ダンジョンバトル 2
色々と思うところはあるが、まずはダンジョンバトルで勝つことを第一に考えなければ・・・・
まずは現状の把握だ。
学生向けダンジョンは7階層までのダンジョンで、難易度はかなり低めだ。冒険者ランクで言えばD~Eランクもあれば十分に攻略できてしまう。現在、ダンジョン構造は30パターンあって、ランダムで入れ替わる仕組みだ。因みに学園の試験用のダンジョン構造は5パターンあって、その5パターンの地図は、今も学生間でそれなりの値段で取引されている。すべてのパターンの地図を持っているのは、ミランダ社長が初代会長を務めたダンジョン研究サークルぐらいらしい。
つまり、今のままではすぐに攻略されてしまう。ダンジョン構造をすべて変えるには1ヶ月では足りないので、既存の7階層に8~10階層を追加する形を取ることになった。現在の保有DPを確認する。
「問題は現在の保有DPですよね。・・って、あれ?え?何でこんなに?」
余りにも桁外れのDPに私達は驚きを隠せなかった。
ダンジョン協会が現時点で保有するDPよりも多かったのだ。ヘンリーさんが解説してくれる。
「ここのダンジョンは、実は都市全体がダンジョンになっているんだ。だから、何もしなくても膨大なDPが入ってくるんだよ」
学園都市全体の人口は10万人、DP回収ゾーンの居住者を半分の5万人と仮定しても、1日で1200万ポイント(240ポイント×5万人)の収益がある。ほとんど支出がないことを考えるとこの保有DPも頷ける。ウメック先生が言う。
「私も当初はダンジョンを大きくしようと思ってたんだけど、学園都市の方に力を入れるようになって、ダンジョンは学生向けをこじんまりするくらいだったから、今の今まで、DPが大量に余っていると忘れていたよ」
流石ハイエルフのウメック先生だ。豪快過ぎる。
ここでミランダ社長が提案する。
「ということはまず、8~10階層を作る班とダンジョン攻撃班を決めないとね」
ダンジョンバトルは、開始と同時にこちらのダンジョンと相手方のダンジョンの入口を転移スポットでつなぐ。当然守っているだけでは勝つことはできない。相手のダンジョンに侵入して模擬ダンジョンコアを破壊する必要がある。
そんな話をしていたところ、協力を申し出てくれる人が多くいた。ダンコルの会員達だった。特にエリーナと今も「龍神ダンジョン」で勤務するタリーザとダクネスはすぐに協力を申し出てくれた。
それに面白そうだということで、クワトロメイズのメンバーが攻撃班として参加することになった。
サイコロプス2体(オーエンさん担当)
ゴールデンリビングアーマー(コーデリアさん担当)
コウモリ魔人(妖精姉妹担当)
大型グリーンスライム(ニールさん担当)
これらの魔物を操作して、ダンジョンの攻略に挑むことになった。
私はヘンリーさんに質問する。
「DPがかなり余っているから、もっと大量に攻撃班を増やすべきでは?」
「そう思うかもしれないが、これも作戦だよ。相手はこちらのDPがそれ程ないと思っている。それを逆手に取るんだ。攻撃班が少ないとこちらにDPがあまりないと確信すると思う。それで、相手が手を打ってきたときにこちらが仕掛ける。なので、ダンジョン構造も既存の1~7階層はほとんど手を加えずにトラップやスポーンを少し多めに設置するにとどめるよ」
これにエリーナが質問する。
「相手のDPは大体分かっているので、力押しでもいいのではないでしょうか?」
「そうかもしれないけど、ダンジョンバトルを挑んでくるくらいだから、もしかしたら秘策があるのかもしれないし、念には念を入れてだよ」
それからダンジョンバトルまでの間、ダンジョンバトルに参加するメンバーは充実した時間を過ごしていた。
まず、クワトロメイズのメンバーだが、各地のダンジョンを巡って、ダンジョン攻略をしていた。ダンジョン構築には慣れているが、ダンジョン攻略は不慣れだからだという。
ニールさんが言う。
「ダンジョンを攻略する立場もそれはそれで楽しいですね。新しいダンジョンのアイデアも湧いてきますし・・・」
他のメンバーともども楽しんでいるようだった。
一方、ダンジョン構築については、エリーナ、ダクネス、タリーザが中心になって頑張っていた。こちらも楽しそうだった。
「学生向けダンジョンでも、スポーン(魔物発生装置)とトラップを少し加えるだけで、C級冒険者でも苦労するダンジョンになるッス!!」
「管理職の私の立場からするとDPを際限なく使えるのは嬉しいわ!!このやりくりが大変なんだけどね」
「私としては、ドライスタ様の偉大さを伝えるために7階層は、龍種を出現させるように考えています。ボスもミスリルリザードくらいはすぐに用意できますし・・・」
三人は昔を思い出したように仲良く、ダンジョンを作っている。
そういえば、苦労はしたけど、このメンバーでワイワイとダンジョンを作ったのはいい思い出だ。
私はというと多忙を極めていた。
当然ながらダンジョンバトルの関係ではない。まずは、論文や報告書の作成だ。今まで調査して来た関係を書類にまとめなければならない。というのも、特に必要はなかったのだが、私達の調査活動は建て前上、各国からの資金援助を受けての活動ということになっていて、そちらの方への報告義務が出てきたからだ。こちらの関係で苦労したことは如何にして、ダンジョン関係の秘匿事項を漏らさなずに報告書を作るかということだった。
ダンジョンコアの詳しい解析結果やダンジョン転移などは表沙汰にできない。なので、主題を過激派の関係にシフトして報告する。また、スタンビートを発生させた組織の中には、かなり高位の死霊術士が存在するというセンセーショナルな内容を織り交ぜ、注意を逸らすなどの工夫をした。
因みに死霊術士は伝説的なジョブで、50年以上前の宗教戦争で猛威を振るったという記録があるのみで、各国の首脳陣の目はそちらの方に注目していた。特に神聖国ルキシアの関係者はしきりに質問にくるなど、かなり関心を寄せていた。
そして、またまた厄介なことにキョウカ様関係の仕事も増えてしまった。私が小間使いのように使えるのをいいことにあろうことかセントラルハイツ学園の講義を増やしてしまった。それに課外活動なども積極的に取り入れたり、泊り掛けの実習も行ったりとやりたい放題であった。
キョウカ様はというとすべて私に丸投げで、忙しい中、実習の計画や予算の申請、活動報告の提出とやることは山のように増えていく。
そして、ダンジョンバトルの準備には全く関わることなく、ダンジョンバトル当日を迎えたのであった。
毎回思うのだが、本当に私はダンジョン関係の会社で仕事をしているのだろうか?
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