8...信徒へのお披露目
朧月夜。
ぼやけた月の光と、松明の灯りが混ざる。
周囲に高い木々が囲む森の中。
開けた空間に木造の城がそびえ立っていた。
城門の前には、丸太を積み上げて作られたような大きな御立ち台。
その上に一人の男が立っていた。
白い着物に黒い羽織。
木の冠と首飾り。
そして、背丈ほどもある杖を持った男。
阿戯斗である。
「聖巣教団の同志諸君!!
よくぞ集まってくれた!!
全ての妖廻にそして諸君に、今日という日を迎えられたことを感謝する!!」
阿戯斗が仰々しく声を張り上げる。
彼の視線の先には、異様な光景が広がっていた。
五十に届く程の沢山の人間たち。
それも、全員が顔に布を垂らしており、誰一人として顔が見えない。
そして、誰もが同じ笠を被り、同じ着物を着て、同じ姿勢で立っている。
まるで個性等というものはなく、誰もが同一の生き物のようである。
そんな異質で不気味な彼らは、聖巣教団の信徒たちであった。
「諸君はもう知っているだろう!
我が娘、鵺宵が妖廻として生まれ代わり!
そして今日!
遂に自我を得たのである!!
さぁ!鵺宵よ!
その姿を現しなさい!!」
阿戯斗が両手を高く掲げる。
「鵺宵...行きなさい」
御立ち台の裏で控えていた鎖凪は、鵺宵の頭を優しく撫でた。
「う、うん」
鵺宵は、恐る恐る階段を上がっていく。
そして、鵺宵の為に設けられた5段ほど高い御立ち台に立った。
「「「おぉぉぉ」」」
鵺宵の姿に眼下の異様な人間たちはどよめく。
「うっ...」
鵺宵と白蛇は狼狽える。
「見よ!
この神々しい姿を!
彼女はきっと!
我々を理想郷へと、穢れのない美しい世界へと導いてくれる!!
信じよ!!
醜い人間たちを浄化する神の使いを!
そして、その身を捧げよ!!」
阿戯斗は、大きな杖で鵺宵を指し示し、叫んだ。
「さぁ!
鵺宵!
お前を信じる者たちに言葉を授けるのだ!!」
数瞬、その場が静まりかえる。
誰もが鵺宵の言葉を待っていた。
「よ、よろしくね...」
鵺宵は控え目に呟く。
「「「おぉぉぉ!!」」」
割れんばかりの歓声が上がった。
「聖巣教団万歳!!!」
阿戯斗は歓声を掻き消すほどに怒鳴る。
「「「万歳!!!」」」
信徒たちが応える。