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<完結>ダンジョンコンサルタント~魔王学院ダンジョン経営学部のエリートが劣等生女子とともにポンコツダンジョンを立て直します  作者: 楊楊
第一章 ダンジョン研修

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ヘンリーさんの帰還

そして研修終了3日前にやっと、そう、やっとヘンリーさんが「試練の塔」に帰ってきたのだ。これで私がスケルトンにされることはないだろう。

ヘンリーさんは一人で帰還したわけではなかった。エルフの集団を引き連れていた。総勢10名のエルフ、その中で明らかに魔力量もオーラも違う、一際美しい女性がいた。どうもこのグループのリーダーのようだった。

そして、そのリーダ格の女性が出迎えに来たキョウカ様とミルカ様に声を掛けた。


「キョウカもミルカも久しぶりだね。ヘンリーから聞いたよ。困ってるならもっと早く言ってきなよ」


「お久しぶりです。ウメック様、お越しいただきありがとうございます」


「別に何も困ってなんかいませんわ」


キョウカ様はそっけない。ヘンリーさんの話では、エルフの代表はキョウカ様とミルカ様と同じハイエルフで、学園都市セントラルハイツの代表であるウメック・ツダリスという方だ。二人よりもかなり年上だそうだ。

引き連れているエルフ達はセントラルハイツ学園の教授陣でいずれも魔法関係のスペシャリストだという。ヘンリーさんが学生時代のコネを使って、来てもらったらしい。


「まあいい。とりあえず落ち着いて話せるところに案内してくれ。それと例のスケルトンも呼んでくれ」


一行を会議室に案内して、骸骨騎士様ロンメルさんも来てもらった。

一同が席に着いたところで、キョウカ様が私に指示した。


「そこのメイド!!この人達にお茶でも出してあげなさい。出来損ないの茶葉でいいから」


多分私がブレンドした茶葉だろう。私は厨房に行き、お茶の準備をして再び会議室に戻って、スタッフさんと共に給仕をする。しばらくしてウメック様が声を上げる。


「このお茶を入れたのは誰だい?」


何か粗相があったのだろうか?緊張しながらも名乗り出る。


「わ、私です。茶葉はキョウカ様にご指導をいただきブレンドしたものです。教えられたとおりにお入れしたのですが、何か至らない点があったでしょうか?」


「いや。ハイエルフに伝わる伝統のハーブティーだったので驚いたよ。いい出来だ、美味しいよ」


「ありがとうございます」


「何を嬉しそうにしてるの?あなたが褒められたのは、もとの薬草が良かったからよ」

(ウメックさんに認められた。指導した身として鼻が高いわ)


ミルカ様の念話による通訳で、ウメック様もキョウカ様も満足していることが分かって、本当に嬉しい。


「キョウカ。あんた相当コジらせてるね・・・まあいい。ヘンリー、私達がここに来た理由と解決案を説明してあげなさい」


「分かりました。まず最初にダンジョンの現状について説明します。ここまでダンジョンが発展してきたのには理由があります。一つはオルマン帝国の国民性です。何よりも名誉を重んじる、悪く言えば見栄っ張りの気質が大きく影響しております。そしてもう一つがブランド力とキョウカ様のカリスマ性です」


ヘンリーさんの説明によると「試練の塔」で5階層を突破し、骸骨騎士様ロンメルさんに認められることは大きな栄誉だそうだ。だから、馬鹿高い滞在費を払ってでもダンジョンに挑戦するらしい。ドロップアイテムが多少悪くても挑戦者は文句を言わないようだ。因みに騎士団では骸骨騎士様に合格をもらって始めて一人前と認められるらしい。

キョウカ会のメンバーの上級貴族達も同じような理由で、キョウカ様に虐められること自体が大変名誉なこととして代々引き継がれている。


「つまり、オルマン帝国にとって「試練の塔」は帝国の根幹を支える人材の教育機関でもあるのです。ここで提案があるのですが、セントラルハイツ学園の学園長でもあるウメック先生に話してもらったほうがいいでしょう」


ヘンリーさんに続いて、ウメック様が語り出す。


「長いこと学園をやってるとね、何代も続けて入学してくる一族の学生に会うんだよ。そのとき、私はこう思うんだ。

平民でも頑張った初代、それを引継いで徐爵した二代目、更に発展させた三代目、一族存亡の危機を回避した四代目、みんなそれぞれ精一杯生きて、次の世代につないでいったんだって・・・

その一助になれたと思うと教師冥利につきるよ。

私もキョウカと同じように多種族との寿命の違いで悩んだこともあったよ。でもこう考えてはどうだい?人一人を育てるのも大事だが、種族全体を育てると思うと結構楽しいもんだよ。それにそれができるのは私達長命種しかいないしね。

アンタもさ、そのメイドさんをしっかり育ててるじゃないか!!あんな美味しいハーブティーを入れられるなんて、エルフでもなかなかいないよ。キョウカも指導者としての素質があると思う。

寂しいこと言わずにオルマン帝国という国を育ててみたらどうだい?」


感動的な言葉だが、私はメイドではなく、ダンジョン経営学部の学生だ。ただ、この雰囲気では言えそうにない。キョウカ様はというと目に涙を浮かべていた。


「別にオルマン帝国がどうしてもと言うのなら、面倒を見てあげてもいいですわ」


ここでもツンデレだ。


「詳しい手順はヘンリーに聞きながらやってくれ。全く、キョウカは素直じゃないんだから・・・」


とりあえず、一つ目の研修課題であるキョウカ様の症状の改善はクリアできそうだ。


しばらくしてヘンリーさんが口を開く。


「続いては骸骨騎士様についてですが、結論から言うと治ります。ただし莫大なDPダンジョンポイントが必要になります。詳しい説明は教授のほうからお願いします」


すると年配の男性エルフが説明を始めた。ハイエルフではないにしても長命種のエルフなので、多分相当な年齢なのだろう。ミルカ様が驚きの表情を浮かべている。


「えーと、我がチームで分析した結果・・・・つまり・・・このDPと魔力の混合が原因で・・・必要なDPを計算しますと・・・そうだ私が若い頃に経験したのですが・・・・何の話をしていたっけ・・」


かれこれ15分以上話しているが意味不明だ。これは私だけではなかったみたいで、ウメック様が割って入る。


「教授ありがとう。後は私が説明するから・・・つまりロンメルをアンデットから完全に生命体に戻すには100億以上のDPが必要ということだ」


「それは・・・さすがにうちのダンジョンでもすぐには用意できません」


ミルカ様も辛そうだ。


「ただし、たちまち10億ポイントもあればかなりの時間人間に戻れるし、ダンジョンから出ても消滅することはない。新婚旅行くらいはできると思うよ」


今度はミルカ様が涙を流す。


「ありがとうございます。本当に・・・」


「研究が進んだらもっとDPの消費が少なくて済みます。教授の見解によると今の技術ではDPと魔力を混合して使うのは無理だそうです。スケルトンになってしまったのもDPと魔力を混ぜて術式を発動させたのが原因だと仮説を立てています」


(あの説明で理解できるヘンリーさんは一体何者なんだろうか?)


「よし、ヘンリー。今後の方針を説明してあげなさい。それとヘンリーも、私の自慢の教え子だからな」


ウメック様は少し嬉しそうだった。

これで二つ目の研修課題、骸骨騎士様ロンメルさんとミルカ様の関係改善もクリアできそうだ。


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