〜新たなる可能性と緊張の一戦〜
「失礼します!」
研究所の扉を開ける。
「おお! 雄二か! 待ってたぞ」
「なんか大佐にも訪ねてくれって言われたんですけど,どうしたんですか?」
「ちょっと新しい鉄騎を開発中でな! 動くかどうか。反応してくれるかどうかテストしたくてな! 雄二は適合率も高いし,俺も雄二の事を知っているし,テストしやすいと思ってさ」
「テストですか? 俺は何をすれば? というか,痛かったりしないですよね?」
「いやいや! ないよ! 俺の事本当に信用してないよな雄二」
「なんか変な実験してきそうで! それより新しい鉄騎が出来るんですか?」
「まだ試作段階だけどな! でもちょっと特殊な核を使っているから一体しか作れない。今までにない強い鉄騎を作ってる最中なんだよ」
「とりあえずそこの椅子に座ってもらえるか?」
「わかりました」
特に変わった装置や椅子などではなく,歯医者に行ったときに座るような椅子に座った。
和久さんが俺の頭に何やら装置を付ける。
「ちょっとデータを見たいからそのままでいてくれるか?」
特に何かされる訳でもなく,ただ椅子に座らせられた。
「雄二,普段鉄騎を操っている時の感覚を出せるか?」
「感覚って言っても,意識した事ないですよ!」
「まあちょっとやってもらるか?」
「なんとかやってみます!」
正直どういった感覚なのかと言われると難しい。普通に自分の身体を動かすように自然に動いてくれるから。特別意識して何かを動かすような感覚が俺にはなかった。
それでも和久さんに言われた通りになんとかやってみる。
「よぉ〜し! 雄二ありがとう! 終了するよ」
意外にすぐ終わった。テストとか言うからもっと時間がかかるのかと思ったが,そうでもなかった。
「それで和久さん,何か分かったんですか?」
「そうだな〜何も分からんかったわ!!!」
と言いながら笑う。
「なんですかそれ! 分からないって! 天才科学者じゃないのかよ!」
「それでもわからない事はある」
「でも今のテストで分かったことは,雄二にはこの核は反応をしたんだ。つまり雄二には扱えるって事だ!」
「それがどうしたんです??」
「下手したら雄二専用の鉄騎を造る事になるかもしれないって事だ! この核が特殊だって話したろ?」
「ええ……さっき言ってましたね」
「色々省くが,簡単に言うと今の鉄騎の約2倍近く威力を増す事が出来ると思う」
「より強く,より大きく,より速い鉄騎を造る事が出来るんだ。だが,今の所反応を示したのは雄二しかいない! だから雄二専用騎を造る可能性がある」
「え!? なんですかそれ!!」
「いいじゃん! カッコいいじゃん!」
「和久さん完全に他人事だと思って言ってるでしょ」
「そんな事ないぜ! 強くなるのは本当だ。でもなんで雄二にだけ反応したのか? 全く分からない! 雄二だけだったら雄二の後は誰も乗れないって事だろう?」
「造っても結構無駄になるだろ?」
「まあ言われると確かに」
「その為だけで新しい鉄騎を造るのは難しいかもしれない」
「千夏……後は大佐の判断によるかな」
「大佐が造るって言ったら造れるんですか?」
「そのぐらいの権限はあると思うぞ。一体だしな!」
「雄二今日はありがとうな! 今から俺は大佐に報告に行ってくるよ」
俺もそのまま和久さんと研究所を出て,俺は寮へと戻った。
寮に戻ると何故か俺達のチームの話題が広まっていた。
一年生にしてレベル3のいる巣に行って勝ったことが広まっていた。
皆で祝福をしてくれた。上級生にも褒めてもらった。
元の世界だったら一年生が上級生を差し押さえて結果を出すと,妬まれたりするものだが,この世界は誰が倒したっていい! Antsybalを倒したんだったら誰でもいい! そんな感覚でいる気がする。
だからこそこんなに祝福してくれるんだと思う。
確かに戦争をしていて,相手を倒した,相手の指揮官を倒したのなんて誰だっていい。勝って平和になるなら,自分の手柄じゃなくて別にいい。そんな感じなのかもしれない。
俺は嬉しかった。何でだろう! 俺はこの世界では異質で,この世界の事はほとんど何も知らない。この世界では必要性のない人間なんじゃないか? と思っていた。
しかし,今いる世界でも徐々に自分の居場所が増え,自分も出来る事があるのではないか? そう思えるようになった。
今日の皆の祝福してくれた言葉や顔を見ると,この学校にいや! この世界に初めて受け入れられた気が少しした。少しそう感じたんだ。
毎度の事ながら祝福してくれるのはありがたいが……
なんで罰ゲーム並に多い量のご飯を出してくるのだろうか……
勿論美味しいんだけど,量だけが……
今日初めて知ったことだが,雷斗が大食いという事を知った。
人間じゃない量のご飯を胃袋に入れていく。
雷斗が居てくれたおかげでなんとか残さず食べる事ができた!
俺はもう限界で少しも動く事が出来ない。
透に手伝ってもらって部屋に戻り,ベッドに横になった。気付くと朝だった。
すぐに三年生との模擬戦があるが,今から何か新しいそして特別な事も出来ない。
だから毎日行っている日課,そして訓練や練習を行っていた。
大佐から言われた三年生と模擬戦を行う日になった。今日の結果で,財前を殺した変異種がいるAntsybalの巣の作戦に入れるかが決まる。
一日授業があったが,身に入らなかった。模擬戦の事で頭がいっぱいだった。
三年生との模擬戦は放課後行われる。
模擬戦の事を考えている内に放課後になっていた。緊張なのか心配なのか不安なのか? それとも気負っているのか俺が俺自身の感情がわからなかった。
バスケの公式戦の決勝戦でもこんな感覚になったことがなかった。
小学生の時に劇の主演をする事になってしまって,当日緊張で心臓が飛び出しそうな程緊張して,給食を吐いてしまった事もあるが,その時の感覚とも違う感覚だった。
皆で模擬戦を行う場所へ向かっているが,他の四人も緊張してるのか? 珍しく会話がなかった。
鉄騎が駐騎している場所に行くと,冬月大佐と山口先生,そして三年生の先生と思われる人が居た。三年生の人達はもう来ていた。
俺達が一番遅く到着したようだった。
「じゃあ始めるか! お互いに遠慮がないように本気でやっていいぞ!」
大佐がそう言い,俺達は鉄騎に乗り模擬戦の準備に入った。
「では始め!!」
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