建国祭
いよいよ建国祭当日となった。
私の任務はもちろん情報収集だ。ミーナと共に町を歩く。パッと見まわしただけでも実力者がゴロゴロしている。ノーザニア王国からは「光の洞窟」にやって来た特殊部隊が来ているし、神聖国ルキシアの聖女に張り付いている側近は偽装魔法を掛けてはいるがどう見ても魔族で、多分吸血族だ。「血のダンジョン」のアスタロッテさんが言っていた弟さんなのだろう。
また、オルマン帝国も特殊部隊を連れてきている。どうして分かったかというとダンジョンでの激闘で手を焼いた18番の斥候がいたからだ。皇帝の警護に当たっているようだった。
私はミーナに質問してみた。
「ミーナは今回の攻略パーティーはどう予想してるの?」
「そうね。すべてを把握しているわけじゃないけど・・・・。確実なのは勇者パーティーと旧魔族チーム、それとベッツ・スパクラブは間違いないわね。後は・・・・ちょっと読めないわね」
ここまでの調査で、ユリシア大陸人族領の大国、オルマン帝国、神聖国ルキシア、ラーシア王国、ノーザニア王国と魔族領を代表して魔国デリライトからそれぞれ人員を派遣するという政治的な話になっていた。だからこそ、1カ国が大量に人員を出すことは政治的な理由からそぐわない。旧魔族チームは魔国デリライトの代表、ベッツ・スパクラブはノーザニア王国の代表となる。なので、これ以上この2カ国からは人員は出さないだろう。
後の国はどのような人員を出してくるのか気になるところだ。
「各国の特殊部隊がこっそり入ったりしないかしら?」
「うーん・・・それはないと思うわ。各国とも特殊部隊を持っていることは秘匿にしてるからね。表に出せない部隊だからわざわざここで目立たせるのも違うと思うし・・・・」
そんな会話をしていたところ、見知った集団を見付けた。ミックスナッツのメンバーだ。どうやら市内の治安維持パトロールの依頼中のようだ。
向こうも私達に気付いたようで、声を掛けてきた。
「ナタリーさん、ミーナさん、お久しぶりです」
「みなさんお久しぶりです。今日もお仕事ですか?」
「そうですね。でももうすぐ終わりですから・・・・」
「だったら久しぶりに食事でも?」
ミーナが上手く食事に誘った。彼らから情報を得ようと思ったのだろう。
いつもの「新風亭」に入り、料理を食べながら話を聞く。
「ところで、皆さんはダンジョン攻略に参加されるんですか?この時間にパトロールの依頼が終るなんてちょっと不自然ですからね。明日に備えてゆっくり休めということでしょうか?」
いきなりミーナが確信をつく、質問をする。
これにリーダーのカシュ―さんが答える。
「ミーナさんにはかないませんね。流石は敏腕記者だ。秘密保持も契約のうちなのでご容赦ください」
暗に自分達も参加すると言っているようなものだ。ミーナは当然気付いている。
「そうなんですね。それではダンジョンの攻略作戦が終ったら独占インタビューをまた受けてくれますか?」
「終わった後なら、多分問題ないと思いますよ」
これで、このパーティーが攻略作戦に参加することは確定したと思っていい。
そこからミーナは雑談を交えながら、質問と気付かれないように聞いていく。この辺の能力はかなり高いと思う。
ミーナの話により、おぼろげながら参加パーティ―と作戦が見えてきた。
ここで唐突にピーナさんが言う。
「もうこんな時間!!式典がはじまっちゃうわ。急がないと」
「そうですね。龍神様を見られるのはこれくらいしかないですからね。ナタリーさん達も行きますよね?」
「そ、そうね。見に行こうかしら・・・」
(私達は毎日見てるんですけど・・・・)
式典はミックスナッツともに見学した。ドライスタ様も練習の甲斐もあり、威厳のあるいい挨拶ができていた。ヘンリーさんは、式典に出席し、担当者と進行を調整しているようだった。
今回私達の調査活動は、攻略パーティーの把握がメインではなかった。突発的なテロなどを未然に防ぐことが目的だったのだ。その点では、各国の特殊部隊と任務は変わらないと思う。
というのも、ダンジョン協会の事件から5年が経過するが、今だに全メンバーが拘束されていないし、横領されたDPも半分以上が回収されていない。
なので、こういった大規模イベントに残党が仕掛けて来るとも限らない。だから、警戒をしていたのだ。
ヘンリーさんの分析では、今まではなるべく計画が発覚しないようにしていたみたいだが、これからは少ないDPで無理やり計画を実行してこようとするかもしれないとのことだった。
だからこそ、各国にモフモフ達を派遣していたのだ。まあ、今のところ成果は上がっていないが・・・・。
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