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<完結>ダンジョンコンサルタント~魔王学院ダンジョン経営学部のエリートが劣等生女子とともにポンコツダンジョンを立て直します  作者: 楊楊
最終章

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スタンビート 4

過激派組織の企みはどうやら失敗に終わったようだ。各国のスタンビートの発生状況や過激派の動きを受けて、ダンジョンを管理している都市も冒険者ギルドも一時的な閉鎖を決定したようだ。これにはかなりの反発が予想されたが、結果的に大きな混乱は起きなかった。というのも、ダンジョン入場希望者にはそれとなく、エルフの森とドワーフの里でかなり高級素材が採取できることを伝えて、それとなく誘導するようにしていたからだ。


そのような状況の中で小国家群でもスタンビートが発生した。四大国でスタンビートが発生してから5日目のことだ。

まず四大国で発生したスタンビートだが、どの国も危なげなく対応していた。4日目からスタンビートの勢いが激しくなったが、5日目にはかなり勢いが弱まっていた。一番早くスタンビートを鎮圧したのはノーザニア王国だった。ノーザニア王国はベッツで一度スタンビートを経験しており、その経験を生かして、スタンビートの勢いが収まるやいなや、特殊部隊を投入して、発生源のダンジョンコアを破壊した。


続いて6日目にラーシア王国が鎮圧した。こちらの特殊部隊は各種族の混成だった。獣人ではない人間の魔導士も編成されていた。骸骨騎士様ロンメルさんが解説してくれた。


「情報によると各種族で有望な若手を招集し、多種族と連携が取れるように訓練しているそうだぞ。実力よりも多種族と協力できるかどうかを重視しているらしい。特殊部隊は、初代勇者パーティーの一員であった現ラーシア王国国王の肝入りで誕生したようだ。異なる能力を持つ者が協力し、連携して戦うことの重要性をよく理解しているからな」


映像を見る限り、この部隊もかなりの実力者揃いだった。


オルマン帝国と神聖国ルキシアが鎮圧したのは10日目のことだった。

なぜ、鎮圧に時間を要したかというと、この二ヶ国は特殊部隊を投入しなかったからだ。オルマン帝国だが、スタンビートの勢いが弱まったと見るや徐々に防衛線を上げ始めた。余裕を持って徐々に押し上げていき、ダンジョン内にも防衛線を構築してしまった。

映像を見る限り、もっと早く鎮圧できたのではないかと思ったのだが、骸骨騎士様ロンメルさんの解説で納得した。


「オルマン帝国軍の長所でもあり、短所なのだが、進軍する速度も計画に忠実に行ったようだ。だから、無理をせず、計画通りに行った結果がこれだ。まあ、物量としっかりした補給線があってこその作戦ではあるが」


特殊部隊を投入せずに対応できるなんて、流石は大陸一の大国と自負するだけのことはある。


神聖国ルキシアは、最後まで力技だった。

鎮圧に際しては、神官騎士を増員して突撃を繰り返していた。支援魔法を大量に浴びせられ、怪しげなポーションをガブ飲みし、嬉々として突撃をする神官騎士団に私達はドン引きしていた。

「血のダンジョン」のアスタロッテさんが申し訳なさそうに言う。


「もしかしたら我々のダンジョンが影響しているのかもしれませんね。「血のダンジョン」は神官騎士団や聖女候補達の登竜門的なダンジョンになっていて、血液を捧げれば解除できる罠が多く設置してあるのですが、みんな嬉々として血液を捧げてくれます。どうも痛みに耐えて血を流すことが崇高なことだと思っているようです。我々も神官騎士団がこんな狂気の集団になっているなんて想像もしてませんでしたよ。まあ、血液を集めることが目的のダンジョンなので、嬉しいことではあるのですが・・・」


少しコメントしづらい。空気を読んだヘンリーさんが話題を変える。


「神聖国ルキシアが特殊部隊を投入しないのは、軍や騎士団に所属せず、聖女直轄の部隊だからですね。特殊部隊の構成員は魔族や獣人が多く、逆に正規軍にはほとんど魔族や獣人がいないような状態ですね。これには神聖国ルキシアの政治体制が影響しているのかもしれませんね」


神聖国ルキシアは元は、ルキシア王国という国家だったらしい。しかし、泥沼の宗教戦争の末、新たに神聖国ルキシアとして生まれ変わった。この教訓を受けて、有力貴族と聖母教会の有力者による合議制を採用しており、便宜上、教会に認定された聖女が国家元首となっているそうだ。


「まあ、こういった政治体制が過激派を生みやすい土壌だったのかもしれませんね」


これに骸骨騎士様ロンメルさんも答える。


「あの戦争は酷かったな。隣国のオルマン帝国も、とばっちりを受けたようだが・・・・」





話は小国家群に移る。

小国家群にあるダンジョンの内訳は、ベルン近郊に1箇所、ベルンの東の開拓村付近に1箇所、ベルンの西のオルマン帝国との国境沿いに2箇所だ。

4箇所すべてで、突発的な事案に対処できるようにベッツ・スパクラブが中心となって防衛拠点を構築していた。


まずベルン近郊のダンジョンだが、こちらは問題は無さそうだ。突入部隊は勇者パーティーだし、冒険者を中心とした防衛線は、ベッツ・スパクラブが担当している。それにベルンと良好な関係にあるオルマン帝国のカーン子爵領からも援軍や補給物資が大量に届いているので、まず鎮圧できるだろうというのが大方の見方だ。

実際に映像を見ても、危な気なくスタンビートに対処している。


開拓村付近のダンジョンだが、こちらの防衛線はエルフの森とドワーフの里が直近にあることからもドワーフ部隊とエルフ部隊が大半を占めている。「鉄のダンジョン」のマスターのドラガンさんが言う。


「まあ、憂さ晴らしみたいなもんだ。過激派の襲撃はこちらも腹に据えかねている。怒りをぶつける相手が見付かってよかったとみんな言っているよ」


「それは私達エルフも同じですからね。エルフの里の被害が大きかったのは、近年、周辺国とも良好な関係を築けていて、少し平和ボケしていたのかもしれません。訓練の一環ですよ」


「森のダンジョン」のマスターのフロレインさんも続く。


「それにしても応援部隊は豪華ね。魔国デリライトの王太子一家が総出演だし・・・。アグエラ王太子妃が言うには『里帰りのついで』だそうだけど・・・・」


ミランダ社長の言葉通り、魔国デリライトはディアス王太子の直属の部隊、アグエラ王太子妃率いる5代目勇者パーティー、アルテミス王女率いる魔道弓兵隊、ピアース王子率いるダークドワーフ中心の部隊を派遣していた。

部隊員の多くはダークエルフやダークドワーフで、「先祖の故郷を守る戦いに参加しないか?」という謳い文句で部隊員を募集したところ、かなりの人数が集まったそうだ。

ここまで戦力が揃えば、心配ないだろう。


問題なのはオルマン帝国との国境沿いにある2箇所のダンジョンだ。ここはヘンリーさんも骸骨騎士様ロンメルさんも場合によっては、援軍を派遣しなければならないと心配していた。

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