の治世が安定している


だそうだ。調査の結果、カーン男爵はキチンとした領地経営をしていて、領民との関係も良好で、農作業や魔物退治も領民と一緒に行うような人らしい。なので、ダンジョンができたとしても独占するようなことはないだろうと判断したらしい。


「ひどい領主になるとダンジョンの入口に関所を設けて、入場料を徴収したりして・・・なので思うように利益が上がらなくなるのよ」


ここでいう利益とはDPダンジョンポイントのことだ。ダンジョンの目的は、DPダンジョンポイントを稼ぐことにある。DPダンジョンポイントを一定量ダンジョン協会に納めなければならず、ダンジョン協会はDPダンジョンポイントを魔力に変換して様々な魔道具に変換して利益を得る仕組みになっている。そして、残ったDPで、ダンジョンを拡張したり、設備を整えたりするのだ。

(大雑把に言えば、魔力量を数値化したものと思えば分かりやすい)

DPの稼ぎ方は色々とあるが、一番はダンジョンに多くの人が入ってくれることだろう。なので、ダンジョンをオープンしたが、全く入場者が来なければ、大赤字で、最悪、ダンジョンを廃棄しなければいけなくなる。

(私の実家は何とかギリギリで踏み留まっている)


「そこで、君達にお願いしたいことは集客についてよ。普通の研修であればダンジョン監視の手伝いや出現する魔物の管理なんかをしてもらうんだけど、ヘンリー君がいるからね。ダンジョンはまだオープンしていないから自由に見てもらって構わないし、カーン男爵領の様子を見てきてもらっても構わないから1週間以内に企画書をまとめて提出してね。期待しているわ」


(どうしよう!!全く思いつかない)


私は困ってしまい、ヘンリーさんを見る。


「心配しなくても大丈夫だよ。僕に考えがあるから」


「ごめんなさい。多分これからヘンリーさんに迷惑を掛けっぱなしになるかもしれません」


「あくまでも研修だから、失敗してもいいんだよ。まずは君の知識をチェックしていこうか。それでは、ダンジョンマーケティングの講義で習った集客方法について答えてくれ」


(いきなりテストみたいなことをされるの?)


私は、講義で習ったことを思い出すとともにノートを自分のアイテムボックスから取り出す。テストでは赤点だったが、追試とレポートの提出で単位を取得でき、そのおかげで、他の教科よりもよく覚えていたのは不幸中の幸いだろうか。


「講義での集客方法の基本はその土地にあった集客方法を実施することです。絶対にやってはいけない事例として・・・・」


集客方法については、曖昧で抽象的なことしか習わなかったと記憶している。やたらと「的確に」「情報収集の徹底」「丁寧な・・・」みたいな言葉の羅列だった。もっと具体的なことを教えて欲しかったとそのときは思った。

反対に失敗事例についてはインパクトがあってよく覚えている。


もう100年以上前の話だが、ある新人ダンジョンマスターがダンジョンをオープンするにあたり、付近の村を焼き討ちにして、こう言い放ったそうだ。


「我がダンジョンを攻略できなければ、この災厄は永遠と続くだろう」


そのダンジョンは目論見どおりに冒険者で溢れかえった。新人ダンジョンマスターランキングで月間1位にもなれたそうだ。しかし、その栄光も長くは続かなかった。冒険者ギルドに1級危険ダンジョンに指定され、ダンジョン破壊のためにスペシャルパーティーが集められた。

そして、ダンジョンコアを破壊されて、ダンジョンが消滅したらしい。一説によるとそのダンジョンマスターは「厨二病」という恐ろしい病に罹っていたのではと言われている。


私の回答が終るとヘンリーさんは優しく言った。


「よく勉強しているね。それでは教科書どおりに現地の調査から始めようか」


(完璧な容姿と仕事ぶり、この優しさ。惚れてまうやろ~)

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