5...聖巣教団の教祖とその妻
「おっと、まだ名乗っていなかったな」
男は、思い出した様にハッとすると胸を張り
「我は聖巣教団の教祖、蜘蛛山阿戯斗である」
男は、仰々しく名乗った。
次いで女も阿戯斗と名乗った男に続く。
女は鵺宵から離れ、阿戯斗の横に立った。
「私は蜘蛛山鎖凪よ」
「先ほども言ったが、鎖凪は我の妻であるから、
聖巣教団において、我に次ぐ立場にある」
阿戯斗は、鎖凪の肩を抱いて言った。
「阿戯斗様...」
彼女は、阿戯斗を見上げて甘い声を出す。
鎖凪の、面布によって隠されていない頬が、ほんのり赤く染まった。
「聖巣教団は、妖廻を虐げる愚かな陰妖師から、妖廻を解き放ち、
世界を浄化する為に存在する。
そして、我々の目指すは、妖廻が支配する世界。
人間は本来、我や鎖凪、そして、聖巣教団の信徒達のように、
妖廻にひれ伏し、奉仕するべきなのだから!」
阿戯斗は、彼方を見つめ、自らに言い聞かせるように大声で言った。
「そして、鵺宵。
お前には、偉大な妖廻となり、聖巣教団を導く存在になってもらう!
共に穢れた人間を清め、美しい世界を築こうではないか!」
「鵺宵。
貴方は、世界を救うことが出来る特別な存在なの!
一緒に頑張りましょうね!」
「よいな?」
「う、うん」
捲し立てるような阿戯斗と鎖凪の言葉に、鵺宵は依然として全く理解できないまま、頷いた。