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<完結>ダンジョンコンサルタント~魔王学院ダンジョン経営学部のエリートが劣等生女子とともにポンコツダンジョンを立て直します  作者: 楊楊
第一章 ダンジョン研修

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研修9 研修終了

あっと言う間に研修期間は過ぎて行った。ダンジョン経営も順調なようで、マーナさんはミスタリア本部から表彰を受けたそうだ。新人のダンジョンマスターがここまで成果を残すことは稀で、それまで、マーナさんを親の七光りだとか陰口を叩いていた役員も手の平を返したようにゴマをすってきたみたいだ。


「急に揉み手で『次期会長はマーナ様しかいません』とか言われてもねえ。これも全部あなた達のおかげだから」


そう言いながらもマーナさんは上機嫌だ。

私はというとダンジョンオープン前の情報収集を除けば、研修の大半を燻製肉の製造と販売に費やした。このままいけば、立派な燻製肉職人になれるかもしれない。これでも中級程度の魔獣テイマーなので、魔獣の餌付けに使えるとは思うが、ダンジョン関係の技能は全く伸びてないような気もする。


「女将さん!!ネリス商会の納品終ったよ。次は直売所への納品だったかい?」


「そうです。ありがとうございます。それが終ったら早いですが、上がって下さい」


女子会以降、おばちゃん達や領主の奥様とも急速に仲良くなり、今では「女将さん」と呼ばれている。一体私は何を目指しているのか、自分が分からなくなる。そんなことを思いながら作業を続けていると領主の奥様が尋ねて来た。なぜかは分からないがグレートベアの睾丸を渡された。


「精がつくから、しっかり頑張ってね!!」


「は、はあ・・・ありがとうございます」


意味はよく分からないが、お礼を言って受け取った。


ヘンリーさんはというとダンジョンに常駐するようになった。住民や工房のおばちゃん達に怪しまれないようにするために申し訳程度に顔を見せに燻製工房に立ち寄る程度だ。また、領主館にも頻繁に出入りしているみたいだ。領主様もヘンリーさんをブレーンとして信頼しているようだった。


そうこうしているとイサク司祭が燻製肉を買いにやってきた。イサク司祭もダンジョン入口付近の治療院に常駐するようになったので、ご近所さんとして仲良くなった。今日も燻製肉を大量に買っていってくれる。


「いつもありがとうございます」


「こちらこそ。安く売ってくれて助かっているよ。孤児院の子供達はここの肉が大好きだからね。運営も軌道に乗ったし、少しは贅沢させてあげてもいいかと思ってね。これも君達に出会わせてくれた神様に感謝さ」


イサク司祭は念願だった孤児院を設立でき、それに趣味のダンジョン研究の論文が学会に認められたそうだ。論文のタイトルは「ダンジョンを中心とした町づくり」、「ダンジョン入口に治療院を設置する優位性について」の二つらしい。論文の作成にはヘンリーさんが助力したことは言うまでもない。

イサク司祭のおかげで、セントラルハイツ学園からもダンジョンに潜りに来るようになり、集客に一役買っている。



そして研修開始から半年、とうとう研修終了の日となった。

トラブルを起こさないように立ち去ることも大事だ。ここを去る理由は、「ベルンを訪れたときにヘンリーさんの実家からの追手に感付かれたかもしれず、急速に発展しているカーン男爵領には、すぐに追手がやってくる可能性があるから早急に立ち去る」ということにした。

何日か前に領主様に報告に行ったところ、かなり引き留められた。オゴディさんなんかは


「父上!!我らは貧乏男爵とはいえ、誇り高きオルマン帝国の貴族です。恩人のヘンリー殿とナタリー殿のために一戦交えるくらいの覚悟がなくて、何が貴族ですか!!」


なんて物騒なことを言うし、奥様も同調する。


「あなた!!どうせならヘンリー君を養子にしてしまいましょうよ。それと帝国騎士団に入っているモンドの伝手で騎士団を派遣してもらってもいいかもしれません。やるときはやるのがカーン男爵家です」


嬉しい申し出だった。身分を偽って接していたことが心苦しかった。

なんとか、ヘンリーさんと共に説得して、了承を得た。


私達が手塩にかけて育てた燻製肉工房だが、無償で領主様に返上すると申し出た。さすがにこれは受けてもらえなかった。


「それでは、燻製肉工房の利益の何割かを頂ければそれでかまいませんよ。いつになるか分かりませんが、必ず受け取りに伺いますので」


もう私達が受け取りに来ることなんてないとみんな分かっている。ただ、貴族の立場として無償で譲り受けるわけにはいかない。なので、角が立たない最善の策だと思った。


「そこまで言われたら仕方がない。我が隠居してもオゴディが、オゴディの後は末代まで、貴殿らのために利益の3割を渡すことにする」


さすがに3割は多すぎるような気もするけど・・・。まあ取りに来ることはないので、何割でもかまわないか。


そして、本日別れの宴が始まった。

宴には領主様一家と燻製肉工房のおばちゃん達やイサク司祭のみで行うことになった。領主様は大規模にやりたかったみたいだが、追手から逃げている設定なので、少人数にしてもらった。

それでも宴は楽しく盛り上がっていた。領主様がお酒をどんどん進めてくれる。

その様子を見たオゴディさんと奥様が近寄ってきて口々に言った。


「父上、ナタリー殿にそんなに酒を勧めてはなりません」

「本当よ。大変なことになるから・・・」


そんなに私は酒癖が悪かったのだろうか?オゴディさんと奥様に尋ねると信じられない事実を教えてもらった。聞かなければ良かったと思う。

まずオゴディさんが言うには、ベルンにダンジョン発見の報告に行ったときに一緒に飲んだ商人達とドンチャン騒ぎをしてしまったらしい。これくらいなら、笑い話なのだが、奥様の話を聞くと血の気が引いた。

女子会で酔っ払った私は、


『ヘンリーさんは私が誘っても指一本触れてくれない。分かりやすように胸をチラっと見せても全く反応しない。私の胸が小さいからか?意気地なしのフニャ〇ン野郎!!』


と喚いていたらしい。ヘンリーさんについては完璧で、ちょっといいなとは思っていたけど・・・。

それで、派手のな下着や精力剤のグレートベアの睾丸をくれたのか・・・。


「お、お、奥様無礼なことをしてしまい本当に申し訳ありません。このことはヘンリーさんには・・・」


「大丈夫よ。これは女だけの秘密だから。今後はお酒には注意してよね」


そんな感じで、その宴は無事に終わった。今後、お酒には十分注意しよう。



そして、ヘンリーさんと一緒に燻製肉工房に戻る。領主様には見送りはしないでほしいと伝えているし、明け方に私達はひっそりと町を出るとも伝えている。追手がいる以上仕方がないとこれも納得してくれた。そして、2階に設置してある転移スポットに向かうとミーナさんが来ていた。転移スポットを解除する関係だという。

私は転移する前にもう一度燻製肉工房を見て回りたいと申し出た。たかだか半年だが、感慨深いものがある。

岩塩の分量を間違えて、やたら塩っ辛い肉ができて大笑いしたり、大量注文がきて徹夜で作業したりした思い出がよみがえり、それも今日で終わりだと思うと自然と涙が溢れてくる。

するとマーナさんが抱きしめてくれた。


「ナタリーちゃん、よく頑張ったね。私も初めて勤務したダンジョンを離れるときは泣いたのを覚えているわ。こういうことの積み重ねが人を成長させるのよ」


マーナさんも本当にいい人だ。陰ながら私達を支えてくれたことは感謝している。本当にいい研修先だったと思う。しかし、次の発言で私の涙は一瞬で止まることになる。

マーナさんは私に紙の束を渡してきて、こう言ったのだ。


「色々調べたんだけど、ナタリーちゃんの研修項目が足りてなかったのよ。規定をみると「研修できなかった項目はレポートで補うことができる」って書いてあったから、悪いけどレポートを提出しておいて。ヘンリー君が手伝ってくれるから・・・・」


それはそうだろう。私は燻製肉しか作ってなかったんだから・・・・・

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