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<完結>ダンジョンコンサルタント~魔王学院ダンジョン経営学部のエリートが劣等生女子とともにポンコツダンジョンを立て直します  作者: 楊楊
第四章 オリジナルダンジョン

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幕間 俺達ミックスナッツ 2

悲劇は突然訪れた。

20数体ののワイバーンが襲来したのだ。ワイバーンは下等龍種だが、飛竜だ。飛竜であるためBランクの魔物に指定されている。地上戦でも並みのパーティーなら全滅してしまう。


「なんでこんなところにワイバーンが?もう終わりだ!!」

「こ、殺される!!」


作業員達がパニックになる。シクスさんが指示する。


「とりあえず、防御しやすいように一か所に作業員を集めろ!!ワイバーンぐらいなら俺が何とかしてやる」


俺達は、シクスさんの指示に従い、作業員を落ち着かせ、その周囲を取り囲んで警戒にあたる。しばらくするとシクスさんが1匹を仕留めていた。改めて思うが、この人も化け物クラスだ。

これなら何とかなると思ったが、考えが甘かった。ワイバーンたちもシクスさんが要注意人物と把握したみたいで、シクスさんには牽制の攻撃に留め、残りが俺達の方に向かってきた。

数が多く、しかも作業員を守りながらの戦いで苦戦を強いられた。


俺達だけなら逃げ切れるかもしれないという思いにも駆られた。しかし、ここで作業員を置き去りにして逃げてしまえば、一生冒険者としてはやっていけない。それは他のメンバーも同じ気持ちだったようで、目の前のワイバーンと歯を食いしばって戦っている。


本当に厳しい状況だった。俺達では、ワイバーンに致命傷を与えることはできないし、シクスさんも

一人で、この数のワイバーンを相手取るのは厳しそうだ。

負傷者も徐々に増えてくる。そして、回復役のヘーゼルも魔力がつきかけていた。

ここで俺は賭けに出る。


「シクスさん!!ヘーゼルの魔力がもう持ちません。ヘーゼルにギルドへの救援に走ってもらいます」


「そうだな、このままじゃジリ貧だ。一か八かやってみるか」


ヘーゼルが一人抜けるだけで、こちらもかなり厳しくなる。ただ、このままの状況で耐え忍び、俺達が帰還しないことを不審に思ったギルドが捜索隊を出すには時間が掛かり過ぎるとの判断からだ。

そこからは地獄のような長い時間だった。

俺だけでなく、他のメンバーも満身創痍だった。ただ、シクスさんだけはまだまだ元気だった。


「チョロチョロ逃げるな!!クソトカゲ!!降りてきて戦え」


と叫んでいた。

俺がもしワイバーンでも、シクスさんには近寄らないと思う。



どれくらい時間が経っただろうか?永遠のように長い時間に思えた。


「シクスさん!!救援に来ました」


「領主様自ら来てくれるなんてありがたいな」


なんと、領主の勇者自ら、勇者パーティーを率いて救援に来たくれたのだ。

勇者パーティーはあっという間に数匹のワイバーンを討伐した。そして、神官騎士のレイモンドさんが回復魔法を掛けてくれた。

勇者パーティーの到着でワイバーンたちは上空に退避して様子を窺っている。


「ミックスナッツの皆さんは作業員を護衛して町に退避しなさい。ここは私達が引き受けるから」


俺達は勇者の指示に従い、作業員達を先導して町に帰還した。後で聞いた話だけど、勇者パーティーは、応援に駆けつけてくれた、魔国デリライトの魔道弓兵隊と共にワイバーンを殲滅したらしい。


町に着くと、命掛けで救援依頼に行ってくれたヘーゼルと再会し、喜びを分かち合った。町の入口には作業員達の家族も出迎えに来ており、作業員達と再会を喜びあっていた。しばらくして、作業員とその家族が俺達の周りに集まってきた。


「ありがとう!!お前達は命の恩人だ」

「本当にありがとうございます。うちの子を助けてくれて」

「自分達だけで逃げればよかったものを、最後まで守ってくれて・・・ありがとな」


口々に賞賛された。

俺としては大したことはしてないと思っていたのに・・・・。

でも悪い気はしなかった。こんなにも感謝してもらったのは冒険者になって初めてかもしれない。



事件後、俺達はCランクに昇格した。理由は、拙いながらも最後まで作業員を守り切ったからだ。それに領主の勇者が表彰と報奨金を出してくれた。その資金で俺達は、拠点となるパーティーハウスを購入した。皆で話し合った結果、このニューポートをホームタウンにすることにしたのだ。


土地も建物もかなり安かったので、資金にも余裕ができた。なので、最低限の依頼を受けるだけに留めて、訓練に重きを置くことにした。

これも皆で話して決めたことだ。Cランクと言っても、実力はまだまだと自覚していたからだ。

幸いニューポートはギルドも訓練関係に力を入れていくれている。

それに領主である勇者も協力的だ。パーティーハウスを購入してすぐ位に龍神ダンジョンができたのだが、ダンジョン攻略に来た有名パーティーが指導してくれるようになった。俺の師匠はグリエラさんのままだが、勇者パーティーとも懇意にしているベッツ・スパクラブからは多くのことを学んだ。


仲が良かったのは剣士のナールさんだ。実力者だが、グリエラさんやシクスさんには、模擬戦でボロ雑巾のように痛めつけられている。

ナールさんが言う。


「俺達ベッツ・スパクラブもまだまだだから、しっかり訓練しないとな。それとパーティーの連携が大事だぞ。実力が足りないからこそ、連携を高めて安全な戦いをするんだ」


その言葉どおり、ベッツ・スパクラブも龍神ダンジョンを攻略している。後にギルドの訓練所の所長となる元オルマン帝国軍のダンカン将軍も褒めていた。

実力がまだまだな俺達だが、これでも水龍救出作戦に参加させてもらえた。後方支援部隊だったがいい経験になったと思う。





「・・・とここまで話したのが、ニューポートに来た経緯とこれまでの活動です。やっぱり訓練は大事ですね。この町には環境が整ってますし、それにミーナさんやナタリーさんにも感謝してるんですよ」


実は俺達は水龍ダンジョンでA級素材のビッグパールを採取したことで、記者のミーナさんから取材を受けているのだ。


剣士のピーナが話に入ってくる。


「ちょっとカシュー!!マリオネットソードのティアナ様のことをもっと伝えてよ!!あの華麗な剣技は芸術的だわ・・・・」


「ピーナはティアナ様の大ファンだからね。私としては、それよりもヘーゼルが弓を使えるようになったことがパーティー飛躍のきっかけだと思いますけど」


そうだった。訓練で一番伸びたのはハーフエルフで回復術士のヘーゼルだ。孤児院出身で大した訓練を受けていなかったのだが、ハーフエルフなだけあって、弓の才能はあったようで、ここに来た一流の弓使いに指導を受けて、その才能を開花させたのだ。

ヘーゼルが言う。


「アルテミス王女やベッツ・スパクラブのノンさんからは大変良い指導をしてもらいましたが、一番実力が付いたのはオルマン帝国軍の訓練でしたね。信じられない位の量を撃たされましたよ。少しでもサボるとダンカン将軍の怒号が飛ぶんですよ。もうやりたくない・・・・・」


話が大分逸れて来たところで、ミーナさんが言う。


「それでは、水龍ダンジョンでビッグパールを採取したときのことをお聞かせください」


「ああ、そのことですか・・・。実は本当に大したことしてないんですよ・・・。おい!!クロコ!!ちょっとこっちに来て説明してあげてくれよ」


俺が呼んだクロコはリザードマンで、リザラさんの紹介でミックスナッツに新規加入したメンバーだ。リザラさんとともにラーシア王国からやって来た元海軍の女性で、冒険者志望だった。将来的には色々な土地をめぐって、依頼をこなしたり、ダンジョンを攻略したりしたいとのことだったので、仮加入してもらったら、相性が良かったことから正式に加入してくれたのだ。


「カシュー、私も特に説明することないよ。だって、1階層から普段冒険者が探索しないようなところを隅々までマッピングしながら探索してただけなんだから・・・・。ビッグパールを見付けたのも2階層の地底湖に潜ったときに偶々見付けただけだし・・・・」


「ミーナさん、強いボスを倒したとか、誰にも解けなかったトラップを解除したとかでもないですし・・・地道にやって来たご褒美のようなもんなんですかね・・・・」


ミーナさんだけでなく、色々な冒険者に聞かれるが、本当に大したことはしていない。ギルドや先輩冒険者に言われたことを愚直に地道にやっただけだ。コツとか言われても困ってしまう。


「分かりました。今日はありがとうございました。地道にコツコツ頑張ることが大事ってことですね。私も見習います」


取材はそれで終わった。

俺達はまだまだ駆け出しの冒険者だ。無理をせず、このペースで地道にやっていこうと思っている。

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