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<完結>ダンジョンコンサルタント~魔王学院ダンジョン経営学部のエリートが劣等生女子とともにポンコツダンジョンを立て直します  作者: 楊楊
最終章

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事件の真相 2

いい気味だ。ヘンリーの落ちぶれていく様を見てやろう。


しかし、そうはならなかった。

ヘンリーはナタリーと同じ「ダンコル」に就職していた。そこで、目覚ましい活躍を見せる。

経営難に陥っていた「光の洞窟」をV字回復させただけでなく、総合ランキング10位にランクインさせ、テトラシティでは、期待の新人と言われていたが、スランプで引退寸前だったアーティストを復活させた。それだけでも凄い功績なのに「試練の塔」のマスター(気難しいハイエルフ)やミスタリアグループの会長とも懇意にしていて、評価も高い。


私は焦った。

ダンジョン協会の通常業務をこなしているだけでは、ヘンリーに大きな差をつけられてしまう。ここで、賭けに出ることにした。

ダンジョン協会の若手を集めて、新規ダンジョンをオープンすることにしたのだ。


近年、ダンジョン協会の直轄ダンジョンの業績が思わしくない。一応総合ランキングでは3位ということになっているが、実際のところは、10位以内に到底入れる成績ではなかった。しかし、手はいくらでもあるもので、他のダンジョンから不正に入手したDPを一端直轄ダンジョンに入れ、それをダンジョン協会に納めたり、かなり無理をして納めたDPを特別褒賞という体にして、直轄ダンジョンに戻すなどして、やりくりしていたのだ。


これには訳がある。この直轄ダンジョンだが、元は「至高のダンジョン」という超優良ダンジョンだったのだが、父が無理やり奪い取ったのだ。しかし、上手くいかないもので、経営は悪化して、人族からは「没落ダンジョン」と呼ばれるようになってしまった。

だが、無理やり奪い取った手前、閉鎖するわけにもいかないし、元々ランキングが4~6位程度だった「至高のダンジョン」よりも上の順位を維持しなければ恰好がつかない。

これにはかなりのDPが必要になる。それに加えて今年の予想では、「ダンコル」が立て直したダンジョンの業績が伸びたので例年よりもランキングを維持するには多くのDPが必要になる。

また、大した確認もせず湯水のごとくDPを納めてくれていた「試練の塔」からの納入額が激減していた。それにDPの確認を確実に行うようになり、ここからの中抜きで直轄ダンジョンの補填に当てる運用は実質不可能になってしまった。


このような状況なので、新たな直轄ダンジョンをオープンさせ、成功させれば、私の評価はうなぎ上りだろう。しかし、若手だけで集まって企画書を出しても当然却下される。なので、無許可のままダンジョンをオープンし、ある程度成果が上がった時点で報告して、元から許可していたことにしてもらおうと考えた。


卒業したてのヘンリーがあそこまでできるんだから、私にできないはずはない。


やる気のある若手を集めた。ダンジョン協会だけでなく、他のダンジョンでくすぶっている若手にも声を掛けた。必要となるダンジョンコアもダンジョン運営に必要なDPも不正や横流しで手に入れたものを使用する。不正が横行している協会内で、この程度なら大きな問題にならないだろう。


ダンジョンオープンに際して、自分としては、かなり努力したと思っている。参考書や過去のデータ、ダンジョン協会に上がってくる資料を読み漁り、ヘンリーを参考にするのは癪だが、実際にヘンリーがやった方策を参考にもした。


その結果、ノーザニア王国の温泉地ベッツにダンジョンを設置することにした。ダンジョン運営の成功の

鍵は立地にあると言っても過言ではない。リサーチした結果、ベッツに行き着いた。ベッツは有名な温泉地で、有名な冒険者も休暇でよく訪れる。休暇で来た冒険者が、ついでにダンジョンに潜ることをコンセプトにした。


後はスタッフの管理だ。スタッフ達は私も含めて、他の業務をしながらの運営となる。普通のダンジョンと同じような運営はできない。私は参考書に書いてあったことを実践することにした。

私の計画に賛同してくれた者は総じて意識が高い。責任感も強く、それなりに技能も高い。足りないのは経験とチャンスだ。

参考書にはこう書いてあった。


部下を信じ、任せるられるところは任せよ


責任感を持たせるため、フロアごとの担当者を決め、ある程度自由な裁量を認めた。

オープン当初は、かなりの入場者があった。

私にかかればこんなものだ。私とヘンリーとの差は、環境の差だ。恵まれた環境で、ちょっと参考書に書いてあることを実践すれば、誰にでもできる。


そう思っていたが、現実は甘くなかった。

入場数は激減した。調べたところ、DPを中抜きしているスタッフがいたのだ。素材発生器から素材を十分に発生させずにその分を自分の懐に入れていた。また、責任感を持たせるためにフロアごとの管理をさせたことが裏目に出た。

自分達で好きなように作っていたので、ダンジョン全体としてのバランスは崩壊していた。それにスタッフの熱量にも温度差があった。一生懸命に作っている者もいれば、中途半端にやっつけ仕事をしている者もいた。

打開策として、私は管理を徹底することにした。数値目標を設定し、達成できなければペナルティを加えることにした。当然、反対の声が上がる。


「これじゃあ、今勤めてるダンジョンと同じじゃないか!!ダンマスはいつも数字のことばかり、うるさく言ってくる。自由にダンジョンを作れると思って来たのに話が違う」


何人かのスタッフは去って行った。しかし、大半のスタッフは仕方ないと受け入れてくれた。


しかし、全く状況は改善しなかった。数値上は改善しているが全体では大きな赤字となっている。

このままでは、他から横領してきたDPでの補填も間に合わなくなる。


私は更に調査することにした。

そんなとき、休憩室で雑談しているスタッフ達の会話が耳に入ってきた。


「数値目標達成するの厳しくない?」

「それはそうだけど、実はこのダンジョン、無許可らしいよ」

「マジで?それヤバくない?」

「だから、みんな数値目標を達成するために無茶苦茶してるんだ」

「例えば?」

「撃退率を上げるため、セフティースポットに罠を仕掛けたり、転移直後に攻撃したりね」

「それって、規定違反じゃないの?ヤバいでしょ!!」

「まあ、元々無許可だし、いいんじゃないか?それに俺、今日で辞めるし・・・」


衝撃の内容だった。ここまで酷かったとは・・・。

更にスタッフの話は続く。


「マジで?私もそうしようかな。でも、みんなこんな状態でよくやってるよね?」

「多分、現会長の息子のローレンスさんにいい顔をしたいんじゃないかな?無茶苦茶なことをしてノルマを達成してるのは、全部側近連中だし・・・それに入場者数を上げるためにスタンビートを起こしたんだぜ、流石に俺も引いたよ」

「そんなことしたら、国から危険ダンジョンに指定されて、ダンジョン破壊されるんじゃないの?」

「そうかもな、そうしたらある意味、歴史に残るダンジョンになるな」

「じゃあ、歴史に残るダンジョンで勤務できたことを誇りに思わないとね」

「それはブラックジョーク過ぎるよ」


数日後、本当に歴史に残るダンジョンとなったことは言うまでもない。

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