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<完結>ダンジョンコンサルタント~魔王学院ダンジョン経営学部のエリートが劣等生女子とともにポンコツダンジョンを立て直します  作者: 楊楊
最終章

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秘書官エリーナ

~エリーナ視点~


私はエリーナ。ダンジョン協会の秘書官として勤務している。まあ、言ってみればエリート街道まっしぐらだ。私のキャリアは最初から順調だったわけではない。今にして思えば、ダンジョン経営学部の卒業を控えた就職説明会がターニングポイントだったかもしれない。

あのとき、就職が決まっていなかったと思うとゾッとする。成績はダンジョン経営学部の首席だったが、どこも私に興味を示してくれるところはなかった。唯一、ダンコルの紹介で「龍神ダンジョン」だけが私を雇用してくれた。


あの頃の私は最悪の性格をしていたと思う。他人を見下し、馬鹿にする。管理職になってから本当によく分かる。多少優秀でもそんな性格の者は扱いづらくて仕方がない。

こんな性格になったのは私の生い立ちに原因があると分析している。


私はエルフ、魔族、人間、獣人の血が流れている。プライドの高い母からはいつもこのようなことを言われていた。


「私達は素晴らしい血筋なのよ。ハイエルフの血も引いているし、元を辿れば魔王の血筋でもあるのよ。そして神聖国ルキシアの聖女に仕えた龍騎士エリーナはあなたの曾祖母なのよ。あなたは、誇り高き龍騎士エリーナから名前をいただいたからには、優秀な人にならなければいけないわ」


エルフの始祖はハイエルフと言われているし、魔族の始祖は魔王だ。それは間違いない。龍騎士も実在の人物であるが、本当に龍に乗っていたかは眉唾ものだ。

なぜ、母がここまで血筋にこだわっていたのかというと、不遇な環境のせいだ。

元々貴族だった母の実家は没落し、母は望まない結婚をして私が生まれたのだ。父はもう他界している。

プライドが高い母なので、私には「常にプライドを持ちなさい、私達は選ばれた特別な存在なのだから」と言い聞かせていた。私を通じて少しでも自分を特別な人間だと思いたかったのだと思う。

プライドの高い母だったが私は好きだった。少しでも母の期待に応えられるように成績は常にトップを守り続けた。当然、犠牲にしたことも多くあった。

全く友人ができなかったことと、他人を見下すような性格になってしまった。


「龍神ダンジョン」に就職し、最初に「試練の塔」の研修でキョウカ様にちっぽけなプライドをへし折られ、性格を矯正された。そしてただの同期だった二人は今では親友と言っていいと思う。


本当にあのとき、あの場所での出会いが私のすべてを変えたのだと思う。


「・・・と、ここまで話しましたが、私が新規採用されました皆さんに伝えたいことは「出会いを大切に」ということです。そして、日々の小さな出来事を感謝し・・・・」



私は新規に採用されたダンジョン協会の職員を前にスピーチをしている。協会内ではまだまだ若手の部類に入る私にお鉢が回って来たということだ。


私の主な業務はダンジョン協会会長の秘書だ。新しく協会が生まれ変わった最初の会長はキョウカ様だった。当然、全く仕事をしない。実質私が取り仕切っているようなものだった。二代目はドライスタ様だった。本人のたっての希望だったのだが・・・・半年で辞任された。

会長を希望した理由は私的なものだった。「ダンジョン協会の会長となり、チヤホヤされ、周囲の者から頼りにされている姿をドミティアに見てもらい『パパ、カッコイイ』と言ってもらう」と豪語していたのだが、お嬢様のドミティア様に


「仕事が忙しくなったお父様とあまり遊んでもらえなくなって寂しい」


と言われたことがきっかけで、あっさり辞任してしまった。

あんなに一生懸命引継ぎの書類を作ったのに・・・・。


結局、再度キョウカ様が会長に就任することとなる。

まあ、最近は業務にも慣れ、困ったことがあればキョウカ様を通じてダンコルに依頼を出せば、だいたいのことは解決する。

なんたってヘンリーさんがいらっしゃるから。


だから、通常の書類仕事やルーティンワークをしながら問題事案を把握するだけでいい。ちょっと物足りない感じもする。

「龍神ダンジョン」で、オルマン帝国軍とみんなで協力して戦っていたときは、忙しいながらも充実していたと思う。


「あんなピリピリした現場の感覚を久しぶりに味わってみたいな・・・・」


独り言を漏らしてしまった。こんなことを言うとフラグになってしまうのに・・・・。

まあ、ここ数年は非常に落ち着いているし、大きなイベントいえば、「龍神ダンジョン」が攻略されたくらいだろう。本当に凄い戦いだった。あのような戦いも、偶にはしてみたいな・・・なんてね。


スピーチが終わり、執務室で通常業務をこなしていると慌てた部下が駆け込んできた。


「無許可ダンジョンです!!それも大量に!!」


「ちょっと、落ち着いてください。まずは情報を・・・」


言いかけたところで、また別の部下が駆け込んできた。


「ダンジョンブレイカーが出ました!!フロレインさんの「森のダンジョン」も被害に遭ってます!!」


ダンジョンブレイカー?意図的にダンジョンを壊す迷惑な奴らだが、ここ100年以上出現した記録はない。立て続けにどういうことだろうか?


更に悪い報告が続く。


「スタンビートです。ノーザニア王国の温泉地ベッツでスタンビートが発生しました。無許可ダンジョンが原因とみられ・・・・・」


まさか、私の独り言がフラグになったのだろうか・・・・。

深呼吸をして、部下に指示をする。


「至急ダンコルに連絡を!!

キョウカ様には私からある程度情報が集まった時点で、事後報告報告します。

それと緊急マスター会議を招集します。ダンジョンブレイカーの被害に遭ったダンジョンと無許可ダンジョンを早急に把握して、資料を作ってください。スタンビートについても逐次報告してください」


これが、大陸を揺るがす大事件に発展することになるとは、このときは夢にも思わなかった。

気が向きましたら、ブックマークと高評価をお願い致します!!

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