ダンジョンバトル 1
果し状
我が「究極のダンジョン」は、「セントラルハイツ学園学生向けダンジョン」へダンジョンバトルを申し込む。開始日は本日から1ヶ月後の6月6日午後1時から開始とする。
方法は、ダンジョン協会発行のダンジョンバトル規定に則り、模擬ダンジョンコアの破壊を持って勝負を決する。
勝利報酬 勝利したダンジョン側が相手ダンジョンの権利すべてをもらい受ける。
なお、ダンジョンバトルに応じない場合は、スタンビートを発生させ、学生諸共、セントラルハイツ学園を滅ぼすことになるだろう。
差出人 ローレンス・エドワーズ
ダンジョンバトル?
ダンジョン経営学部の歴史の講義で、かなり昔にそのような制度があったと習ったことがある。しかし、ここ何百年と行われていない。そのときの講義を思い出すと、当初ダンジョン協会はランキングをダンジョンバトルで決定していたのだが、ダンジョンバトルで大量のDPを消費してしまう。採算が合わないことから、ダンジョンバトルでランキングを決めることは中止された。
また、ダンジョン間のもめごとの解決策に用いられることもあったみたいだが、ダンジョンバトルに参加する双方ともに莫大なDPを消費することから、これも行われなくなった。
私の感想としては、正直意味が分からない。
例えこの戦いに勝ったとしても莫大なDPを消費してしまうので、何が目的かは分からないが今後の活動に大きな影響が出るだろうし、相手としても良いことなんてないだろう。
それに高々学生用のダンジョンを手に入れたからといって、それでどうなるのだろうか?
ダンジョンの規模でいうと最小のダンジョン規模で、収益もほとんど見込めないのに・・・・
そんなことを思っているとヘンリーさんが意外なことを言い出した。
「ウメック先生、受ける方向で話を進めてはどうでしょうか?最終的に断るにしても、バトル前の打ち合わせで、相手方と交渉することは可能ですから、何かしらの情報を引き出せるかもしれませんし」
一応、ダンジョン協会の会長のキョウカ様に確認したところ、「好きにして」と言われた。
ということで、ダンジョンバトルの調整の為に私とヘンリーさん、それにミーナが最後に残った無許可ダンジョンに来ている。マスタールームには、指名手配されている旧ダンジョン協会の関係者やタルシュ帝国の関係者の他に過激派の全身白装束を纏った人達も何人か居た。
私とミーナは顔を見合わせた。
(追われている身なんだから姿を現さないのが普通だろう!!それに過激派の恰好までして、暗につながっていると言っているようなものじゃないの!!何なの、この馬鹿集団は?)
ミーナも私と同じ気持ちだったようで、苦笑いを浮かべている。
しばらくして、果し状の差出人ローレンス・エドワーズが現れた。
「なぜ君達がここに?私はセントラルハイツ学園に果し状を送ったはずだが・・・」
これにヘンリーさんが答える。
「私どもダンコルにセントラルハイツ学園から依頼があり、代理人として交渉に参りました。セントラルハイツ学園としては、ダンジョンバトルを受ける方向で話を進めて欲しいとのことです」
「ほう、恐れをなして逃げるものと思っていたが、なかなか見どころがあるな」
(ローレンスさんは、少し上から目線の人だったけど・・・ここまであからさまなことを言う人ではなかったと思うんだけど)
「ダンジョンバトルの件は後で詰めるとして、旧ダンジョン協会の事件で指名手配となっている方もこちらに何人かいらっしゃるようですが、流石に私達の胸の内にしまっておくことはできませんよ」
「好きに報告してくれて構わないよ。ただ、私達がダンジョンバトルに勝ったら、こちらの者達の減刑も報酬に入れて欲しい」
「これは私達だけで判断できませんので、持ち帰って確認します。それで、条件の確認ですが・・・・」
次の日、再度交渉したところ、ダンジョンバトルについては以下のようになった。
1 DPは、現在そのダンジョンが保有しているDPのみ使用可能
2 ダンジョン構造は10階層までとし、臨時でフロアを作成してもよい
3 勝利報酬は、相手方ダンジョンの権利に加え、「至高のダンジョン」が勝利した場合は、関係者の減刑、「学生向けダンジョン」が勝利した場合は、全員が投降し、取調べに応じること
しかし、私はどうも納得ができなかった。
一体何を考えているのだろうか?ローレンスさんの側には全身白装束(顔も覆面で覆われている)の男がおり、コソコソと耳打ちをしているし、何やら参考書のようなものを見せて解説している。
その本のタイトルには見覚えがあった。あの過激派のバイブル「完全テロリストマニュアル」だ。
まあ、あの本のとおりにやると失敗間違いなしだから・・・。
全身白装束の男の声が漏れ聞こえて来た。
「ローレンス様・・・76条です。最後はしっかりと・・・・」
「分かった・・・。それでは我が永遠のライバルであるヘンリー殿、そして親愛なる同期のナタリー殿、ミーナ殿!!正々堂々と戦おうではないか。これが最後の戦いだ。胸を借りるつもりで向かってくるがいい」
これも何か芝居じみていた。ローレンスさんは何かに操られているのではないだろうか?
納得のいかないことが多いがとりあえず、ダンジョンバトルに勝てるように頑張らなければ。
帰り際、ミーナが核心に迫る質問をした。
「ところで、過激派のリーダーのマリアはどこですか?リーダーならリーダーらしく、表に出てくるのが筋ではないかしら?」
これにはローレンスさんも微妙な表情を浮かべた。そして、何かを口にしようとしたとき、全身白装束の男が代わりに答えた。
「マリアはこっちで処分したぞ。我らアルボラにあるまじき行為の数々は目に余る。我らが真のアルボラだ!!そいつの名前はもう出すな!!」
全く意味が分からない。あなた達は何の目的で、何がしたいのだろうか?
そんな思いを抱えながら私達は、セントラルハイツ学園に帰還した。
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