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<完結>ダンジョンコンサルタント~魔王学院ダンジョン経営学部のエリートが劣等生女子とともにポンコツダンジョンを立て直します  作者: 楊楊
最終章

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襲撃者 2

美しい金髪青目、慈愛に満ちた笑顔、その裏に隠れる何か冷たい感じ、間違いない。ベールで顔を隠してはいるが、私には分かる。

私はフワフワ鳥のフワッチに尾行させ、フワッチと感覚共有した。

聖女とお付きの者との会話を盗み聞く。


「マリア様、いよいよですね」

「その名前は出さないで、どこで誰が聞いているか分からないから」


(私が聞いています)


「失礼しました。計画は順調です」

「そう。しかし、聖女カタリナも迂闊ね。こんなところで生涯を終えることになるなんて」

「そうです。マリア様こそ真の聖女であらせられます」

「だから名前は出さないで」


そうだ、マリアだ。マリア・ホワイトローズ、逃亡中の先代勇者パーティーの聖女で間違いない。


「ゴブリンどもはそれなりにいい装備はしているけど、大したことは無いわね。まあ、心配ないとは思うけど、油断しないでね」

「分かっております。それで、我々以外の神官やシスター達はどうしましょうか?」

「そのままでいいんじゃない?もし仮に失敗して逃げ出すようなことになったら、そいつらを楯にしましょう。相手も関係者を皆殺しにはできないでしょうし・・・」

「流石はマリア様です。先代のリーダー達はマリア様に比べると本当にポンコツでしたね。あのままではここまで組織が拡大することもなかったと思います」


(こいつら腐ってやがる!!)


フワッチと感覚共有して、会話を聞いていたときにシスターフローレンスから声を掛けられた。会話の内容が内容だけに凄い表情をしていたのだろう。


「ナタリーさん、どうされたのですか?」


「すいません。少し体調を崩してしまったようです。長旅の疲れが出たのかもしれません」


「そ、そうなんですね。治療いたしましょうか?」


「大丈夫です。少し休めば楽になります。よければサキュラさん特製のポーションをいただければと思っています」


サキュラさんに話を振ったのは、過激派の情報をサキュラさんに伝えたかったからだ。


「分かりました。そうしたらサキュラさん、お出ししてあげてください」


「そうですね。少し診察してから調合いたしますので、こちらにきてください」



サキュラさんに私とミーナは、別室に案内された。

別室について、防音の魔法を掛けると先程の内容をサキュラさんに話した。


「なんと!!ずっと過激派のリーダーを捜していたのですが、こんなところにいるとは・・・・。本当に感謝してもしきれません」


「そんな偶々見かけてただけで・・・・」


「いえいえ、これで作戦もやりやすくなりそうです」


物凄く感謝された。

ここでミーナが質問する。


「ところで過激派ってどんな組織なのですか?こんな大それたことをするような組織なのでしょうか?」


「ああ、そういうことですね。私ではどこまで伝えていいか判断できませんので、直接聖女様にお話しください。お礼も兼ねて、聖女様と謁見していただければと思います」


「分かりました。ヘンリーさんに確認を取ってみます」


ヘンリーさんに確認を取ったところ、同席してくれるとのことだった。無許可ダンジョンと過激派の関係性が分かるかもしれないので、少しリスクを冒しても聖女と謁見するべきというのがその理由だ。


サキュラさんも聖女の側近のドラクさんも吸血族で、アスタロッテさんの兄弟になる。アスタロッテさん経由で取りなしてもらえたそうだ。因みに現聖女もシスターフローレンスにもダンジョン関係は秘密にしているらしい。


私達はサキュラさんの案内で7階層に移動し、聖女の滞在先で謁見することとなった。

神聖国ルキシアの聖女カタリナ・クレメンス。こちらも金髪青目の美人さんだ。聖母教会の運営と神聖国ルキシアの統治の両方を行っているらしい。

サキュラさんの話では、特に礼儀などにはこだわらず、気さくな方らしいのだが、絶対に年齢のことは聞かないようにとのことであった。


更に聖女についての説明も受けた。

聖女は大きく分けて二つの意味がある。役割、役職としての聖女とジョブとしての聖女だ。役割としてパーティーで言えば回復役の聖母教会所属の女性、役職として聖女カタリナのような神聖ルキシアが指定した聖女が挙げられる。

ジョブというのは天性のもので、ジョブによっては、能力に補正が掛かったりするらしい。聖女は「回復魔法、治癒魔法に大きな補正がかかる。努力次第で、最高の回復術士となれる」との言い伝えがあるそうだ。ジョブを鑑定するには、聖母教会の特殊な魔道具を使用するか、特殊な鑑定スキルの持ち主にしか判別がつかない。そういう事情なので、自称聖女も結構いるようだ。

聖女カタリナはジョブも聖女だという。


「今回は情報提供ありがとうございます。ダンジョン雑誌の取材でこちらにいらっしゃったとのことですよね?」


「そうなんです。私達はミランダ・マースという高名なダンジョン研究学者に師事しておりまして、こちらのミーナと一緒に・・・・」


この返答はヘンリーさんが用意してくれたものだ。私とミーナは学生時代からの友人で、ダンジョン関係の出版社に勤めるミーナとダンジョン内のゴブリンの町で開催される、独立記念式典の取材に来たという設定だ。

先代勇者パーティーについて知っているのも、ダンジョン雑誌の編集をしていれば当然だということで納得してもらった。


「ミランダ教授のお弟子さんだったのですね。ミランダ教授には大陸会議では貴重な意見をいただきまして、本当に助かっております。情報をいただいた上にこのようなお願いをするのは心苦しいのですが、すぐにこの町から退去していただきたいのです」


「そ、そんな・・・こちらも仕事で・・・・」


「これから言うことは絶対に口外しないという条件で、少しお話しようと思います。今回の式典では、間違いなく過激派が襲撃してきます。一般の方に被害を出さないようにするため、基本的に退去していただくか、どうしても断られるのなら、式典が終了するまで一時的に拘束することになるかもしれません」


当然、私も過激派が襲撃する計画を知っている。しかし立場上、一介のダンジョン研究者がそのような事情を知っているはずもないので、知らない振りをすることにした。


「それは仕方ないですね・・・すぐに退去を考えます。しかし、一体過激派とはどのような組織なのでしょうか?」


ミーナが質問する。


「過激派組織アルボラというのは、元々聖母ガイアの娘、女神テティスを信仰する宗派から派生したものです。当初から過激な行動を取ることで有名だったのですが、何というか・・・ちょっと残念な集団でした。

なぜか地元のお祭りで行動を起こしたり、老朽化して立て直す予定の教会を爆破したりと本当にテロ行為かと思うようなことばかりしていたのです。それにご丁寧に犯行予告なんてするものだから、彼らの活動が成功することはありませんでした。

こちらとしましては、危険思想の持主がアルボラに集まり、定期的に馬鹿なことをして拘束されるので、治安維持的にもある意味助かっており、半ば放置しておりました。しかし、数年前にリーダーが交代して、組織が一変しました」


このとき、ドラクさんが過去の犯罪記録をまとめた資料と過激派組織から押収した「完全テロリストマニュアル」という教典のようなものを見せてくれた。

内容は確かに酷い。この教典のとおり活動すれば、どんな優秀なテロリストだって失敗するだろう。



第1条 テロリストの誇りを持って活動すること。

第2条 活動は貸与された白装束で必ず行うこと。白装束を着用せずに活動した場合は処刑する。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

第30条 犯行予告は必ず行うこと。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

第50条 登場する際は、なるべく派手な演出で目立つように行うこと

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

第76条 散り際の美学を求めること。作戦が失敗しても諦めず、しっかりと人質を取り、敵のど真ん中で、自信を持って降伏勧告を行うこと。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

第80条 相手にとどめを刺す場合は、必ず事件の真相を冥途の土産として告白すること。とどめを刺さず、拘束する場合は、その際に告白してもよい。




 

「リーダーが変わってからは、犯行予告も行わないようになり、獣人を誘拐するなど、悪質なものに変化していきました。それに組織も地下に潜って、より実態が掴めなくなってきたのです。救いは活動時は必ず白装束を着用してくれるところでしょうか・・・・」


その後、聖女から過激派の活動状況を聞いたが、一連の無許可ダンジョンとの関係は判然としなかった。


聖女と別れた後、私達は6階層から退去するように見せかけて、マスタールームに戻ることにした。

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