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<完結>ダンジョンコンサルタント~魔王学院ダンジョン経営学部のエリートが劣等生女子とともにポンコツダンジョンを立て直します  作者: 楊楊
最終章

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襲撃者 4

作戦通りだとヘンリーさんが言う。

何でも今回の目的の一つに過激派の壊滅が挙げられる。なので、撤退する過激派組織を追跡し、拠点をあぶり出して一網打尽にする作戦とのことだった。追跡にはノーザニア王国の特殊部隊と魔国デリライトのスペシャルブラックスが当たるそうだ。なんでも、この二つの部隊は過去に追跡任務を成功させており、その道のスペシャリストだという。

現在、過激派には、会議が紛糾しているということにして、追跡部隊を編制したり、「光の洞窟」からどの方向に逃走しても捕捉できるように体制を整えているそうだ。

とりあえず、1日は教会を包囲したままとのことだったので、一端定期報告会は解散することになった。


次の日、交渉が行われることになった。ゴブリン側は、「人質を解放するならば、これ以上攻撃は加えない」との意思を伝えたのだが、過激派側は厚かましいことに「逃走用の資金と食料を用意するように」との要求を伝えてきた。また、人質を全員解放することはしないとも言ってきた。

「光の洞窟」に残っていたミーナが言う。


「あの人達は何を考えているのでしょうか?自分達の状況が分かっているのかしら」


「相手にも交渉のプロがいるのでしょう。少し無理めな要求を出して、譲歩を引き出そうとしているのかもしれませんよ」


最終的にはヘンリーさんの言うとおりになった。

ゴブリンは資金は用意しないまでも10日分の食料は与えてやり、人質は一人を除いて全員が解放された。残った一人というのは、なんとシスターフローレンスだった。

アスタロッテさんが言う。


「サキュラが言うには、式典が始まる前に避難するように言っても聞かず、『最後まで残ります。それが聖女としての在り方です』とか言ったみたいです。あの娘はそういうところがありますからね。妙に理屈っぽいし、思い立ったら全く話を聞かないし・・・・。逆にサキュラに対して『あなたはすぐに逃げて』とか言ってきたそうですよ」


何となく、分かる気がする。


「光の洞窟」から脱出した過激派のメンバーは約50人だった。途中で3グループのに分かれたそうだ。人質となったシスターフローレンスだったが、3日後に無事解放された。その経緯もかなり特殊だった。アスタロッテさん経由で入手した報告書の写しを読むとシスターフローレンスはある意味、聖女として相応しいのかもしれないと思った。


過激派は、30人、10人、10人のグループに分かれたのだが、シスターフローレンスは10人のグループに入れられたそうだ。当初はリーダーのマリアがいる30人のグループに編成されていたのだが、度々マリアをシスターフローレンスが論破していたらしい。

リーダーのマリアは「洗脳」のスキルを持っているようだったが、シスターフローレンスには全く通じず、逆に「そのような教典はありません」とか「何を根拠にしていますか?それってあなたの感想ですよね?」、「証拠を示してください」などと言って、酷いときには3時間延々と喋り続けたそうだ。

マリアもこのときになって、人質の人選を間違えたことに気付いたようだ。


そして、シスターフローレンスは10人の別動隊に編成されたのだが、今度はこの10人が被害者?となってしまった。最終的にこの10人はマリアの洗脳が解けたこともあり、シスターフローレンスと共に疲れ切った様子で投降してきたそうだ。

メンバーの一人は少しノイローゼ気味で「信仰の道は険しい」と語っていたそうだ。

私はミーナに言った。


「あの調子で何日も一緒にいたらと思うとゾッとするわ」


「そうね。過激派のメンバーに少し同情してしまうわね」



追跡作戦も順調なようで、途中に何度かグループが分離したが、最終的には合流して、小国家群のベルンに入ったようだ。ベルン近郊には無許可ダンジョンがあり、オルマン帝国のB-5ダンジョンにも近い。状況から考えて、無許可ダンジョンを作った者達と何らかの関係が伺える。

ただ、現時点では明確なつながりを示す証拠も無く、未だに目的も不明だ。

ヘンリーさんの推測では、スタンビートに合わせて、行動を起こすのではないかとのことだった。

各国が連携して監視に当たっているので、何か動きがあればすぐに分かるだろう。





「光の洞窟」の事件から2週間後、緊急のマスター会議が招集された。


内容は、無許可ダンジョンの採取素材が大幅に変わったとのことだった。エリーナが詳細を説明する。


「情報によりますと、四大国の無許可ダンジョンで採取素材の質が大幅に上昇しました。無許可ダンジョン周辺ではバブルのような状態になっているとのことです。逆に小国家群のダンジョンでは、採取素材の質が下がり、冒険者の一部は四大国のダンジョンに流れています。

これを受けて四大国ではすでにスタンビート対策部隊を招集しています」


ミランダ社長のアドバイスで、対策に抜かりはないらしい。これにヘンリーさんが続く。


「明らかに小国家群から冒険者を遠ざける作戦でしょうね。各国とも理解はしているでしょう。それに過激派の動向も気になります。引き続き監視を強化しましょう」


情報交換をした後、最後にキョウカ様のスピーチとなった。


「このようなときこそ、一致団結して頑張りましょう。ですので、緊急の対策室を設置します!!」


これは打ち合わせにないことだった。キョウカ様が提案した緊急対策室は、ランキング上位のダンジョン関係者が夜間もダンジョン協会に泊まり込んで、有事に即応できるように体制を整えるといったものだった。私はこの提案を素直に感心した。ミルカ様にその旨を伝える。


「素晴らしい提案だと思いますよ。私も賛成です。最近のキョウカ様は成長著しいですね」


「多分、勘違いです。姉はただお泊り会がしたかっただけだと思います。というのも・・・・」


ミルカ様が言うには、キョウカ様は定期的にセントラルハイツ学園に薬草学等の講師に行っている。そこで学生達との実習の中で、「お泊り会とか合宿とかしたら仲良しになれますよ。私達は入学直後に学園側がオリエンテーション合宿を企画してくれたりします」という話を聞いて自分でもやりたくなったそうだ。


結局、ミルカ様の予想通り、本当にお泊り会をしたいだけだった。私はというとモフモフ達を招集したり、軽食やお菓子を用意させられたりした。しかし良かったこともある。意外に楽しかった。

ミスタリアからはミーナ、クワトロメイズからはルキアさん、「龍神ダンジョン」からはダクネスとタリーザが交代で泊まりに来ており、女子会のようだった。


まあ、仲良くなるのが目的の企画なので成功と言っていいだろう。


そんな風に呑気なことを考えていたら、エリーナが会長室に駆け込んできた。


「スタンビートが発生しました!!」

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