旅立ち
【翌日 ジュリラの街 正門】
「で、結局、二人とも付いてくるわけか」
お出かけ日和のよく晴れた青空の下で、俺はため息混じりに旅の同行者たちを見やる。
「当たり前でしょ。私はアルジがいないと魔法が撃てないんだから」
青く長い髪が印象的なエルフの少女は、本来、今回の問題を解決した功労者として表彰されるはずだったのだが、彼女はそれを断った。
なんか、人間の街で目立つのが嫌なんだと。
で、もう一人の厄介者はというと。
「いやー、楽しみだなー。街の外ってどんなんだろー!」
この通り、生まれて初めての旅に目を輝かせている(もちろんスキルの効果ではない)。
俺が決闘に勝ったことで、晴れて彼女は自由の身となり、執事たちに追われることなく街の外に出る許可を与えられた。
同時に、シーゲルに勝つくらいの実力があるならば、ということで俺たちが同行することも許された。
許されなくてもよかったのに……。
そして、最後に。
「あるじ様、賑やかになって良かったですね!」
と、このパーティにおいて唯一の良心と言ってもいい可憐なメイドが、こちらを見て無邪気な笑顔を浮かべている。
シーゲルの目が覚める前にジュリラを出なくてはならない都合上、本日はかなり早起きしなくてはならなかったのだが、クレアがテキパキと準備をしてくれたおかげで、こうして早々に出発することができた。
「退屈はしなさそうだな。まあ、楽しいかどうかは別として」
「何を言ってるんです! きっと楽しいですよ!」
「でもほら、あの二人、もう意見が分かれてる」
言って、俺はフォーリアとオルフェを指さす。
「ねー、まずどこに行こっか?」
「そんなの、私の実家に決まってるでしょ」
「私は王都に行ってみたいなー。街が人で溢れてるって想像できないし」
「結婚の挨拶に行かなきゃにいけないのよ、王都はその後」
「えぇー、オルフェちゃんの実家ってどの辺なの?」
「まあ、こっから歩きだと一か月はかかるけど……」
「それって遠いよ、オルフェちゃーん!」
二人は出口に向かって歩きながら、目的地についてワーワー言い合っている。
「……ほら」
「あはは……まあ、なんとかなりますよ! さ、私たちも行きましょう、あるじ様!」
クレアに手を引かれ、俺たちはフォーリアとオルフェの元へ向かう。
エルフに、メイドに、お嬢様。
まったく……先が思いやられる。




