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<完結>ダンジョンコンサルタント~魔王学院ダンジョン経営学部のエリートが劣等生女子とともにポンコツダンジョンを立て直します  作者: 楊楊
最終章

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襲撃者 1

私は今、「光の洞窟」のマスタールームにいる。

ダンジョン襲撃者たちが動き出したからだ。


話しは少し遡る。

緊急の大陸会議の後、各国のダンジョン襲撃者捕縛作戦は動き出した。捜査の結果、実行犯は聖母教会非公認の過激派組織アルボラで間違いないようだった。

各国ともこの実行犯を一網打尽にして、背後関係を捜査することで意見は一致していた。


そこで大胆な作戦に出ることにした。ノーザニア王国国王夫妻と神聖国ルキシアの聖女を囮に過激派組織をおびき出すことにしたのだ。


当初から予定されていた「光の洞窟」に居住しているゴブリンや魔族達をノーザニア王国が正式に認め、自治都市として交流することを公にする声明発表を前倒しした。これは魔国デリライトとノーザニア王国が正式に停戦したことが大きいと言えるだろう。

そして、その記念すべき式典にノーザニア王国国王夫妻と立会人として、聖女が出席することになる。


ここで、この情報を過激派組織に神聖国ルキシアが流した。そして、併せてこのような情報も付け加える。


「聖女もノーザニア王国国王夫妻も多くの護衛を派遣することは認められなかった。ゴブリン達は弱く、多くの兵士に対抗できないので、侵略されるかもしれないと不安になっているみたいだ。

警備責任者の私からすれば、そこが不安なのだ。そんなときに襲撃なんかされたら、ひとたまりもないからな。はたして、ゴブリン達に警備を任せて大丈夫なのだろうか?」


本当に上手くいくか不安だったが、食い付いてきたそうだ。成功したらと仮定するとかなり美味しい話だ。ゴブリンを人質にダンジョンコアの交渉ができる上に聖女とノーザニア王国国王夫妻を利用して、大陸全土に影響を及ぼすことができる。

ヘンリーさんが言うには、度重なる襲撃失敗で、多少リスクがあっても、一発逆転を狙って大勝負に出るのは人の常らしい。まあ、ギャンブルで大負けするのはこのパータンなのだけど。


今回の作戦に利用するのは6階層の商業エリアだ。現在はかなり発展しており、以前のように地面に商品を並べて商売しているような感じではなく、それなりの都市のような建物が林立して、大手の商会も多数入ってきているようだった。


肝心の作戦だが、6階層の中央部にある広場で記念式典を行う。そこに襲撃して来た過激派組織を一網打尽にするのだ。この作戦に合わせて、一般居住者を7階層以下に避難させ、ゴブリン軍の部隊員に入れ替えている。戦闘が起きても被害を最小限に抑え込める。


それに過激派のアジトも判明している。

なんと新設された聖母教会の施設だった。教会に併設してある宿泊所なのだが、かなり前から大量に武器や食料を備蓄しているのだ。今のところ相手兵力は300人程、実際の戦力は別にして、ノーザニア王国と神聖国ルキシアの護衛を合わせても30人に満たないことを考えると、襲撃者からすれば、成功間違いなしと思っていることだろう。



そして、記念式典を3日後に控えた今日、7階層において、ゴブリン達は調印式を行っていた。ノーザニア王国の国王とゴブリン達の代表者のゴブタンさんが握手を交わしている。モニターで監視していたらネロスさんが涙を浮かべながら熱く語っていた。


「とうとうここまで来たんだな・・・・ううう・・本当に頑張ったな・・・」


長年、苦労を共にしてきたゴブリン達の晴れ姿にネロスさんは感動している。


「それにしても過激派組織には腹が立つ。大事な式典を滅茶苦茶にしようと計画しているなんて・・」


「まあ、そう言わずに、今回の件が終ったら盛大にお祝いしましょうよ」


「是非ともそうしよう。そのときはまたプロデュースを頼むよ」


「分かりました。それでは、情報収集に行ってきます」




私とミーナは6階層の商業エリアにやって来た。

今回も雑誌の取材という名目で活動している。実際にダンジョン関係の雑誌や書籍にミーナの記事が掲載されているので、全くの嘘とは言い切れない。

商業エリアは、活気にあふれていた。商人同士が商談で口論のようなことをしている以外は目立ったトラブルはなかった。非戦闘員の魔族の商人達は、式典が始まる前日まで商売を続けるようだった。本当に逞しい。

街を探索していると見知った人物にばったりと会ってしまった。


「シスターフローレンス、それにサキュラさんも、どうしてここへ?」


「お久しぶりです。それはもちろん・・・・」


シスターフローレンスの話だと、ニューポートでも今回のお祝いの式典に使節団を派遣することになり、シスターフローレンスも無理やり使節団に入ったそうだ。なぜなら彼女は、現聖女の熱烈な信者で、なんと領主の勇者に頼み込んだらしい。因みに施設団のメンバーは戦闘力の高いゴブリンが選ばれていた。増援部隊のつもりらしい。ゴブリンなら少しくらい数が多くても目立たないからだ。


「聖女カタリナ様はそれはそれは素晴らしく、民のためを思い、その身を犠牲に・・・・」


いつもの話が始まってしまった。

折を見て、サキュラさんが話を止めてくれた。


「シスターフローレンス、立ち話もなんですから・・・・」


「そ、そうね。それじゃあ、私達の宿泊場所に案内しましょう」


私とミーナはまだ解放されない事実に打ちひしがれていた。



シスターフローレンスはまず、新設された聖母教会の施設を案内してくれた。


「私達が宿泊しているのはこの教会に併設されている施設なのです。なんとこの教会の建設には、誰が出資したか分からないらしいのです。教会本部でも意見が分かれているところですが・・・。まあ、私としては、信心深く、素晴らしい方が寄付をされたのだと思っています。普通はそんなことできませんよね」


(寄付した奴は普通の奴ではないし、ある意味信心深いかもしれない)


シスターフローレンスは、ここが過激派の施設だと知らないようだ。

施設を巡りながら丁寧に解説をしてくれる。特に興味はないのだが、私もミーナも話を合わせていた。

そんなとき、私は予期せぬ相手とすれ違った。


(あいつは・・・・間違いない!!)


そう、先代勇者パーティーで勇者と共に魔族の村を襲撃した聖女だった。

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