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<完結>ダンジョンコンサルタント~魔王学院ダンジョン経営学部のエリートが劣等生女子とともにポンコツダンジョンを立て直します  作者: 楊楊
最終章

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スタンビート 6

ローモナス大公国に到着した。

移動はローモナス大公国にあるミスタリアグループの「B-3ダンジョン」の転移スポットを利用した。ラッセル会長曰く、小国家群はEブロックなのだが、その時はまだ独立するかしないか揉めている時で、オルマン帝国扱いでB-3にしたらしい。因みにローモナス大公国では、「復活のダンジョン」と呼ばれている。このダンジョンのおかげで不死鳥のごとく国力が回復したことに由来しているらしい。


ローモナス大公国に着くとミランダ社長のテンションは高かった。ミランダ社長が言うには「間近でスタンビートが見られるなんて、滅多にない!!」とのことだった。長い付き合いなので、もうこれくらいでは驚かなくなってしまった。

とりあえず、私達は大公達首脳陣が詰めているスタンビート対策本部を訪ねた。私達の訪問の目的は一応ダンジョン研究ということになっており、大公に挨拶するためだ。

謁見ではミランダ社長が代表して挨拶する。


「私はミランダ・マース、ダンジョン研究家です。スタンビートの実地調査に参りました。お忙しいようなので、護衛は必要ありませんので、ダンジョン周辺を調査する許可をいただきたい」


「我はローモナス大公国大公アルベール・ローモナスである。我が軍が華麗にスタンビートを鎮圧する様子を自由に見るがいい。貴殿が大陸会議で発表する前から我々は準備をしてきたからな。5日と言わず3日で鎮圧してやろう」


「それは頼もしいことです。もう少し後に訪問させていただく予定でしたが、早くきて正解でしたね」


「そうだな。貴殿達は運がいい」


(その自信は一体どこから?若いのに無理して自分を大きく見せようとしているし)


大公の案内でスタンビート対策本部を訪れるとそこは、慌ただしく怒号が飛び交っていた。それだけで戦況が悪化していることが伺える。


「第一防衛ラインがもう持ちません」

「まだ2日目でこれか・・・10日は耐えられるようにしなければならないのに・・・」

「市民の避難も視野に入れなければ、オルマン帝国は受け入れてくれるだろうか?」


同じ小国家群でも、盤石の戦い方をしている勇者パーティーがいるベルン近郊のダンジョンとエルフとドワーフの混成部隊に魔国デリライトの精鋭部隊で対応しているエルフの森に近いダンジョンとは、雲泥の差だ。

それに国内で二つもダンジョンスタンビートが発生している。

ヘンリーさんはやんわりと大公に状況を聞く。


「国に二つもダンジョンスタンビートを抱えているのは大変ではないでしょうか?四大国でさえ、1箇所を鎮圧するのに四苦八苦しているのですから」


実際のところ四大国は、いつでも次の手が打てるように余力を残した状態で対応している。

これに対して大公は言う。


「四大国と言っても大したことはないな。大陸の勢力図もそのうち塗り替えられるだろう」


本当にこの自信はどこから来るのだろうか?現状を見れば、かなり危ない状態なのに。


「それは頼もしいですね。大公閣下は、我が師ミランダが発表する前にスタンビート対策をされていたと仰られましたが、どういった経緯でお知りになられたのでしょうか?」


「それはな・・・神のお導きだ・・・・」


(ああ、これはヤバいパターンだ・・・・)


大公が言うには、ある団体の代表から様々な予言を受けていたそうだ。更に大公は恍惚の表情を浮かべながら語る。


「ジャシーン派のマリア殿・・・本当に素晴らしい方だ。その方の予言では『絶対に他国に頼ってはいけない。そうでなければ、大いなる災厄が降り注ぐ。必ず自国の部隊のみで対応しなさい。危機が訪れたとき、神が降臨するでしょう』とな。本当にあのお方が我が国に来てくれて本当によかった・・・」


これはもう駄目だ。過激派は最悪ここだけでもスタンビート作戦を成功させるように考えていたのだろう。それもかなり巧妙なやり方で。

過激派としても、すべてのダンジョンスタンビートが成功するとは思っていなかっただろう。できれば小国家群の4つのダンジョン、最低でもローモナス大公国の2つのダンジョンだけでも成功させたかったはずだ。ローモナス大公国以外のスタンビートは多分大きな被害もなく鎮圧できるだろう。


現在、発生から2日目だがローモナス大公国の防衛線は崩壊しかかっている。

対策本部で一人女性が意を決っして大公に進言した。


「恐れながら大公閣下に申し上げます。このままでは戦線が崩壊します。他国に援助要請をお願い致します。それに合わせて民衆の避難を・・・・」


大公がこれを遮る。


「この馬鹿が!!客人の前で恥をさらすな!!お前はもうクビだ。処分が決まるまで自宅で謹慎していろ!!」


それでも女性は食い下がる。


「で、でも大公閣下!!このままでは・・・・」


「馬鹿者が!!マリア殿のお告げを信じろ!!絶対に大丈夫だ!!」


一体どうすればいいのだろうか?

この流れで、「マリアは過激派のリーダーで大嘘吐きですよ」と言ったところで信じてもらえないだろうし、そんなことを言えば、如何にこの国の人間ではない私達でも処罰されてしまうだろう。

ヘンリーさんも対策を考えているようだ。


そんなとき、対策本部に意外な人物が現れた。

オルマン帝国の元将軍で、現在はニューポートの軍事顧問ダンカン将軍だ。


「アルよ!!上に立つ者は窮地のときこそ、落ち着いて、冷静に対処せよと教えたはずだが?まあ、息災そうで何よりだ」


「こ、これは師匠、お見苦しいところを・・・ところで何用でこちらまで?」


「まあ、ちょっとした視察だ・・・。ところで戦況はどうだ?」


ダンカン将軍は先代大公と親交があり、現大公の武術、軍略の指導をしていたそうだ。なぜここに来たかというとニューポートのゴブリン隊と阿修羅隊を率いてスタンビート対策の遊撃部隊としてベルン近郊のダンジョンに派遣されていたようだが、他の二つのスタンビートは落ち着いていることもあり、勇者の命令でこちらの視察に来たとのことだった。


当然、この件は四大国も了承している。各国ともこちらの状況が気になるらしい。

ダンカン将軍の事情を聞いた大公は言う。


「視察ですか・・・それなら我が軍が鎮圧する様子をご覧ください。すぐに鎮圧して見せましょう」


「そうか・・・我には、かなり苦戦しているように見えるがな?」


「一見そうかもしれません。しかし、最後には神が助けてくださります。ローモナス大公国は神に選ばれた国で我は神・・・・」


そう言いかけたところで、大公はダンカン将軍に殴り飛ばされた。慌てて、大公の側近が止めに入るがそれもダンカン将軍に殴り飛ばされた。

(これはヤバい。国際問題になってしまう)


「指揮官が神頼みするようになったら終わりだと教えたはずだ!!それに大臣以下何をやっておる!!主君の間違いを諫めるのが忠臣だろうが。この中で忠臣はルーナだけだ」


ルーナさんは先程、私達の前で進言した女性だろう。処分覚悟で私達の前で意見具申したのだ。


しかし、非常に拙い。これからどうすればいいのだろうか・・・・。


「あっ、あれ・・・・どうしてこんなことに・・・マリアは・・・」


大公は混乱しているようだ。

ダンカン将軍に殴り飛ばされたことで少しマリアの洗脳から解け始めているかもしれない。強いショックを受けると洗脳が解けやすくなると過激派の尋問から判明したことだ。


状況を見たヘンリーさんは冷静に対処する。


「とりあえず落ち着きましょう。今はこのスタンビートをどのように対処するかが問題ですからね。ダンカン将軍を処分するのであれば、すべてが終わった後で良いのではないでしょうか?」


これには周囲が納得くする。側近や対策本部の者達は口にこそ出さなかったが、このままでは国が亡ぶと分かっていたからだ。

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