新生龍神ダンジョン 3
私とミーナは領主館にやって来た。もちろん中には入れないが、領主館は慌ただしい。ひっきりなしに人が出入りしている。私はフワッチに指示して、勇者が休んでいる部屋に配置した。フワッチと感覚共有すると勇者は聖母教会のシスターフローレンスの診察を受けているようだ。話を聞くと一流の神官騎士であるレイモンドが治療できなかったから、病気や薬学にも精通しているシスターフローレンスに診察を依頼したみたいだった。
しばらくして、シスターフローレンスが口を開く。
「クラシア様。大変申し上げにくいのですが・・・ご家族をお呼びください」
(えっ!!そんなに悪いの・・・)
勇者との思い出が走馬灯のように思い出される。最初は先代勇者のイメージで毛嫌いしていたが、ロイさんに接する態度を見たり、モフモフ天国の関係で急激に仲良くなった。もう友人と言っていいくらいだと思う。途中、オルマン帝国軍の関係で険悪な雰囲気になったことも今ではいい思い出だ。
私は自然と涙が溢れて来た。
ミーナが心配して声を掛けてきた。
「ちょっとナタリー、どうしたのよ?」
「もうクラシアさんは・・・・長く生きられないみたい・・・・」
「えっ、うそ・・・ほんとに?」
私はフワッチとの感覚共有を続けたまま、様子を窺う。勇者の家族は近くにいないようで、勇者パーティーと側近の文官達を集めていた。責任感の強い彼女だから、領地の為に残りの命を使うのだろう。
皆がそろったところで、シスターフローレンスが口を開いた。
「皆さん!!おめでとうございます!!ご懐妊です」
(あれ?どういうこと?)
気を取り直して、話を聞く。父親はなんとロイさんだった。シスターフローレンスはおめでたい感じを出しているが、後の文官達は青ざめている。それはそうだ。一国の王女でましてや勇者をパーティーのサポータが妊娠させたのだ。これは国際問題になる。
その後も騒然としていた。特に関係ない情報だがグリエラとガイエル、それにルナリアとレイモンドもまた付き合っているらしい。
「ちょっと、ナタリー!!状況を教えてよ」
「あっ、そうね。クラシアさんが妊娠して父親がロイさんで、グリエラとガイエルも付き合っているの。それにルナリアさんとレイモンドさんもいい感じらしいわ」
「どういうこと?情報が多くて思考が追い付かないわ!!私としてはレイモンドさんがルナリアさんと付き合っていたことがショックだけど・・・」
私達も動揺していた。落ち着いたところで、ミーナが言う。
「とりあえず帰って報告しましょう。クラシアさん達も大変だけど、多分こっちも大事になるわ」
私だってそう思う。
ミーナと一緒に会場に戻り、ヘンリーさんとミランダ社長に報告する。二人とも困惑していた。
ヘンリーさんは言う。
「とりあえず報告をしなければなりませんね。ドライスタ様は・・・・」
ミランダ社長がドライスタ様に報告している。
私は現実逃避を始める。新しいダンジョンはモフモフをメインに龍神様に提案してみよう。テトラシティでも実家のほうでも大盛況みたいだし、モフモフは世界を救うんだ。
もちろんそんな雰囲気ではなかった。更に良くないことにキョウカ様がドライスタ様を煽っていたそうだ。
「何たる屈辱。『ちょっとランクインしたからって新人が調子に乗って(笑)』、『あんなパーティーに突破されるダンジョンなんてねえ』なんて馬鹿にされたのだぞ・・・。クラシアを呼び出せ!!!!八つ裂きにしてくれる」
とりあえず、スタッフ総出で参加者に説明し、会はそれでお開きになった。
果たしてこれからどうすればいいのだろうか?
次の日対策会議が始まる。
ミランダ社長が口を開く。
「今回は予想できない事態に陥って残念だったわ。とりあえず、エリーナのダンジョン協会への異動は、しばらく待ってもらうようにするからね。エリーナも不完全燃焼でしょ?」
「それはもちろん。みんなで作ったダンジョンですので、最後くらいは・・・・。でもみんなと、もう少し一緒にいられると思うと、ちょっと嬉しいかもしれません。勇者には感謝してもいいかも・・・」
これにタリーザがツッコムを入れる。
「エリーナ!!何言っているのよ。ドライスタ様の顔に泥を塗ってしまったのよ。あの淫乱勇者め!!八つ裂きにしてやるわ」
それは少し過激だ。
ここでミランダ社長から指示が出た。
「まずはドライスタ様の怒りを鎮めるようにしないとね。だから勇者に形だけでも謝ってもらおうか?それと勇者パーティーに代わる攻略パーティーを用意しないとね・・・なんとか伝手を当たってみるけど・・・・それとナタリーちゃんとミーナさんにはニューポートを中心に情報収集をしてほしいの。多分ないとは思うけど、戦争に発展してもおかしくないからね」
ここでヘンリーさんが言う。
「私は懇親会に参加してくれたマスター達に説明に回ります。それなりに楽しみにしてくれていたでしょうし・・・。ドライスタ様程ではありませんが、怒っている方もいらっしゃるので」
その怒っている方というのはキョウカ様だ。
キョウカ様も楽しみにしていたイベントなので、こんな結果になって非常に残念に思っているらしい。なので、腹が立ってドライスタ様を煽ってしまったようだ。ミルカ様が言うには、一応は反省しているみたいだ。
私とミーナは町に出て情報収集に当たった。
当初は緘口令を敷かれていたが、数日経つと町はお祭りモードになっていた。勇者とロイさんの結婚が正式に発表された。
というのもサポータのロイさんは、身分としてはノーザニア王国の官吏になる。なので、ノーザニア王国側が勇者パーティーの功績として名誉伯爵にしたのだ。そして、爵位的につり合いが取れ、これをラーシア王国が呑んだ形となった。
まあ、戦争とかにならなくて本当に良かった。
私達が調査結果を伝えるためダンジョンに戻ったところで、会議が始まった。私とミーナが勇者とロイさんが正式に結婚が認められたことを報告する。
続いて、ミランダ社長が話始める。
「まずドライスタ様だけど、何とか矛を収めてくれたわ。ドミティア様がとりなしてくれてね」
タリーザが涙を浮かべながら言う。
「本当にドミティア様は立派だったんですよ。お怒りになったドライスタ様を諫めるなんて・・・本当に感動的な・・・・」
「ということで、話を続けるわね。そして、何とか攻略パーティーが決まったわ。それは旧魔族チームよ」
旧魔族チームは、クロスポートで勇者パーティーと戦ったチームだ。実力的には勇者パーティーと遜色ない。メンバーは、「阿修羅&ゴブリンズ」のアルテミス王女と阿修羅族のアッシュ、「チームピアース」のピアース王子、「マリオネットソード」のローグさん、ティアナさん、ポポル君だ。
これならドライスタ様も納得してくれるだろう。
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