プロローグ
<完結>勇者ビジネス~勇者を使ってみんなが好き勝手に稼ぎます!!
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のコインの表と裏のような作品になります。勇者ビジネスの伏線が回収できなかったのでこちらの作品を執筆しました。どちらから読んでも楽しんでもらえると思います。
「以上で本課程のすべての講義は終了となります。続きまして、ダンジョン研修の説明に移ります。研修は今期からの試みとなります。研修制度ができた経緯ですが・・・その・・・皆さんの先輩方が・・・やらかしてしまいまして・・・」
講師の歯切れの悪い説明を受ける。
私はナタリー・ヒューゲル、20歳の美少女だ。
自分で言っていれば世話ないか・・・。黒髪で魔族特有の角を持ち、友人からは「黙っていれば美少女なのに・・・残念・・・」とよく言われている。半分冗談だろう。
今、私が受けている講義は、魔王学院ダンジョン経営学部の講義だ。
魔王学院はユリシア大陸の最北端にある魔族の教育を目的とした教育機関で、有力な魔族の子女が通っている。その中でもダンジョン経営学部は特殊な立ち位置で、魔王学院の何らかの学部を卒業しなければ、入学できないようになっている。因みに私はテイマー養成学部を卒業している。
試験も特殊で、試験日はおろか、学部の存在自体も公にはされていない。これはダンジョン経営という特殊事業を扱っているからだろう。試験日や試験内容は普通に学生生活を送っているだけでは気付きもしない。今回は食堂の掲示板に暗号で試験日が、一般教養試験の答案用紙に試験内容が記載されていた。
これに気付ける時点でエリート中のエリートだ。
と、ここまで自慢したが、実際のところそんなことはない。私の両親もダンジョンを経営しているので、ある程度のことは分かり、試験も両親のアドバイスもあり、合格することができた。なので、ほとんどの学生がダンジョン関係者だ。そして、そのダンジョン経営学部も卒業間近となった。
ここまで、厳しかった。講義は難しく、様々な実習もギリギリでパスしてきた。その努力もようやく報われる。後は、この研修を無事に終えればいいのだ。
「ちょっとナタリー。研修のペアが誰になるか楽しみだね。一緒のペアになれたらいいのにね」
私に声を掛けてきたのはミーナ・ロスティス。彼女も魔族で父親が大規模なダンジョンチェーンのオーナーで所謂、お嬢様だ。研修は学生の二人一組のペアで行われるみたいだ。
「そうだね。無事に研修が終われば卒業か・・・。実家のダンジョンは兄が継ぐ予定だから、私はどうしようかな・・・」
「大丈夫よ。それだったらパパに頼んでナタリーくらい雇ってあげるから!!」
私語が大きくなってしまったところで、講師から注意を受ける。
「コラ!!そこ!!私語はしない!!もう卒業だと思って気を抜いたら大変なことになるぞ。ダンジョンは危険な場所なんだから」
「「す、す、すいません」」
そしていよいよ、研修のペアの発表だ。私のはペアは残念ながら友人のミーナではなかった。
「ヘンリー・グラシアスだ。よろしく」
「ナタリー・ヒューゲルです」
自己紹介を交わす。私とペアになったヘンリーさんは、金髪の魔族で整った顔立ちで魔術も剣技も座学も完璧で「エリートヘンリー」と呼ばれている。当然女子からは大人気で、私を睨んでくる女子が多数いる。
(私のせいじゃないのに・・・・)
そんな中、一人の女子生徒が講師に食って掛かった。彼女も有名ダンジョンの経営者のご息女だ。
「研修のペアに納得がいきません。ペアの選定方法を教えてください。場合によってはペアの変更を求めます」
(ヘンリーさんと組みたいからって不正なんかしてないのに・・・)
「こ、これはルキア嬢。ペアの変更は出来かねます。選定方法は・・・ちょっと・・・」
「言えない事情でもあるの?場合によってはお父様にも・・・・」
講師もタジタジだ。彼女の父からは多額の寄付を受けているみたいだから仕方ないか。
「わ、分かりました。選定方法は成績です。単純に総合成績の1位と最下位、2位と最下位から2番目・・・といった具合で決めています。何分初めての試みですので、今回はご容赦ください」
講師の言葉で知りたくなかった事実が判明した。ヘンリーさんは当然ダントツの1位なので、私は必然的に最下位ということになる。
(あんなに頑張ったのに・・・・)
講師の発表により、敵意に満ちた女子学生の視線が同情と哀れみに満ちた視線に変わったのは不幸中の幸いだった。
この説明にはさすがのルキアさんも納得せざるを得ないみたいで、私に近付いてきて言い放った。
「くれぐれもヘンリーさんの足を引っ張ることがないようにしてください!!」
だから!!私が決めたんじゃないんだって!!
そうは言えなかった。
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