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<完結>ダンジョンコンサルタント~魔王学院ダンジョン経営学部のエリートが劣等生女子とともにポンコツダンジョンを立て直します  作者: 楊楊
最終章

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スタンビート 7

ダンカン将軍が大公を殴り倒したことで騒然となっていたが、ヘンリーさんの機転で場は収まった。ヘンリーさんは続ける。


「とりあえず現状把握ですね。包み隠さず、現状を教えてください」


側近達が躊躇しているところ、ダンカン将軍に忠臣と褒められたルーナさんが説明を始める。


「まず我が軍の兵力ですが、正規軍が3000人、これに招集した予備兵と退役軍人2000人で対応しています。ダンジョンを二つ抱えていますから2000人ずつ振り分け、1000人は突発対応で待機させております。スタンビートで発生している魔物ですが、すべてアンデット系でスケルトンやグールがメインです。

スケルトンやグールは少々頭を潰したくらいでは止まりません。こちらに大火力が使える戦力がおらず、かなり苦戦しています。

今後スタンビートの勢いが激しくなることを考えると・・・・かなり危険な状況です」


これに大公が答える。


「だから!!ジャシーン派のマリア殿が聖なる力で何とかしてくれるはずだ。特大の聖魔法の構築には時間が掛かると言っていたし・・・・。多分大丈夫だ」


ここでダンカン将軍が怒声を上げる。


「この馬鹿者が!!その聖魔法とやらの確認はしているのか?指揮官が「多分」とか軽々しく口にするな!!」


大公は震えあがっている。指導を受けていたとき、かなり追い込まれていたみたいで、トラウマのようになっているそうだ。

落ち着いたところで、ミランダ社長が言う。


「ここのスタンビートは他のダンジョンのスタンビートと魔物の種類が全く違うわ。どこもアンデット系の魔物は出てこなかったはずだけど・・・。それにスタンビートの鎮圧の基本は勢いが弱まったところで発生源のダンジョンコアを破壊することなのよ。聖魔法をドーンと一発撃って、ハイ終わりとはならないわ」


ヘンリーさんも続く。


「こう考えればどうでしょうか?ジャシーン派は救世主ではなく、スタンビートを発生させた側だと。大公閣下に擦り寄り、他国からの援軍を断らせ、危機が陥っても「我々が助ける」と言ってギリギリまで何もさせない。そう考えれば辻褄が合いますよね?」


「そ、そんな・・・騙されたというのか・・・」


ヘンリーさんが言う。


「マリアという女は、「洗脳」のようなスキルを持っているようです。洗脳が解けた者が言うには、無理やり誰かを従わせるような強い能力ではないのですが、コンプレックスがあったり、悩みを抱えていたりすると、そこを上手く突いてくるそうです。

大公閣下も何か困りごとがあったり、心労が祟ったのではありませんか?

その御年で国家のトップとなると相当なプレッシャーだと思います。マリアと知り合った経緯を教えてもらえますか?」


大公が口を噤んでいたため、ルーナさんが代わりに説明する。


「ジャシーン派自体は、かなり前から我が国に住み着いていました。特に問題を起こすわけでもなく、正規の聖母教会よりも良心的な寄付で治療をしてくれるし、どちらかというといいイメージを持っていました。

しかし、先代の大公閣下が亡くなられてから、ジャシーン派の活動は活発化しました。マリアと名乗る女性が予言と称して貴重素材の採取場所を教示したり、アル様にも接触するようになりました。そして、我が国の教会を乗っ取りに近い形で手中に収めてからは、アル様を介して国の人事まで口を出すようになり、先代から仕えている古参の大臣や将軍は軒並み更迭しました。

なので国の要のほとんどが経験の足りない若者ばかりで、アル様のイエスマンばかりになり、ますますマリアの影響が強くなっていきました」


ここで大公が口を挟む。


「ルーナ!!僕のことを思ってくれるのはマリアしかいないんだ。古参の大臣達は僕のことを「先代以来の大馬鹿者」とか「とんだ先祖返りだ」とか陰口をたたくし、聖母教会の司祭だって、僕が大公になった途端に寄付金の増額を要望したりするし・・・。

ルーナだって、僕に『しっかりしろ、大公としての自覚があるのか?』とかみんなの前で怒鳴ったりするじゃないか!!

僕の悩みを話せるのはマリアしかいなかったんだ!!」


大公は口調が年相応になっている。先ほどの言葉は、興奮して思わず口に出た本音だろう。


「それは違います!!私こそがアル様のことを誰よりもお慕いしております」


ルーナさんの発言で、しばらく沈黙が流れる。

ルーナさんは顔が真っ赤で、大公もモジモジしている。どこか甘酸っぱい雰囲気だ。


場を元に戻そうとヘンリーさんが話始める。


「これでジャシーン派が怪しいというのが分かりました。ここからは、予言は嘘であるという前提で戦略を練り直してはどうでしょうか?援軍を要請するとか、民衆を避難させるとか、やれることは多くありますよ」


そんなとき、意外な人物が対策本部にやって来た。

オルマン帝国のマルロ大臣だ。


「ご無沙汰しております大公閣下、即位式以来でしょうか?本日はそちらのダンカン将軍に要件があって参りました」


するとマルロ大臣は金貨3枚を取り出して、ダンカン将軍に手渡す。


「申し訳ありません。退職金の計算を間違っておりました。不足分の金貨3枚です。どうぞお納めください」


(退職金の不足の支払い?わざわざ、他国まで出向いてやることだろうか?)


「こう見えて私、宰相代理兼スタンビート対策大臣に就任しまして、各地を巡回しているところでありまして・・・」


マルロ大臣によると、またまたスタンビート対策という厄介ごとを押し付けられていたようだ。今でも業務多忙なのにこれ以上仕事を押し付けられてはたまらないと思い、「形だけの役職など意味がありません。それでしたら、ある程度の権限を与えてください」と抗議した。

すると宰相が「だったら、条件付きだが、儂と同じくらいの権限をやろう」と言い出して、宰相代理にされてしまったそうで、更に仕事が増えてしまったようだ。


「一応宰相代理なので、それなりの警護が必要ということで200名の護衛を引き連れています。大公閣下にあらせられては、その辺はご容赦ください。それと副官から昇格したハインリッヒ将軍もダンカン将軍に会いたいと申しておりましたよ。彼は国境に1万の部隊を率いて待機していますが、流石にその部隊を率いて会いに来ることはできませんので、残念がってましたよ」


なるほど、すべて読めた。

各国は情報を基になるべく角が立たないように援軍を送り込んだようだ。タイミングよく、ダンカン将軍がここに来るわけはないし、そのダンカン将軍に会いにマルロ大臣がここに来るわけなんてない。それに国境に1万の増援部隊がいると暗にヒントを出している。

ローモナス大公国のことを気に掛けていたのは私達ダンジョン関係者だけではなかったようだ。


これなら、何とかなるだろうと思っていたところで、ドカーンという爆発音が鳴り響いた。

そして、拡声の魔道具から声が響き渡った。


「我々は、アルボラだ!!ジャシーン派は世を忍ぶ仮の姿だ!!邪神とかけたふざけた名前のジャシーン派なんだから普通気付くだろうが!!バーカ、バーカ!!

俺達が成りすましてたんだよ。ここからは好きに暴れさせてもらうぜ。次に狙うのは商工会議所の倉庫だ。お前達の食料をすべて焼いてやるぜ!!」


大公は青ざめていたが、ヘンリーさんは言う。


「これは好都合ですね。やっと分かりましたよ。大公閣下のお考えが・・・・」

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