決闘ーシーゲル・コートレール
【二十分後 ジュリラの街】
【天恵の儀】終了後、周りに人だかりができているジュリラ大聖堂の前の広場にて、その中心に俺とシーゲルはいた。
はぁ、マジで戦うのか。さすがに武器は真剣じゃなくて模擬戦用の木刀だけど……。
相手が【剣聖】のスキルを持ってる以上、厳しい戦いになりそうだ。
えっと、なんだっけ、そう【零点特化】。こんなちょっと気を抜いたら忘れてしまいそうなスキルで太刀打ちできるのかどうか……。
「では始めるぞ。二人とも用意はいいか? 相手を無力化した方が勝利じゃ。余計な怪我は負わせるなよ」
「了解です」
「努力はします。まあ、力を抑えられればの話ですが」
「ふっ、シーゲル。我が息子ながら大した自信だな。――では始め!」
「はあっ!」
父の掛け声と同時にシーゲルは勢いよく走り出し、俺に向けて剣を振り上げた。
俺はその大振りな攻撃を受け流し、剣の柄で腹部にカウンターを加える。
「ぐふっ! ……このぉ!」
再び力任せに剣を振り、横一線に薙ぎ払うシーゲル。
こちらはそれをしゃがみこんで躱し、そのまま足払いで弟を転倒させる。
日頃の鍛錬の差だろうか、単純な剣の腕では俺が上らしい。
とはいえ。
「くそっ! こいつ……!」
俺がシーゲルを容易くあしらえばあしらう程、向こうの怒りは増していく訳で。
どうしたって詰んでるよなぁ、これ。
「武器を落とせば無力化したってことでいいよな? もう終わらせるぞ」
「クク、やれるもんならやってみろ。スキル解放――【剣聖】!」
シーゲルが右手を天高く掲げると、その剣は神々しい光を帯びた。
「くらえ!」
「…………ッ!」
振り降ろされた一撃を咄嗟に受け止めた俺の剣は真っ二つに折れ、カランカラン、と破片が石畳の床を転がる。
「――やるじゃないか、シーゲル」
なんて余裕そうな表情で言ってみる。
だが内心は心臓バクバクだ。
なんだあれ、なんであんな初心者みたいな振り方で剣が折れるんだよ。強いって。
……こうなったらこっちも使ってみるしかないか。
シーゲルの発動方法を真似して、俺は右手を構える。
「スキル解放――【零点特化】」
『【零点特化】ノ発動ヲ確認。ライトリバース開始。自身の能力をゼロに固定』
頭の中で妙な声が響いた瞬間、身体から力が抜けていくのを感じた。
手に力が入らない。足が上手く動かない。
「ちょっ、なんだこれ……⁉」
「とどめだ!」
そのせいでシーゲルの一撃に対応することが出来なかった俺は、攻撃をまともにくらって吹き飛び、石畳の床に叩きつけられた。
「ぐあっ! ゴホッゴホッ!」
いってぇ……! 普段の何倍も痛い……!
ダメだ、意識が……。
とてつもないダメージで気が遠くなっていく中――最後まで視界に入っていたのは、俺を見下ろすシーゲルの、勝ち誇ったような笑みだった。
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