表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<完結>ダンジョンコンサルタント~魔王学院ダンジョン経営学部のエリートが劣等生女子とともにポンコツダンジョンを立て直します  作者: 楊楊
第一章 ダンジョン研修

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

11/152

幕間 会長の憂い

ここは大手ダンジョンチェーン「ミスタリア」本部の会長室だ。コーヒーを飲みながら真剣に業績報告書を読んでいるのはミスタリアの会長で創業者のラッセル・ロスティスだ。この報告書を読み返すのはこれで、何度目だろうか?

ラッセルがそうするのにも訳がある。

ラッセルが失敗するだろうと予想していた新規ダンジョンが過去に類を見ない程大成功したからだ。

ラッセルの思惑としては、新人のダンジョンマスターに失敗から学んでほしいと思っていたのだが、大きく裏切られた。


「これもヘンリー君のおかげかな・・・」


ラッセルは一代で大手のダンジョンチェーンを築き上げた敏腕経営者と名高い。ミスタリアグループの経営理念は「誰からも愛される地域密着ダンジョン」だ。コストとリスクを最小限に抑え、地域に必要とされるダンジョンを構築すれば、まず失敗することはない。その手法が功を奏して、ここまでの規模になったのだ。

しかし、ラッセルはグループの行く末に不安を感じていたのだ。近年では採用するダンジョンのタイプも定型化されており、まず失敗しないことから、ある程度の仕事をすればそれで何とかなるという雰囲気がグループ内に蔓延していた。ラッセルは、このままでは将来大変なことことになると思い一計を案じることにした。新人のダンジョンマスター候補で娘でもあるマーナが新規ダンジョンの企画書を上げてきたからだ。

ラッセルには、マーナなりに頑張っているように見えたが、現地調査も事業計画もまだまだだった。しかし、残念なことに幹部たちのチェックを通過してラッセルの手元まで、企画書がやってきた。

(本当に幹部達は何をやっているんだ!私の娘だからと言って忖度したのだろうか?)


幹部会議を開いて、新規ダンジョンの開設の是非を問うたところ、これも通過してしまった。会議で創業時からのメンバーが反対してくれたことは不幸中の幸いだと、ラッセルは思った。そのメンバー達を会議終了後に集めて、ラッセルは計画を話した。

メンバーの一人が言った。


「私も危機感を抱いておりました。しかし娘さんにつらい思いをさせて大丈夫なのですか?」


「私も心苦しい。しかし、今後のグループのため、マーナの成長のためには必要なことだと思っている。マーナが失敗して落ち込んだら父親としてしっかりとフォローはする。責任は私が取るから」


「会長は昔も今も変わりませんね」


(嬉しいことを言ってくれる)


それからダンジョンのオープンが決定して、プロジェクトは進み始めた。マーナなりには頑張っているとラッセルは感じていた。マーナは勝気な性格で、親の七光りだと言われたくないという考えから、プロジェクトが始まってからは特に、ラッセルとは家でも口を聞かなくなってしまった。ラッセルは少し寂しく思ったが、仕方がないことだと割り切っていた。

そんなときにミスタリアグループにダンジョン経営学部の研修生の受け入れの要請が届いた。普段なら断るところだが、二女のマーナが在学しているので、受けることになった。

研修に来たのは、ヘンリーという青年とナタリーという少女だった。

(資料ではヘンリー君は過去に類を見ない位優秀だ。ナタリーちゃんはお世辞にも成績はいいとは言えないが、娘達の話ではすごくいい子らしい。勝気なマーナも少し引っ込み思案なミーナとも仲良くしてくれているんだから本当にいい子なのだろう)


この研修生の受け入れが、幸か不幸かミスタリアグループの運命を大きく変えることになった。

先程の報告書のとおり、失敗するはずだったダンジョンが大成功してしまったのだ。


ラッセルが報告書を読んでいるちょうどその頃、会長室のドアがノックされた。マーナがやって来たのだ。一応、会長として成果を上げた新人ダンジョンマスターを労うというのが建前だ。

ラッセルの予想に反して、マーナの表情は暗かった。


「大成功したのになんでそんなに暗い顔してるんだ?失恋でもしたのかい?」


「パパ!!冗談は止めてよ。それを私以外の女性スタッフに言ったら問題になるからね。まあ、落ち込んでいるのは本当よ。今回はヘンリーさんのおかげで偶々成功しただけだって分かっているから・・・」


「それが分かっていれば十分だ。問題点に気付いてダンジョンマスターとして的確に対処したことは評価しているよ」


「その誉め言葉は素直に受け取るけど、落ち込んでいるのはそれだけが原因ではないのよ」


そう言って、マーナは報告書をラッセルに手渡した。報告書を読むとラッセルは驚愕する。


「もちろんヘンリー君のアドバイスよ」


「分かった。こちらでも対応を検討してみる。このことは・・・・」


「もちろん口外しないし、エリアマネージャーにも報告してない」


「ありがとう。マーナも成長したね。こちらでも対応を検討するから何かあったら、すぐに報告してくれ」


ラッセルはそう言うとマーナを下がらせた。

ラッセルは思う。

(誰かこの問題を解決してくれるスペシャリストはいないのだろうか?)

気が向きましたら、ブックマークと高評価をお願い致します!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ