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<完結>ダンジョンコンサルタント~魔王学院ダンジョン経営学部のエリートが劣等生女子とともにポンコツダンジョンを立て直します  作者: 楊楊
最終章

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プロローグ

勇者とロイさんの結婚式から5年が経過していた。


「大丈夫ですね。二匹とも問題ありません。二匹とも喜んでますよ」


今私は、ニューポートの領主館に来ている。

私が領主館を訪れたのは、勇者に献上したモフモフ達の面倒を見に来たからだ。献上したのは一角兎ホーンラビットのラビ(ミミの娘)、ブラック・シープのブラッキー(ブラックの娘)だ。二人ともよく勇者ファミリーに懐いている。


「二匹が言うにはロア君はテイマーの才能があるかもしれません。なんとなくですが、意思疎通ができるようですね」


「それは本当ですか?凄いじゃないか!!」


ロイさんが喜びの声を上げる。


「ロアだけずるい!!」

「本当だ!!」


そう言ったのはクララちゃんとネシアちゃんだ。

勇者は結婚式の後にクララちゃんを出産した。その1年後に双子のロア君とネシアちゃんを出産した。クララちゃんの出産から間がない時期に妊娠が発覚したときは「クラシアを何だと思っているんだ!!

欲望のはけ口にしやがって!!」と各方面からロイさんがかなり怒られていた。今ではいい思い出だ。


この5年で私の諜報活動が少し変化した。人族の有力者にモフモフ達をリースし、定期診断という名目で来訪した際にモフモフ達から情報を得るというものだ。まさか私がスパイだなんて誰も思わないだろう。だって私はできる女スパイなのだから・・・・。


ただ、有力な情報はほとんどない。だいたいが「ご飯を増やせ」「野菜を多めに」「寒い日は一緒に眠りたい」とかの要望ぐらいしかモフモフ達からは聞けなかった。


「ところで建国祭の関係は順調ですか?」


「建国祭自体は問題ありませんよ。ただ、その後が・・・・」



この5年で国際情勢に大きな変化があった。

一番はニューポートが独立を宣言したことだ。これには訳がある。予想以上に発展してしまったので、どこの国の帰属になってもトラブルになる。なので、検討の結果、独立した自治都市として運営していくことになった。

これに併せて、ノーザニア王国と魔国デリライトの間で、互いに領有権を主張していたクロスポートも正式に自治都市として独立することになった。二カ国とも長い期間、形だけの敵対関係を演じていたのだが、停戦のきっかけが欲しかったようだ。


そして自治都市ニューポート市国は建国祭を2週間後に控えている。大陸中が多くの要人が来訪するので、警備関係はかなり大変そうだ。それでも、各国ともに少数精鋭の部隊を護衛として連れてきているので治安は以前よりもよくなっている。

勇者の心配と言えば、建国祭の後に各国の精鋭パーティ―と合同で「龍神ダンジョン」の攻略にあたることだ。各国の融和を強調するためにも是非とも成功したいところだろう。


「ところで、今回の攻略はどんな感じの編成なのですか?」


「もうその手には乗りませんよ。当日のお楽しみということで・・・」


多分、オルマン帝国軍の攻略作戦のときのことを言っているのだろう。


「ちょ、ちょっと言っている意味が分からないです・・・」


とりあえず誤魔化しておいた。



ダンジョン攻略パーティーはこの5年間で一組も出なかった。しかし、勇者は自らパーティーを率いたり、ギルドの冒険者や地元のリザードマン達を使って綿密にダンジョンの情報を収集していた。そして、ヘンリーさんの助言どおり、高ランクのパーティーが3~4組合同でなければ攻略できないことを理解したようだ。なので、月に1回はダンジョン攻略に向けた会議をしている状態だったし、合同作戦に参加してくれそうなパーティーをピックアップしていた。


ダンジョン攻略と言えば、2年前に一度オルマン帝国の部隊が大挙して訪れたが、大失敗だった。そのときやってきたオルマン帝国軍はダンカン将軍の部隊とは、まるっきり違い、酷いものだった。ゴウツク将軍というロイさんの実家のダンジョンを我が物にしようと襲い掛かってきたグリード子爵の親戚筋の者だったのだが、貴族であることを鼻にかけたり、亜人や獣人を馬鹿にしたりしていた。

当然、住民からは反感を買い、トラブルも絶えなかった。連れて来た部隊員もほとんどが貴族出身者ばかりだったのも良くなかった。


なぜこのようなメンバー構成で遠征をしたのかと不思議に思っていたのだが、調べてみるとよく分かった。ゴウツク将軍はダンカン将軍とは違い、実力ではなく、世渡りと権謀術で出世して来た人物だ。なので、ダンカン将軍とは仲が悪く、ダンカン将軍の部隊(今はハインリッヒ副官が将軍となっている)が平民出身者が多く在籍していることを馬鹿にしたり、編集者と結託して、ダンカン将軍の誹謗中傷の記事を書かせたりしていたそうだ。


ダンカン将軍の部隊がダンジョン攻略で成果を上げたことが面白くなく、ならば自分達がもっと凄い功績を上げようとダンジョン攻略に挑戦しにきたのだった。


当然実力もなく、惨憺たる結果で、ファーストステージを突破できたのも部隊の1割にも満たなかった。龍種が多く出現するエリア対策のため、重装歩兵を大量に動員して来たのだが、普通のダンジョン攻略には全く向いていなかったのが、その要因だと思われた。

ダンカン将軍が言うには、ファーストステージを突破した部隊員のほとんどがゴウツク将軍の正式な部隊員ではなく、ゴウツク将軍の悪行を調査するために送り込まれた特殊部隊の人員だったそうだ。


結局、当初の作戦が取れないことに腹を立てたゴウツク将軍は何を思ったが総合ギルドに「どうにかしてセカンドステージからの攻略をさせろ!!」と怒鳴り込んだ。総合ギルドにそんな権限はないのにである。

これで、鬱憤が溜まっていた冒険者たちがキレてしまった。ギルド職員として活動している勇者パーティーのガイエルとグリエラ、冒険者登録しているシクスさん、それにダンカン将軍が中心となり、模擬戦と称してオルマン帝国軍をフルボッコにしてしまったのだ。

これではダンジョン攻略なんてできるわけもなく、ゴウツク将軍の部隊は失意のもと、帰還していった。


そんなことを思いながらつい口を滑らせてしまった。


「ああ、でも前回来たオルマン帝国の部隊は酷かったですね。ゴウツク将軍は帰還してすぐに更迭されたそうですよ」


「私は一言もオルマン帝国軍のことは言ってませんよ。なぜそこでオルマン帝国軍のことが出て来るのか不思議でなりません。どういことか説明してもらえますか?」


どうやら私はスパイとして致命的なミスをしてしまったようだ。

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